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[C131]

質量兵器といえばミサイルですがそんなもん町中でぶっ放す誘拐犯すごい人です色んな意味で尊敬です
陸士部隊がやられたのは、如月様の運のせいでしょうか?

[C132]

お疲れ様です!
やはり、弥生様がシビれるほどかっこよかったですねー
運を削る能力……だから悪運強い神姐と絡んでるんですね!
ちょっと読みづらかったけど、楽しかったです

ライヴの方は長月部隊長が場を繋いで……の下りで、ノリノリで踊る部隊長を幻視しました…
  • 2008-08-05
  • 投稿者 : 縹
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[C133]

まぁテロリストは度が過ぎれば過ぎるほど遠慮というものをしなくなりますからね。
他人を巻き込んでナンボですしw
しかし、やはり詠唱が長いw これは承認が必要だわな、危なっかしくてとてもじゃないが使う気になれん
だが、そんな幽霧でも心配してくれる人たちが居るって事だな。 フェイトの夢はある意味で予知夢ッぽいが...
  • 2008-08-07
  • 投稿者 : 恭也
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『雪夜のライヴとカーチェイス』③

こんばんは。雪奈・長月です。

今夜は日曜日。
現在、涼香様の時空管理局ラジオ進行中!
自身の身体をご自愛ください。

昨日の夕方にメガミマガジンを立ち読みしてきました。
はい。驚きました。
チャットで話題になってましたが、まさかここまで変わっているとは・・・・・・
色々と変わってますね。
デバイスやBJのパーツが所々変わってますね・・・・・・
それ以上にドラマCDに驚きました。
三期の三年後ですか・・・・・・・
そういえば、私のSSは三期から二年後の話ですね。
うわ~お。話の調節が面倒ですねぃ。
三部までで三年分だから・・・・・・・・三期から二~五年後位。ドラマCDの設定も盛り込まないといけませんね。
そしたらティアナルートが大変なことになりそうですね。
ははははは・・・・・大変ですね。

先月の三十一日にパープルソフトの「春色桜瀬」を購入。
パープルソフトから分かるようにエロゲです。
色々とありますが、「春色桜瀬」は私の初めてのエロゲです。
最初に突っ込んでおきますが、某チャットの桜瀬りるか様とは全く関係がありません。
そこのところはご了承ください。
うん、まだEDを迎えていませんが・・・・・・甘いデス。
「君は私に恋をするよ」
そんな名言から始まるこの話。
まだ十三日分までしか見ていませんが・・・・・・・・・十三日でヒロインの一人と恋仲に。
・・・・・・・はい?
幼馴染キャラならまだ分かりかねますが、転校生キャラ・・・・・・・?
すさまじいですね。
十三日分まででも十分に甘くて悶絶。すでに悶死寸前。
これはEDまで耐え切れるのでしょうか。
ギャルゲーテイストSSの参考として買ったこのソフトにここまで惹かれるとは思いもしませんでした。
うん。すごいですね。

まあ、そんなことは置いておいて・・・・・・・・始めます。

そういえば・・・・・・私とイエーツの原稿はちゃんと受理されたのでしょうか・・・・・・・心配です



第十二回②&コメント返し③
「やっぱり幽霧は静かに消える運命なんでしょうか?
いえ、きっとなのはさんかフェイトさんがとめるはず? 」
 ・そんなに甘かったら、ストーリーを書く私も苦労しませんね。
  幽霧霞の生殺与奪権は読者や登場人物というプレイヤーが握ってますから。生きる殺すも皆様しだい
「しかしこれだけ仲が悪い状況でよく護衛任務が務まるなぁと思う、上層部の連中は体裁がそれだけ重要なんだろうなww」
 ・いつの時代。いつの物語であっても、偉い方々の体面は人の命より重要です
「フェイトを誘拐した理由が気になりますなぁ」
 ・一種の巻き添えです。ちょっとした心理を利用した束縛というのもありますが
「様々と縁の糸が絡んできましたが、浚われた三人の解決への導が見物ですね 」
 ・かなり面白い事になることは間違いなし
「その危機に駆けつけるのはレンかはたまたレクスか」
 ・スペック上、どっちも無理ですねぃ



『雪夜のライヴとカーチェイス』③

「みんな。集合ご苦労」
 雪奈は武道館の中ある関係者用の駐車場で揃った諜報部局員に声をかける。
「次元航行部隊や陸士部隊の騒ぎ様から解るように、如月千歳。音無琴羽。二人の周辺警備担当のフェイト・T・ハラオウン執務官。以下三名が誘拐された」
 諜報部に所属する局員の大体は動揺を顔に出さず、部隊長である雪奈の命令を待つ。
 しかし弥生はまだ信じられないらしく、少し動揺している。
「諜報部部隊長として指令を下します。アイドル二人が誘拐された事によって騒ぎが起こる事は想定されますので、騒ぎの鎮圧をお願いします。並びに緊急の作戦変更も行なう事を想定し、念話の回線は常に展開。以上!」
「Yes Sir!」
 諜報部の局員は足並みを揃え、雪奈に敬礼した。
「幽霧霞三等陸士と如月弥生さんはここに残って下さい。それ以外は解散!」
 雪奈の号令によって幽霧と弥生以外は駐車場を後にする。
「長月さん……」
 誘拐された三人が心配な弥生は弱々しい声を出す。
 冷ややかな目で弥生を見る雪奈。
 その目に弥生は一種の恐怖感を感じ、背筋に寒気が走った。
 雪奈はそのまま説明を始める。
「次元航行部隊013。ティアナ・ランスター執務官補佐の話によると誘拐犯は弁当屋を装って来たらしいです。私の予想だと配達中の弁当屋を強襲して、衣服から何まで揃えて来たのでしょう。全く……相手も馬鹿ではありませんね」
「自分はどうすれば……」
 楽しそうに笑う雪奈に弥生は訊ねた。
 想定していたとしても、やはり自身の担当しているアイドルを誘拐される現実に直面するとうろたえてしまう様だ。
 うろたえながら尋ねる弥生に雪奈は楽しそうに笑う。
「簡単至極過ぎる事を聞くんですね~。貴方が幽霧と一緒に誘拐犯から三人を取り戻して来れば良いのですよ」
 そう言って弥生に背を向ける雪奈。
「場は繋いでおきます」
 心配そうな顔をする弥生に雪奈は言った。
 弥生は雪奈の口から出た言葉に驚く。
「え……?」
「その代わり三人を取り戻すまで、この武道館をお借りしますね。お金はそちら持ちでよろしくお願いします」
「はいっ!?」
 身勝手とも言える雪奈の言葉に素っ頓狂な声を出す弥生。
 雪奈は笑顔で弥生に優しく言った。
「大丈夫です。如月弥生さんの所の社長に聞いたら、快く承知して下さりました。さあ、早く行って下さい。私にも準備というのがあるので」
 駐車場から武道館内へ歩き出す雪奈。
 そこで何かを思い出したらしく、背を向けたまま言った。
「多分、誘拐犯たちは弁当屋のワゴンで移動していると思います。どんな手を使ってでも追いかけて下さい。助っ人も呼んでおきましたので、上手にお使い下さい。貴方の車周辺で待機していると思うので」
「……ありがとうございます」
 背を向けている雪奈に頭を下げる弥生。
「御武運を」
 弥生は軽く手を振る雪奈から背を向け、幽霧と共に自車を止めている場所へ走り出す。



