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[C240]

管理局の部隊も一筋縄ではいかない時代ですねぇ。
まぁ、レシピの用途自体が持ちすぎた力の抑制にあたるのでしょうから妥当なんですけどね。
久しぶりの更新おめでとうございます。
相変わらずの霞、いや今はシャルさんか。と、正体ばれてヴィヴィオですね。
 二人の会話は見ていて凄く違和感ないので好きです。
 そんな訳でレシピの説明知識の説明が入った今回。次も楽しみです。
 では
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[T13] まとめ【魔法戦記リリカルなの】

ずいぶんと間を空けてしまいましたので、『お久しぶりです』でしょうか。どうも、長月です。ちょっとオリ
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魔法戦記リリカルなのはギャルゲーテイストPeace of Relations.012

ずいぶんと間を空けてしまいましたので、『お久しぶりです』でしょうか。
どうも、長月です。

ちょっとオリジナル色強すぎるからって、暢気に書いていたらもうこんな季節ですよ。
前の更新が夏で、今はもう秋と冬の中間点辺りの11月ですよ。まったく、どうしてこうなった状態です。
やっぱりパターンを変えてやるもんじゃないですね。そこは少し反省です。
もう周囲の反応をいちいち気にしてやるもんじゃないですね。
私のやりたいようにマイペースでいきましょう。私のやりたいようにマイペースで。
では、誠に久しぶりの更新で。