 会場入りを誘拐犯に悟らせない様にするためだったらしく、弥生の使っている白いワゴンは近くの無料駐車場に置かれていた。
 その白いワゴンに流線型のサングラスをかけた少年がよしかかっていた。
 ジャージを身にまとい、肩には長細いバックがかけられている。
「長月さんの言っていた助っ人は冬秋だったのか」
 弥生に冬秋と呼ばれた少年は身体を起こし、流線型のサングラスを外す。
 サングラスの向こうから、人懐っこい顔が現れる。
 冬秋はニヤリと笑いながら手を差し出す。
「そういうことや。よろしくな、弥生」
「ちゃんと働いて貰うからな」
 差し出された手を握り、わざと力を入れる弥生。
 力を入れる弥生に冬秋は楽しそうに笑い、力を入れ返す。
「いたっ! いたたたた! 力入れるな! 握り潰すつもりか!」
 自業自得だがやはり痛いらしく、弥生は悲鳴を上げる。
「車を乗り換える事も想定されるので、早く行きましょう」
 幽霧の言葉で二人は我に返る。
 弥生は幽霧にワゴンの鍵を投げた。
 鍵をキャッチした幽霧は不思議そうな顔をする。
「誘拐犯を追跡する術はある。運転とその両方は出来ないから、君が運転して下さい」
「……分かりました」
 弥生の指示に幽霧は頷き、運転席に乗り込む。
 助手席には弥生が乗り込んだ。
「助っ人の方はどちらへ?」
「ここや」
 外からそんな声が聞こえ、軽くワゴンが揺れる。
 そしてまるで大人一人分の体重が全体にかかったかのように、車体が地面に少し沈んだ。
 車体の天井に乗るとは思わなかった弥生は唖然とする。
 何をしようとしているか微かに理解した幽霧は驚きながらも天井を叩いた。
「よろしくお願いしますね」
「了解や」
 冬秋は肯定と一緒に屋根を叩いた。
 弥生から渡された鍵を穴に刺し込み、エンジンを開ける幽霧。
 難なくエンジンがかかり、幽霧はアクセルを踏み込んだ。
 車は地面にタイヤの黒い跡を残して走り出す。
「弥生さん。ナビゲートをお願いします」



 幽霧たちが雪奈から作戦を受け、犯人の追跡を開始したその頃。
 三人を誘拐した犯人たちの乗るワゴンはクラナガンの市内を走っていた。
 そのワゴンの側面にはしっかりと「ミッドフーズ」という塗装がなされていた。
 帽子で顔を隠し、口にはタバコをくわえた男がワゴンを運転しながら呟く。
「ん~。緊急の依頼だったけど、実際は依頼内容を詳しく知らないだよなー」
「ったく出発前に読んどけよボケェ! セレス、そこの紙取ってくれ。」
 赤い髪に黒い瞳の男が助手席でタバコを吸いながら、弁当を入れる為に椅子が取り外されている後ろで依頼書を読む女性に声をかける。
「京極もウラも車内でタバコは吸わないで! 全く……はい、どうぞ」
 セレスはタバコの煙を煙たそうにしながらウラに依頼書を渡す。
「あぁ? そんな事前からだろ。そろそろ慣れてもいいんじゃねーのか?  …ほら、依頼書。」
 ウラは荒い口調で言い返し依頼書をフードを被った男――京極に渡す。
「どれどれ……」
 器用に京極はハンドリングを怠らずに依頼書を読む。
「アイドルグループ『ウィンドワルツ』の如月千歳と音無琴羽の誘拐。後はこの車を乗り捨て、依頼人に届けるだけか」
「意外と楽な依頼だったな」
 後ろを再び見るウラ。
 そこには弁当を入れる大きなプラスチックケースの代わりに三人の女性が眠っていた。
 二人はきらびやかな衣装を身にまとい、もう一人は黒いスーツとタイトスカートを着ている。
 まさしくその三人は誘拐された如月千歳。音無琴羽。フェイト・T・ハラオウンだった。
「弁当屋の格好で会場に侵入。『蛇』から買った強力な催眠ガスでスタッフや警護に来ている管理局の人たちを眠らせ、ターゲットを誘拐だったからな」
「でも油断は禁物」
 セレスは二人を諌める。
「弁当屋の車を使っているとはいえ、どこで計画が破綻するか分からない」
 しかしウラはセレスの言葉を否定する。
「そんなの関係ねぇ」
 ウラの言葉に京極も笑う。
「俺たちのしたい事を……」
「「するだけだもんげ!」」
 楽しそうに笑いながら運転する京極と大声で笑うウラにセレスはため息をついた。
「とりあえず、おじぃの待つ場所まで行ければいっか……」
 クラナガンの市街を犯人であるウラたちの乗るワゴンが走る。



 幽霧たちは念話や通信で入る情報を元に誘拐犯のワゴンを追っていた。
 しかしクリスマスだと弁当屋やデリバリーサービスの車も大量に出没しているらしく、特定が出来ない。
 ほとんど当てずっぽで走っているような感じだ。
「中々見つかりませんね」
 運転しながらも周囲を見る幽霧。
 怪しい車は一つも見つからない。
「そういえば幽霧は何歳だっけ?」
 弥生はワゴンのハンドルを淀みなく操る幽霧に訊ねた。
 幽霧のハンドルさばきは慣れたもので、周りの流れに合わせながら進む動きは熟練のものであった。
 しかし少女のような風貌をしている幽霧だとお世辞にも、運転手が板についているとは形容しがたい。
 淡々とした様子で幽霧は答えた。
「十五です」
 弥生は幽霧の口から出た回答に硬直した。
「車の免許は?」
「持ってます」
「……何故に?」
 規定年齢より下であるのに、免許書は所有しているという状態に驚く弥生。
 ワゴンを運転する幽霧はどうやって得たのだろうか。
「仕事上で必要だったので」
「……取ったのは?」
 怪訝そうな顔をしながら問う弥生に幽霧は無表情で答えた。
「去年です」
「一体どうやって?」
 きっと幽霧は嘘をついていると思ったのだろう。弥生は更に問い詰める。
「鯖読みしました」
 まるで他人事のように幽霧は答えた。
「上? 下? というか、本当の年齢は何歳?」
 弥生はまだ疑っているらしく、幽霧に年齢を尋ねる。
「十五歳です。免許を取るときは上に鯖読みしました」
 そう言いながら幽霧は弥生に車の免許書を見せる。
 確かにカードの左端には幽霧の写真が入っていた。
 習得した年もきちんと書いてある。
 確かに偽造でもなさそうであった。
 証拠まで見せられた弥生は納得するしかない。
 軽く息を吐き出し、幽霧に弥生は言った。
「じゃあ、君の秘密を黙っておく代わりに自分の秘密も黙って貰おうかな」
 持っているケースから大学ノートとボールペンを取り出す弥生。
 意味深長な言動と取り出された物に首を傾げながらも幽霧は弥生の行動を見守る。
 大学ノートを開き、ボールペンを構える。そして弥生は呟いた。
「先天性古代遺失物能力発動……」
「!?」
 弥生の口から紡ぎ出された言葉に幽霧は驚く。
 『先天性古代遺失物能力者』は裏オークションで聞いた謎の名称。
 まさか、隣の助手席にその『先天性古代遺失物能力者』が座っているとは幽霧は思ってもいなかった。
 驚く幽霧など意識の外らしく、全く気づかずにその名を紡いだ。
「『欺瞞神ロキ悪戯聖書いたずらバイブル』」
 ボールペンを握る弥生の手に金色の紋章が入り、片目が深紅の瞳に変わる。
 弥生は肌に金色の紋章が浮かぶ手に握ったボールペンを大学ノートに走らせる。
 ノートに書かれた事柄は二つ。
 《今から五十分後に誘拐犯と接触》と《誘拐犯はクラナガン自然公園の駐車場にいる》。
 弥生がノートからペン先を離した途端、書かれた文字が一瞬だけ金色に輝いた。
「うん。これで良しっと……」
 ノートとボールペンを仕舞う弥生。
「如月弥生さん」
「ん? 何?」
 幽霧は車を運転しながらも弥生に訊ねた。
「今の……何ですか?」
 弥生自身も上手く説明出来ないらしく、苦笑しながら答える。
「書いた事を現実にする能力かな? いつの間にか身に付いていた能力だね」
 苦笑しながらも問いに答える弥生に幽霧は閉口する。
 しばらくしてから幽霧は口を開く。
「……差し出がましい事を言いますが、よろしいでしょうか?」
「うん? 何ですか? 自分の答えられる物なら答えるけど……」
 幽霧は直球な問いを弥生に投げかける。
「貴方はそれをどういう物だと仮定しますか?」
「そうだね……」
 実際にそんな事を考えてみた事がないらしく、弥生は考える。
 しばらく間を置いてから幽霧に答えた。
「自身の願いを叶える手段の一つ……かな」
「そうですか……」
 車の中に静寂が訪れる。
 聞こえるのは温風から出ると外で車が走る音のみ。
 しばらく経ってから幽霧は口を開く。
「これは本当に個人的な問いですが……」
 そのまま言葉に出すのは躊躇われるらしく、少し考える幽霧。
 躊躇いがちに言葉を区切りながら訊ねる。
「……貴方はとはいえ……何故、今も芸能界に身を……置いているのですか? その……」
「裏では「女装フェチの変態」と陰口を叩かれているのに?」
 幽霧が訊ねにくそうにしている内容を弥生は笑いながら口に出す。
「……はい」
 弥生の言葉に幽霧は頷く。
「存在意義は他人がどうこうじゃなくて、自分がどうしたいかなんですよ。他人に答えを求めるようなものではありません」
 弥生の口から出た言葉に幽霧は感嘆する。
 周囲から何を言われないようとも自身の意思を変えないという事は難しい事だからだ。
「理由は簡単です。千歳と琴羽さんが沢山の観客がいるステージでスポットライトを浴びる姿を一番近い場所で見たい……ただそれだけですね」
「弥生のシスコン軍曹~」
 さっきまで黙っていた冬秋がワゴンの上から茶化す。
「黙れ! この撲殺中毒者!」
「そうや。ワイはワーカーホリックや。何か文句あるかい?」
 あっさり開き直られたら反撃のしようがない。
 悔しい弥生は歯噛みする。
「奥さんの神威姐さんとセックスレスやからって、妹と妹の友人を襲ったらあかんで~。琴羽ならまだええけど、千歳やったら近親相姦や」
「ちょっ! 千歳を襲うわけないだろ!」
 顔を真っ赤にして否定する弥生。
 説得力が全くない。
「あやしいなぁ~。つーか、セックスレスは否定しないんかい……ちゃんと神威姐さんを満足させなあかんで~。雪奈姐さんの話だと、神威姐さんは羽にゃんこちゅう物に夢中ちゅう話やし」
「なんだってぇ!」
 冬秋の言葉に驚く弥生。
「そういえば、最近は風切羽捜査官によく絡んでいるらしいですね」
「うそだっ!」
 淡々と話す幽霧に叫びながら頭を抱え始める弥生。
 弥生の叫びを路上に響かせながら幽霧の運転するワゴンはクラナガン自然公園へと走っていく。