【とある大規模情報都市の地下書庫の深部にて】

.
「同行……ですか」
「お願いしますっ!」
 随伴に関しては全く問題ないが、腑に落ちない点が一つ。
「オリヴィエさんなら、閲覧はともかく入室の権限は与えられてるはずですが」
 もし彼女が『図書館司書』候補者なら、ここの表層しか出入りを許されていないだろう。
 しかし無限書庫の司書となるならば、『魔道図書館司書』の資格が必要となる。
 ヴァイゼ・バアルでは実施研修の為に、その資格修得候補者には地下階層への立ち入り権限を与えられているはずなのだ。
「そうなんですけど……」
 視線をそらして言葉を濁すオリヴィエ嬢。何故か耳まで真っ赤になっている。
 一体、何が彼女をそうさせてしまったのだろうか。
 どうしたものかと反応に困る自分。そんな自分に相手はか細い声で、
「地下に一人で潜るの……怖いんですよぉ……」
 目に涙を浮かべてそう告白したのである。
「あ~……そう、でしたか」
「だって、だって、あそこ薄暗くて怖いじゃないですか」
 目を潤ませ、身体を震わせてしがみついてくるオリヴィエ嬢。
 ヒールも履きなれてはいるが、流石に飛びつかれるとバランスを崩しかける。流石に曲がりなりにも年上の自分がそんな醜態晒すわけにはいかないが。
 確かにここの地下は余り機材を持ち込むわけにはいかないから室内が暗いことは否定しない。
 でも、
「無限書庫も大概だと思うのですが」
「あそこはちゃんと照明入ってるじゃないですか」
 泣きそうになりながら自身の肩口に顔を押しつけて来る彼女。
 果たして、大学生がそれで大丈夫なのだろうか。
 確かに今から行く場所よりかは遥かにましだろう。
「でも、無限書庫がそうなったのもここ最近の事ですよ?」
「……ふぇっ?」
 やっぱり知らなかったか。まぁ、検索魔法や取り寄せ用の魔法を使いこなせれば、最低限は入り口付近で可能だから当然といったら当然か。
「上が無限書庫の価値を認めるまでは、少数精鋭で回していたのです。知りませんでしたか?」
 顔を起こし、こくこくと頷くオリヴィエ嬢。とりあえず離れて欲しい。周囲の目がやや痛い。
 今でこそ優秀な司書長のおかげであの書庫の有用性が認められ、作業員の数も年月を重ねるごとに少しずつ増えてきている。
 だから気を使う余裕が出来、内装はそれなりな部類となっているが……昔は酷かった。
 当時は無限書庫の中身がほぼ全てが未整理のままで、気軽に利用出来る場所ではなかった。その為、スクライア司書長が『闇の書事件』でその利用価値を証明するまでは、予算すらまともに下りていなかったのだ。
「シャルさんって、研究員さんなのに色々とご存知なんですね」
 尊敬するような視線を向けてくる彼女。
「私もまだ若いですが、それなりに色々とありましたので」
 自分もヴァイゼ・バアルの地下書庫が利用できるようになるまでは、無限書庫を利用させて貰っていたからよく覚えている。
 本来なら部隊チームを組んで年単位での調査が必要とまで言われた超巨大データベース。
 あの当時はまだ幼かった自分は力を得る為にそこへ、何の躊躇いもなく飛び込んだのだ。
 まだ満足に電気が入っておらず、非常灯程度の薄暗さの中で情報整理と検索作業が、あの時は当たり前だった。
 昔のそんな事情を知っているものだと、実に恵まれた環境になったものだと思わず感慨深く感じてしまう。
 まぁ、重要文献がある深部は自ら魔法で明かりを出さなければならないくらい暗いのには相変わらずだろうが。
 そういえば、自分より少し年上であった司書長殿はちゃんと元気にやっているだろうか。
 最近、無限書庫に対する『うみ』の扱いが酷いという噂を耳にしたのだ。昔から幸薄い彼の事だから、激務に追われていてもおかしくない。
「……シャル、さん……?」
 どこか心配げな声を出すオリヴィエ嬢。どうやら物思いにふけてしまっていたようだ。
 とりあえず今は目の前にいる彼女を何とかしないと。
 自分は白衣にしがみつくその手に右手を伸ばし、
「失礼。それでは、参りましょう。オリヴィエさん」
 綺麗なその手を恭しく取って顔の辺りまで持ち上げる。
 そして自分は目を軽く細めつつ小さく首を傾げて見せる。
 カウンターから黄色い声が聞こえた。ちょっと視線の刺々しさも増した。
 これをやると女性局員には、割りと喜ばれるのだ。我ながら気障っぽいと思うが、円滑に物事を進めるには適しているからよく使わせて貰っている。
「は……はぃ……えっと……」
 顔を真っ赤にさせ、しどろもどろになる彼女。
 どうやら悦ばせるどころか、困惑させてしまったらしい。
 初々しさを感じつつもやっちゃなぁと思いながら、その手を引いて書庫へと向かう。
 どこか生暖かいのと刺々しいのがないまぜになった視線を周囲から向けられながら――。