「本当に来ますかね」
「来るよ。自分の能力が外れた事は無いからね」
 弥生は車から降り、クラナガン自然公園の駐車場で誘拐犯を待っていた。
 待ち伏せしている事が誘拐犯に分からないようにライトは消してある。
 誘拐犯が来るのを待つ間に幽霧は弥生に訊ねた。
「再度聞きますが、如月弥生さんのそれは何なのですか?」
「書いた事を現実にする能力だよ。自身の運を犠牲にしてね」
 息を呑む幽霧。さっきは能力の代償までは知らされていなかったからだ。
 そして何故、『欺瞞神ロキ悪戯聖書いたずらバイブル』を最初から使わない理由も分かった。
 常に使用していたらそれだけ運を消費する。
 運が悪く怪我をしたり、運悪くテロに巻き込まれてもおかしくない。
 だから出来るだけ使用を控えていたのだろう。
「自分の予測の範囲内だけど……先天性古代遺失物能力は使用者の願望が忠実に現れているのだと思う。何故ならこの能力を得るまでは、自身の考えた通りに物事が進んで欲しいと思っていたからね……」
「そうなのですか……」
 核心にはまだ遠いかもしれないが、実際の能力者と会う事によって一歩前に進んだと幽霧は思った。
 ワゴンの上に乗ったままの冬秋は幽霧と弥生に通達した。
「来たで」
 駐車場の入り口からライトが近づいてくる。
 そして側面に「ミッドフーズ」と塗装されたワゴンが止まる。
 ドアが開き、中から赤い髪に黒い瞳の男が降りる。
「おじぃ……」
「こんばんは。誘拐犯さん」
 影から現れた弥生は出てきた男に声をかける。
「お前は……如月弥生!」
「誘拐したうちのアイドルたちを返して貰います」
 男に近づく弥生。
「京極! 車を出せ!」
「了解」
 返事の代わりに男はワゴンに乗り込み、逃走を図る。
「幽霧! 出して!」
「はい。了解いたしました」
 弥生は幽霧の運転するワゴンに乗り込む。
「……行きます」
 幽霧からの呟きとほぼ同意。
 タイヤをスリップさせながらワゴンが発車する。
「――っ!」
 冬秋は加速による衝撃に耐えながらも少しずつ腰を上げていく。
 何とか直立の姿勢になり、相手の車と接触する瞬間に備える。
 幽霧は法定速度を超えたスピードを出し、誘拐犯のワゴンを追う。
 誘拐犯たちもスピードを上げ、必死に幽霧たちから逃げる。
 更にアクセルを踏み込む幽霧。スピードメーターの針はもう少しで振り切れそうだ。
 弥生は身体を押し付けられるような衝撃に耐える。
 走行しながら幽霧は相手のワゴンに自身のワゴンを寄せた。
 瞬間、冬秋は天井を蹴り、跳躍する。
 そして相手の車へと飛び移って着地。
 冬秋はすぐに腰を低くし、これから訪れる衝撃に備える。
 それから瞬きもしないうちに、冬秋の乗る車が思いっきり揺れた。
 幽霧の運転する車から離れようと、大きくそれる。
 冬秋は四肢を広げて車の上にへばりつき、何とか振り落とされないように踏ん張る。
 あわせるようにして、幽霧の運転する車が大きく曲がる。
 ブレーキをかけながらハンドルを切った為、車がほとんど九十度に回転した。
 下手をすれば車体自体が反転しかねない無謀なハンドリング。
 そしてそれをあと刹那遅れていれば相手の車に激突しかねない絶妙なタイミングで幽霧はやってのける。
 口笛を吹く冬秋。
「あの可愛い譲ちゃんもなかなか凄まじい事をすんな~。春夏姉と同等かそれ以上のイカレっぷりや~」
 すぐに車は体勢を整え、相手に遅れない速度で追走を開始する。
 冬秋が乗っている車は左右に振られながらも、じきにまっすぐ走り始めた。
 感じる振動も少ない。
 しかし走り方が落ち着いてきたとはいえ、中では混乱が起きているのだろう。
 大声が車から響く。
「おい! なんか追ってくるぞ!」
「知らないわよ!」
 聞こえてくる声に冬秋は小さく苦笑する。
 まさか一人の青年が自車の屋根に飛び移ってきたなど、夢にも思っていないであろう。
 そして仮に冬秋の存在が気づかれたとしても、これから行う事の支障にはならない。
 肩に掛けていた長細い円筒状のバックのファスナーをゆっくりと開け、手を突っ込む冬秋。
「よっこらせっと……」
 バックの中から、冬秋は獲物を抜いた。
 それは一振りの釘バット。
 金属バットに無数の釘が刺さっている。曲がったり、紅いものが付いている釘がすごく禍々しい。
 グリップをしっかり握り、冬秋はゆっくりと腰を上げていく。
 直立姿勢になるとしっかりと車の屋根をスパイクつきの安全靴で踏み込み、身体の軸を固定。
「おわっ!」
 車の中から驚いたような声が聞こえた。
 誘拐犯に気づかれてしまったが、これから行う冬秋の行動に支障はない。
 軽く構えを取る。足を肩幅に開き、釘バットのグリップを握りながら全身で仰け反る様に思いっきり振り上げ、肩の力を抜く。
 丹田に気を込め、大きく息を吸う。
「せぃっ!」
 思い切り息を吐き出し、全力で振り上げた釘バットを車へと叩きつける。
 破壊音。
 いや。これはもう、爆発音の領域であった。
 幽霧は唖然とする。
 一瞬、屋根の中心がへこみ、反対に車の両端が若干地面から浮いたように見えたからだ。
 釘バットは半分ぐらいがワゴンの天井にめり込む。
 衝撃は車のフレームを駆け巡り、ほぼ全体に伝わっていく。
 車が走行する為に必要な部分を徹底的に蹂躙していく。
 威力が全て車に伝わった手応えを感じるや否や、冬秋は屋根に食い込んだ安全靴と釘バットを強引に引き抜き、屋根から飛び降りる。
 車の尻が左右に揺れたかと思うと、いきなり急ブレーキをかけた。
 きっとハンドリングが上手く切れなかったのであろう。
 地面に身を転がしながら、冬秋は車が急ブレーキをかける音を聞いた。
 次の瞬間、ハンドリングが効かなくなったワゴンは脇のガードレールに衝突する。
 ブレーキでワゴンをゆっくりと停める幽霧。
 弥生はいてもたってもいられないのか、助手席のドアを開き、ガードレールに衝突したワゴンに駆け寄る。
 ワゴンの助手席から男が出てきたのを見た途端、弥生は拳を握る。
「俺の千歳と琴羽に何してんだボケェぇぇぇぇぇぇ!」
 そして渾身の力で握られた弥生の拳が男の頬を捕らえた。
 車から出た途端、いきなり殴り飛ばされた男は地面に叩きつけられる。
 激昂している弥生は誘拐されていた千歳と琴羽の事など頭に無く、誘拐犯をボコボコにする事だけを考えていた。
 今度は千歳と琴羽を連れて行こうとする男に殴りかかる。
「セレス。ターゲットだけでも頼むなー」
「分かった」
 男は弥生に気づき、仲間の女に連れて行く二人を任せる。
「おらぁぁ!」
 雄叫びを上げながら殴りかかってくる弥生の拳を片手で掴む男。
 あいている片手で弥生の腹部に拳を叩き込んだ。
「ごぶっ……ぼぇ……」
 弥生の腹部に拳が突き刺さり、強引に息が吐き出させられる。
 普通なら意識を失って地面に叩きつけられる所なのだが、弥生は自分から舌を噛む事で意識を保つ。
 男の頭を掴む弥生。そして身体を後ろに反らせ、あろう事か、その頭を男に振り下ろした。
「これは千歳と琴羽の分っ!」
 一撃で額がへこんだのではないかと錯覚するほどの一撃が直撃する。
「これも千歳と琴羽の分っ!」
 再度、男の額に弥生の頭が衝突する。男は脳が揺れるような感覚に襲われる。
 弥生も痛いはずなのに、一撃ごとに頭突きの威力は増していく。
 しかし弥生は男の頭をしっかりと掴んでいる。
 弥生は男に向かって笑った。額の皮は裂け、額から出血していた。
 ここで初めて男は弥生の執念とも言える固い意志に恐怖する。
「最後も……千歳と琴羽の、分だっ!」
 渾身の力で弥生は頭突きの三連撃を叩き込んだ。
 一瞬だけ男の意識が刈り取られ、身体から力が抜ける。
 弥生は男の頭を掴んだまま強引に頭を下げさせる。そして片膝を叩きつけた。
 叩きつけられた片膝が男の顔に突き刺さった。
 男は意識を失い、弥生に倒れかかる。
 気絶しているとは気づいていない弥生は更に攻撃を加えた。
 倒れかかってきた男の背中に腕を回し、身体を反らす。
 それはへそで投げるタイプのバックドロップ。
 弥生によって男は完膚なきまでに倒される。
「あ~あ。ワイの出番は無しやな」
 意識を失った女を脇に抱えながら冬秋は呟く。
「……冬秋」
「大丈夫や。千歳も琴羽も無事や」
 冬秋の言葉に安心する弥生。
 誘拐犯の乗っていたワゴンに歩み寄る弥生。
 後部座席では千歳と琴羽が眠っていた。
 少しだけ髪形が乱れているが、それ以外は変わりない。
「良かった……良かった……」
「ワイは腹部にパンチ喰らっても頭突き三連撃かまして、更にバックドロップで止めを刺すお前の方が危険だと思うわ。というか、ココナッツクラシャーで既にオチとったで?」
 気絶した女を脇に抱えながら冬秋は安心する弥生に苦笑した。
「ん……? 兄さん……? 冬秋……?」
 弥生と冬秋の声がうるさかったらしく、千歳は目を覚ます。
「おはよう。千歳」
 弥生は目を覚ました千歳に笑顔を浮かべる。
「兄さん……はっ! ライヴは! 琴羽。琴羽。早く起きて!」
 ライヴ前に誘拐された事を思い出した千歳は隣で寝ている琴羽の身体を揺らす。
「千歳ちゃん……?」
 琴羽もどうにか目を覚ます。
「如月マネージャー……ココ、どこなのでしょうか……? えっ!?」
「ライヴはどうしたの兄さ……きゃっ!」
 所載を訊ねる二人をいきなり抱きしめる弥生。
 抱きしめられている二人は意味が分からない上に気恥ずかしいらしく、頬を赤らめながら弥生の腕の中で暴れている。
「良かった……本当に良かった……」
 弥生に抱きしめられている二人はその言葉で暴れるのを止めた。
「兄さん……」
「如月マネージャー……」
 二人は弥生の背中に腕を回し、抱きしめ返した。
 その光景を遠くから眺めながら幽霧は念話を雪奈に接続する。
[長月部隊長]
[ん? 誘拐犯たちから奪還できました?]
 雪奈は幽霧の念話に瞬時に反応する。
[ええ]
 頷く幽霧。
[威信を取り戻したいと思っている陸士部隊の方々を寄越すから、陸士部隊の方々が来たら、出来るだけ早く戻っておいで。ちゃんと場は繋いであるから]
[了解いたしました]
 雪奈との回線が切断される。
 念話が切れた後、幽霧は弥生たちのいるワゴンの方へと歩く。
「陸士部隊の方が来るそうです。誘拐犯を引き渡した後、出来るだけ早く武道館に早く戻って欲しいそうです」
 遠くからパトカーのサイレンが聞こえてきた。
「分かりました。ありがとうございます」
 弥生は幽霧に頭を下げる。
「えっと……ライヴの方は長月部隊長が場を繋げているそうです」
「ご丁寧にありがとうございます」
「ありがとうございます」
 千歳と琴羽の二人は幽霧に頭を下げる。
「兄さん……それ……どうしたの?」
「マネージャー……?」
 弥生の顔を見た千歳と琴羽は驚いたように瞬きしている。
「何でもない。二人は気にしなくても良い」
 顔を二人から背ける弥生。
「兄さん!」 
 千歳は手を伸ばして弥生の頭を掴み、無理やり前に向かせる。
 そして二人は言葉を失った。
 弥生の額に出来た傷跡から流れた血で顔が血塗れなのだ。
 全然大丈夫、と開き直るように弥生は笑う。
「弥生はな~」
「……言わなくても良い」
 冬秋は弥生の言葉など無視して、話を続けた。
「二人を誘拐した奴らにキレて、殴りかかったんや。二人の為にな」
 気恥ずかしいのか、弥生は二人から顔をそらしている。
「……兄さん……」
「マネージャー……」
 二人は着ている衣装の裾で血塗れになった弥生の顔を拭こうとする。
「止めろ。衣装が汚れる」
 衣装を汚さない為に弥生はわざと厳しい声を出す。
「じゃあ。これをどうぞ」
 幽霧は二人にハンカチを差し出す。
 そして誘拐犯の使ったワゴンの中で眠るフェイトの方へ行く。
「フェイトさん。フェイト・T・ハラオウン執務官」
 安否を確かめる為に幽霧はフェイトの身体を軽く揺らす。
「ん……。ゆう……ぎり……くん?」
「おはようございます。フェイトさ!」
 目を覚ました途端、いきなりフェイトに抱きつかれる幽霧。
「……フェイト・T・ハラオウン執務官?」
 何度も抱き疲れていると免疫も出来てくるらしく、無表情で淡々としている幽霧。
 抱きついた状態でフェイトは言った。
「……夢を見たの」
「夢ですか?」
 言葉を返す幽霧にフェイトは頷く。
 幽霧の肩に顔を乗せ、耳元で囁く。
「うん……幽霧くんが沢山の人を殺していたのそして……」
 言葉の続きを紡ぎ出すことを躊躇っているらしく、フェイトは口をつぐむ。
 そしてゆっくり吐き出す様にフェイトは幽霧に囁いた。
「……最後に自身の頭にアルフィトルテちゃんの銃口を突きつけて自殺するの……」
「……」
 フェイトの言葉に幽霧は硬直した。
 硬直した幽霧にフェイトは頭を下げる。
「……ごめん。変な事を言って」
 しかし謝罪した後も夢の内容がまだ尾を引いているらしく、フェイトは幽霧から離れようとしない。
 その状態でフェイトは幽霧に訊ねる。
「幽霧くんはいなくならないよね……?」
 フェイトの問いに大使、幽霧はすぐには答えなかった。
 代わりに幽霧はフェイトの背中を優しく叩く。
 まるで泣きじゃくる子供を慰める母親のようであった。
「……幽霧くん?」
「自分はそんな事はしませんよ」
 背中を叩きながら幽霧は答える。
「そんな事をする理由もありませんし……そんな事をする気もありません。それに……」
 幽霧は言葉を区切り、自信に言い聞かせるように答えた。
「……あの赤い世界の真実を知るまでは……死ねませんから」