 *

 地下への転送用の魔法陣がある倉庫はまだ朝だからか、職員の数も少ない。だからスムーズにたどりつくことが出来た。
 転送用のそれは地面に刻みつけられていた。一見すると何かのいたずら跡のようにも見えるが、れっきとした転送ポートであった。
 自分と彼女はその上に立ち、魔法を発動するように魔力を円環に通す。身体の中から微かに何かが削れるような感触と共に、浮き上がる感覚を得る。
 そしてまばたきを軽くした時には既に目の前の風景が一気に変わっていた。左右にあった本棚が消失し、空間がより広くなる。目の前にあった壁は厳重に閉じられた門に変わっていた。
 これが、それぞれの地下階層に存在するゲート、またの名を『英知の門』である。この扉を隔てた向こうにあるものこそ、特定の資格保持者でなければ閲覧できない地下書庫だ。
 魔力を吸って今も虹色に輝いている光の環から自分は足を踏み出し、見るからに堅牢で強固な門に手を触れて魔力を通す。一瞬だけ魔法発動用の魔法陣が展開され、文字が浮かび上がる。
「……Weisheit ist besser als Reichtum知恵は富に勝る
 声に魔力を込め、詠唱するように浮かびあがった文字――『英知の門』の解除キーを小さく呟く。
 言葉に反応するように門に複数の魔法陣が展開され、高速で回転し始める。何かが外れ、何かとかみ合っていく音が空間に響く。
「英知の門よ、その門戸を開き……その英知を我の前に示せ」
 最後の一言が扉の最終解除を実行させ、まるで壁のようであった扉に一筋の線が浮かび上がる。
 それこそが、板と板の間に存在する境界線。切れ目であり、開く為の隙間だ。
 これで後は軽く押すだけで簡単に『英知の門』は開く。
「……さて、参りましょうか」
 呆然とした様子で立ち尽くすオリヴィエ嬢の方へと戻り、再びその手を取る。
 何故か手の筋肉が少し強張っていた。もしかして、地下書庫の方へは始めてきたのだろうか。
 とりあえずエスコートするように彼女の手を引き、そして門前で足を止める。
 いきなり立ち止まった自分を不思議そうに見つめる彼女に、ちょっとした問いを投げかける。
直射型砲撃魔法ディバインバスター撃てますか?」
 はい、と頷く彼女に自分は静かな声で言った。
「何かあった時は、その封印砲を使ってお逃げ下さい」
 その言葉に首肯しつつも、何故ディバインバスター? と首を傾げるオリヴィエ嬢。
 まぁ仕方ないといったら仕方ないだろう。昨今では砲撃魔導師『砲の王』高町なのは女史のせいで攻撃魔法として有名になってしまったのだから。
 だから彼女がディバインバスターを知っていても、〝浄化〟や〝禊ぎ〟の効果があるのを知らなくてもおかしくない。
 だが文系魔導師にとっては暴走した魔道書や魔道生物に対する強制的な封印や鎮静に用いる事の方が多い。魔道図書館司書の単位の一つに『攻性封印による暴走鎮圧』があるのだから間違いないだろう。
「でも、くれぐれも……私を助けようとか思わないで下さい」
「……え?」
「自分が助かる為にその魔道、お使い下さい」
 何かおかしい事を言っただろうか。自分の言葉に驚愕するオリヴィエ嬢。
 いや、本当に地下書庫の魔道書が暴走したら洒落にならないのだ。
 いざと言う時の為に収められている書物には強力な防護処理や封印処理が施されているが、年代物のそれらはただ〝在る〟だけでそれなりの影響をもたらす。
 だからこの手の事態が発生した時は魔道書一冊の暴走で収まらない。連鎖的に他の書物も励起してしまい、時間を重ねれば重ねるほど被害は甚大となる。
 きっとその時は〝シャルラッハ・リンドヴルム〟の携帯端末型デバイスだけではなく、〝真田 霞〟の『アルフィトルテ』も使う事となるに違いない。
 それで自分の正体が露呈する事に繋がるのも問題だが、どちらかといえば封印作業による戦闘に彼女を巻き込んでしまう事を自分は危惧している。
 自分もいかんせん未熟者の部類。被害を迅速かつ最小限に治める為になりふり構わず強力な魔法を行使し、オリヴィエ嬢の事を間違いなく見殺しにするだろう。
 勿論、彼女の事を守りながら封印班が来るまでその場をしのぐと言う選択肢は存在しない。長引けば暴走の余波で施された処理がほどけ、他の魔道書も勝手に起動するのが目に見えている。
 もしもそれで〝この子〟の身に少しでも何かあったならば、自分はオリヴィエ嬢の親に合わせる顔がない。
「約束、出来ますか?」
 だからそうなった時は、彼女自身で退路を切り開いて貰わないと困るのだ。
「……はい」
 自分の思いが果たして彼女に伝わったのかは分からないが、真剣な顔でこくりと頷くオリヴィエ嬢。
 ああ、これで良いのだ。やや過保護かもしれないが、彼女には輝かしい未来も、彼女を思って泣いてくれる人も、ちゃんといる。
 だから――ちゃんと生き延び、少しずつでも良いから力を得て貰わないと。不要な悲しみと喪失を得ない為に。
「それでは行きましょうか」
 そして自分は捧げ持つようにオリヴィエ嬢の手を引き、片手でその扉を押し開けた。