「兄さん……大丈夫?」
 誘拐犯を陸士部隊に引き渡した後、幽霧たちは弥生のワゴンで会場の武道館へと向かっていた。
 そのワゴンの助手席で千歳は運転席で運転する弥生に尋ねる。
 血は止まっているが、弥生の額には傷が残っていた。
「気にしなくても良い。お前と琴羽さんは気分を落ち着かせる事だけ考えれば良い」
 弥生は前だけを見ながら答える。
「でも……」
 まだ納得出来ていない千歳は引き下がろうとしない。
 そこで今もワゴンの上で座っている冬秋が口を挟む。
「弥生の言う通りやで~。千歳と琴羽は自身のしたいようにやって行けばええ。泥や血を浴びるのはワイと弥生だけでええんや」
 そう言って冬秋はケタケタと笑う。
「冬秋の言うとおりだ。泥や血を浴びるのは自分だけで良い」
 ハンドルを切りながら弥生は答えた。
 車内には振動がほとんど無く、運転手姿も板についている。
 運転する姿からも弥生が熟練者であるように感じられた。
「ありがとうございます」
 真ん中の後部座席で心からの笑顔で言う琴羽。
「……ありがとう……兄さん。冬秋さん……」
 そして千歳は頬を赤らめながら恥ずかしそうに言った。
 弥生と冬秋は満更でもない顔でニヤリと笑った。
 一番後ろの後部座席では、幽霧は窓からぼんやりと空を見上げていた。
 空は灰色の雲で夜空が隠れている。
 季節的にはそろそろ雪が降ってもおかしくないのだが、降る様子も無い。
「空を眺めて、どうしたの?」
 隣で座っているフェイトが幽霧に尋ねた。
「そろそろ雪が降っても良いはずなのに降らないので」
「雪……そうだよね。今日はクリスマスイヴで、明日はクリスマスだから……雪も降って欲しいよね」
 フェイトも幽霧と一緒に空を見上げる。
 ちょうどその時だった。
 ワゴンの隣をオレンジ色の物体が通り過ぎたのは。
 車道の隣で何かが爆発する。
 発生した衝撃波で走っている車を揺らす。
「きゃあぁぁぁ!」
 激しく揺れるワゴンに千歳と琴羽は悲鳴を上げる。
[幽霧]
 いきなり雪奈から通信が入る。
[長月部隊長?]
[まず最初にごめん。幽霧。陸士部隊がしくじった]
 謝罪する雪奈の声から申し訳なさが感じられた。
 詳細について、幽霧は雪奈に訊ねた。
[一体、何があったのですか?]
[実は『ウィンドワルツ』を誘拐しようとした人たちにはまだ仲間がいてね~。装甲車で突っ込んで来たそいつにね……]
 幽霧は後ろを振り向き、背後の窓から後ろを見た。
 予想通り背後には装甲がつけられた無骨な形の車がワゴンから距離を取りながら追いかけてきている。
[注意するように言おうと思ったけど……遅かったようだね]
[はい……]
 背後から飛んでくる射撃魔法やミサイルを眺めながら幽霧は頷く。
 今は牽制が多いが、ワゴン狙いも何発かあった。
「おらぁ!」
 冬秋はワゴンに飛んでくるミサイルや射撃魔法を釘バットで打ち返す。
 しかし何発かは誘爆を喰らったらしく、冬秋のジャージの所々がこげていた。
[管理局で禁止している質量兵器も装備しているようです]
[まあ……裏の方面では、対魔導師兵器として質量兵器も流通しているからね~]
 苦笑する雪奈。その笑いにも力は無い。
 周囲の爆音がより大きくなる。
 窓からアルフィトルテを握った腕を出し、幽霧は飛んでくるミサイルを迎撃する。
 アルフィトルテから撃ち出された魔弾は空中でミサイルと接触し、空中爆発を起こす。
[雪奈さん。上からの判断はどうなったのですか?]
 フェイトは幽霧と雪奈の通信に口を挟む。
[上は管理局自体が質量兵器の存在を認めないから、様子見]
[なら……]
 バルディッシュを指の間に挟むフェイト。
 どうやら背後の装甲車を撃墜する気らしい。
 そこでフェイトを止める雪奈の声が飛ぶ。
[貴女がアレを撃墜しないで下さい]
[何でですか! 雪奈さん!]
 止める雪奈にフェイトは声を荒げる。
 雪奈は淡々と答えた。
[砲撃魔法や高ランクの魔法などは質量兵器が誘爆で災害を起こす恐れもあるからね]
「くっ……」
 確かに雪奈の言うとおりであった。
 追っている装甲車には質量兵器がまだまだ入っている恐れがある。
 その質量兵器が魔法で爆発したらどうなるか。
 きっと装甲車の中にいる誘拐犯たちだけではなく、周囲にも多大な被害が来るだろう。
 危険なのは爆発だけではない。爆発によって飛来する金属片なども人を殺す危険性がある。
 多重の意味で幽霧たちは生半可な方法で装甲車を撃墜する事は出来ない。
 背後の装甲車になされるがままにされている事態にフェイトは唇を噛む。
 ミサイルが足りなくなってきたのか、今度はワゴンに狙って銃弾が飛んできた。
 ある一発の銃弾がワゴンのバックドアを貫き、幽霧の頬と千歳の髪を掠める。
 しかしそんなことで動じている状況ではなかった。
「兄さん!」
 助手席でカーナビを見ていた千歳が叫ぶ。
「徐々に会場から遠ざかって来てるよ!」
 カーナビは確かに弥生の運転するワゴンが目的地である武道館から離れていっている事を表示していた。
 きっとこれも誘拐犯の作戦の一つであろう。
 誘拐出来ないのなら、ライヴに出れない様に妨害すれば良い。
 こうして妨害していれば例えライヴ会場のスタッフが場をつないでいても、痺れを切らせたファンが勝手に帰っていく。
 そしてライヴを行われなかった事が報道され、世間でのイメージが落ちる。
 もしかしたら犯人たちの作戦は妨害で無いかもしれない。
 弥生たちが上手く逃げているから妨害として作用しているのであって、本当の狙いは『ウィンドワルツ』の二人並びに関係者を殺す事であるのかもしれない。
 こうした殺人の類は裏社会で生きる者の得意な分野だ。
 例え殺人であっても事故に見せかけたり、殺人の証拠を出させずに雲隠れする事くらい十八番であろう。
「分かってる!」
 弥生はアクセルを踏み込み、スピードを上げる。
 装甲車もスピードを上げる。
 スピードを保ちながら弥生のワゴンは左折した。
 これで装甲車を撒けると弥生は考える。
 しかしの予想は綺麗に外れた。
 更にスピードを上げた装甲車が左折してきた。
 下手をすれば車体自体が反転しかねないリスクを負いながらも装甲車の運転手は弥生たちを追ってきた。
 それにより、弥生のワゴンと誘拐犯の装甲車が併走している状態になる。
「……ちっ」
 弥生はハンドルを握りながら舌打ちをする。
 装甲車を撒く為に弥生はスピードを出しながら左折したのだが、装甲車の運転もそれなりの技術者であるようだ。
 併走している装甲車の窓が開く。窓からせり出してきたのはショットガン。
「幽霧くん!」
 誰よりも一番先にショットガンの餌食になる幽霧にフェイトは叫ぶ。
「――。アイギス」
 至近距離でショットガンを撃とうとする相手に幽霧の顔は引きつる。しかし瞬時に[アイギス]を撃ち込んだ。
 [アイギス]は装填された弾から何まで石化させる。
 用を成さなくなったショットガンをいらないと判断のか、石化したショットガンを投げてきた。
 幽霧はそれをキャッチし、[アイギス]の石化を解除。
 ショットガンの銃口を装甲車に向ける幽霧。
「え……幽霧くん!?」
 明らかにショットガンに装填された弾を撃ち込む気満々の幽霧にフェイトがぎょっとする。
 死んだ魚の様に無機質な瞳で装甲車を眺めながらショットガンの銃爪を引く。
 銃口から撃ち出された弾が爆発音を立て、装甲車の装甲に穴を開けた。
 ショットガンによって吹き飛ばされた装甲は後ろに飛んでいく。
 後ろを走行している車がいたら避けてくれる様にフェイトは祈った。
 幽霧の追撃を考慮したのか、再び装甲車は後ろを下がる。
 しかしワゴンを追う事は諦めていない。 
[あっ。陸士部隊が交通規制を敷いたみたい] 
 すぐに入った情報らしく、少しだけ驚いた声で報告する雪奈。
[規制範囲はどのくらいですか?]
[武道館の周辺十km]
 幽霧は身体を伸ばし、運転席の隣にあるカーナビを見る。
 今は少し交通規制がなされている範囲から離れているようだ。
 少し考えた後、幽霧は雪奈に訊ねた。
[交通規制範囲内で直線距離が一km以上の場所は]
[あれでケリをつける気?]
 幽霧の問いに雪奈は驚いたような声を出す。
[はい]
[ふむ、分かった。完全詠唱版の使用を許可しよう]
 頷く幽霧に雪奈はニヤリと笑い、ある魔法の詠唱を許可する。
[君たちのいる位置から五百m先を右折。その後、一km先で右折した位置からがグッドポイントだよ]
「弥生さん」
「了解」
 雪奈の指示を聞いていた弥生はアクセルを踏み込み、スピードを上げる。
 幽霧はフェイトにも指示を出す。
「フェイト・T・ハラオウン執務官。その地点に着くまで、シールド展開を頼みます」
「うん。分かった。……パルディッシュ」
「イエス。サー」
 フェイトとバルディッシュはワゴンを覆うようにシールドを展開する。
 幽霧はわざとワゴンのバックドアに「アイギス」を撃ち込む。
 バックドアは「アイギス」の効果によって石化した。
[じゃあ、次は会場で会おう。絶対にも戻っておいで。まだまだ幽霧にはして貰わないといけない事があるからね]
[はい]
 頷く女顔の少年に蒼い髪の女性は微笑んで見せた。
 微笑が優しく溶ける。
 まるで労わる様な。慈しむ様な。
 そんな微笑み。
 雪奈と幽霧の通信はココで終了する。
「じゃあ……いくよ」
 弥生はワゴンのハンドルを大きく切り、曲がり角を右折した。
 ワゴンの破壊も狙ってかミサイルや銃弾が打ち込まれる。
 その攻撃はフェイトがバルディッシュによって展開したシールドが防ぐ。。
 ただし爆発の衝撃がワゴンを襲う。
 しかしスピードは減衰する事無く、逆に上がっていく。
 その先も法定速度を超えた速度でワゴンは駆け抜ける。
「幽霧くん。そろそろだよ」
「そうですね」
 ワゴンの窓から顔を出して後ろを見る。
 装甲車はしっかりと幽霧たちの乗っているワゴンを追いかけて来ている。
 無駄な弾薬を使いたくないからだろう。
 銃弾やミサイルが飛んでこない。
 再び弥生はワゴンを右折させた。
 現れたのはずっと先まで続く直線。
 雪奈の指示で陸士部隊が交通規制をきかせてくれたのだろう。
 前方には車一つない。
 そこから幽霧の戦いは始まる。
 幽霧は再度、窓から身を乗り出して後方を確認。
 あいかわらず装甲車はワゴンと距離を取りながら後をつけてきた。
 そろそろミサイルや銃弾による攻撃が再開されるだろう。
 顔を戻した幽霧は石化したバックドアを蹴り飛ばした。
「ぎゃあぁぁぁぁぁ!」
 弥生の叫び声が聞こえた気がするが、幽霧はあえて無視した。
 バックドアはまるで吸い込まれるように装甲車へ飛んでいく。
 犯人たちはそのバックドアを破壊する。
 石化したバックドアを破壊した誘拐犯たちが次に見たのは腹這いになりながら銃口を向ける幽霧の姿であった。
「煌めく白夜と暗き闇夜の狭間にありし悠久の黄昏。その中に黄金の月と白銀の太陽は見えるか」
 幽霧の口から言霊が紡がれる。
 アルフィトルテはその言霊に反応し姿を変える。
 粒子レベルにまで分解され、拳銃形態から狙撃用のスナイパーライフル形態に再構築される。
 同時にアルフィトルテを握る幽霧の腕がぼんやりと輝く。
「其は全てを貫く極星。あらゆる世界に存在する精霊の魂にして、永遠の護り手。それが故に世界最古の英雄となりし者」
 アルフィトルテの銃口の先に真紅の魔方陣が展開され、幽霧の腕に魔方陣のような紋章が浮かび上がる。
 徐々に、肩の付け根ぐらいまで紅い紋章で埋まっていく。
 身体が魔力の収束によって悲鳴を上げた。
 途端に魔法陣が揺らぎ、幽霧の身体に変調が起こる。
 皮膚と肉の間に異物を押し込んだような痛みと違和感が脳内に伝達され、幽霧は身体の奥から何かが込み上げてくるような吐き気を催す。
 しかし幽霧は歯を強く噛み、吐き気に耐えた。
 歯を強く噛んだ時に唇も強く噛んだからだろう。幽霧に口元から真っ赤な血が伝って落ちる。
「其は全てを穿つ月の雫。無限の闇を漂う者にして、冥府の棺。それが故に夜の王となりし者」
 体内の集束した魔力は強制的に銃弾サイズまで圧縮され、アルフィトルテに装填される。
 同時にその魔法は幽霧の魔力を圧縮して出来た弾を核とし、周囲の魔力も吸収していく。
 集束されていく魔力が荒れ狂い、制御主である幽霧に襲い掛かる。
 魔力制御による負荷までもが身体にかかり始めた。
 しかし幽霧は魔力の集束と濃縮を繰り返し、それを制御する事を止めない。
 弾は高速回転しながら撃ち出されるのを待つ。
「其は全てを灼く紅陽。全てを照らす光にして、終焉の劫炎。それが故に天の覇者となりし者」
 更にその術式は幽霧の身体を蹂躙し、圧搾し、全身の魔力を引きずり出し、圧縮が繰り返された弾に収束した。
 その時点で既に幽霧の身体は疲弊し、意識は希薄となっていった。
 身体が冷たくなっていく代わりにリンカーコアがマグマのように燃え滾っていく。
 アルフィトルテの中に装填された魔弾は今をなお、回転と魔力を加えていく。
「其は幾千。幾万の始まりと終わりを束ね、世界を穿つ一閃を放つ」
 幽霧はアルフィトルテの銃爪に指をかける。
 しかしその身体やデバイスは痙攣か何かで震えていた。
 フェイトは痛々しい姿を晒そうともアルフィトルテを握る幽霧に痛々しさを感じた。
「其は幾千の神と万有の魔王すら撃ち抜く英雄の魔弾――」
 荒い息を吐き出しながらも、死んだ魚のように無機質な瞳で幽霧は装甲車を見る。
 その吐息は見ているものに痛みすら感じさせてしまいそうであった。
 身体の震えだけでも止めようと、幽霧の手に手を乗せるフェイト。
 フェイトに手を触れられる事で身体がびくりと震える幽霧。
 幽霧の手は氷のように冷たい。しかし何故か胸の部分は炎のように熱い。
 冷たくなった幽霧の手がフェイトの体温を少しずつ奪っているのか、徐々に手が温かくなっていく。
 そして幽霧の身体の震えが止まった。
「――アルテ・アリア」
 幽霧はその魔法の銘を呟き、アルフィトルテの銃爪を引いた。
 銃爪が絞られる事で撃針が今もなお、魔力の吸収と急速回転を行う弾の尻を叩く。
 そしてアルフィトルテの銃口から、魔力の集束と圧縮が限界までなされた魔弾が撃ち出された。
 撃ち出された魔弾は虹のように輝きながら燐光を撒きながら飛んでくるミサイルや銃弾。射撃魔法を貫く。
 しかしその威力は一向に衰える事など全く無い。
 虹色の渦を巻きながらほとばしる光が奔る。
 ついに弾は装甲車のタイヤに着弾。そして片側の前輪と後輪を抉り取った。
 片側の前輪と後輪を抉り取られた装甲車は摩擦で火花を出しながらゆっくりと止まる。
 魔弾は光を放ちながらも徐々に消え散る。
 全てを殲滅する様な威力を孕んでいた事を思えば、消え行く姿は余りにも呆気なく儚かった。
 ワゴンは幽霧の魔法によって停止した装甲車を置いて、武道館へと走る。
「大丈夫?」
 フェイトが後部座席で幽霧に訊ねる。
「ちょっと……眠いです……」
 そう言って幽霧の身体は倒れる。
 幽霧の身体をフェイトは受け止めた。
 疲労が限界に達したらしく、既に幽霧は寝息を立てながら眠っていた。
 さっきの通信によるとまだまだ幽霧はする事があるらしい。
 フェイトはこの間だけでも寝かせてあげようと思ったのか、眠る幽霧の頭を胸の間で抱きながら囁いた。
「ごくろうさま」
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3件のコメント

[C131]

質量兵器といえばミサイルですがそんなもん町中でぶっ放す誘拐犯すごい人です色んな意味で尊敬です
陸士部隊がやられたのは、如月様の運のせいでしょうか?

[C132]

お疲れ様です!
やはり、弥生様がシビれるほどかっこよかったですねー
運を削る能力……だから悪運強い神姐と絡んでるんですね!
ちょっと読みづらかったけど、楽しかったです

ライヴの方は長月部隊長が場を繋いで……の下りで、ノリノリで踊る部隊長を幻視しました…
  • 2008-08-05
  • 投稿者 : 縹
  • URL
  • 編集

[C133]

まぁテロリストは度が過ぎれば過ぎるほど遠慮というものをしなくなりますからね。
他人を巻き込んでナンボですしw
しかし、やはり詠唱が長いw これは承認が必要だわな、危なっかしくてとてもじゃないが使う気になれん
だが、そんな幽霧でも心配してくれる人たちが居るって事だな。 フェイトの夢はある意味で予知夢ッぽいが...
  • 2008-08-07
  • 投稿者 : 恭也
  • URL
  • 編集

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雪奈

Author:雪奈
「交換戯言日誌」を見に来て下さってありがとうございます。
終焉の引き金を引くのは貴方。
物語の続きを作るのもまた……
読んでいる貴方なのです。






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