 *

 相変わらずヴァイゼ・バアルの地下書庫の中は暗かった。
 魔法で生み出した球体状の照明で作業机のある入り口周りは明るいが、魔道書が保存されている本棚は対処的に暗い。
 奥へと続く道がまるで探索者を喰らう獣の口のように思えた。ここに収められているのが、それなりに〝毒〟のある魔導書の数々だからあながち間違いではないが。
「シャルさん……」
 弱々しい声で自分の手を握って来るオリヴィエ嬢。緊張感か、はたまた恐怖心だろうか。手の筋肉がより強張り、少しだけ震えている。
「はいはい……」
 案内側と利用者の立場が逆転している感は否めないが、とりあえずその手をぎゅっと握り返す。
 無限書庫での勤務を志望ならば、そこら辺も慣れなけれて欲しい所だが、まぁ無理強いさせるのも良くない。
 無茶はさせても、無理をさせるなという家訓ならぬ隊訓が諜報部にはある。即座に矯正してトラウマ作るよりも、時間を掛けて順応させた方が彼女にも良いだろう。
 それにこの前、局内でのパワーハラスメントが一般の新聞社にすっぱ抜かれて大騒ぎになったところなのだ。
 長年、魔導師資質関係の問題で人権屋や市民団体から攻撃を受けているのに、その問題も加わってより情勢が混迷し始めている。
 一応、辺境の地であるここまで報道屋の手が伸びる事はないだろうが、誰かが噂でそんな事を口にすればいずれは何かしらのデモ運動の火種にされかねない。
「とりあえず、そこで待っていて貰えますか? 奥から資料引っ張ってきますので」
 入り口付近の椅子に彼女を座らせ、自分はその手をほどく。
 手が離れた瞬間、まるで迷子になったかのような寂しげな顔をほんの一瞬だけ浮かべるオリヴィエ嬢。
 慣れない場所に取り残されて不安なのは分かるが、流石にこちらも目的があって地下書庫まで来た身。ずっと構っている訳にはいかないのだ。
「なら……」
 携帯端末に手を伸ばそうとする彼女。きっといつも通り検索魔法を使うつもりなのだろうが、
「止めて下さい」
 ここでその手の魔法を発動させるのは、いささか不味い。
 咄嗟の一言に、オリヴィエ嬢の身体が跳ね上がる。
「シャ……シャル……さん?」
 ちょっと自分の声音が鋭すぎたようだ。
 戸惑いながら自分の名前を呼ぶ彼女の声が震えていた。
 叱責されるとでも思ったのか、目の端に涙の粒まで浮かべている。
「ごめんなさい。地下書庫で検索魔法掛けると、不干渉で魔道書が暴走する恐れがあるんです」
 検索魔法は読んで字の通り書物に微量の魔力を通し、検索内容に関係する文章や画像などを見つけ出す魔法だ。
 基本的に危険な魔道書を取り扱わない無限書庫やヴァイゼ・バアルの表層の本なら検索魔法を使っても問題ない。
 しかしここの地下層にある資料は魔力をほんの微量でも通せば、それが引き金となって起動するタイプもある。
 手元にあるならどうにかなる。だが検索魔法は設定しないと無差別に行う為、見つけた時には既に魔道書が勝手に起動している言う事もありえるのだ。
「そうですか……ごめんなさい」
 うな垂れるオリヴィエ嬢。知らなかった故の不手際をしやってしまって落ち込んじゃったようだ。
 そんな彼女に自分が出来る事としたら、
「……シャルさん?」
「知らなかったなら、これから覚えていけば良いんです」
 口元を緩めて微笑んでるように見せながら、相手の頭を撫でて諭すくらいで。
「でも、今の私……役立たずですよね」
「そんなことないですよ」
 まだ少ししょんぼりしている彼女の髪を指で梳かしながら、声音を柔らかくして言葉を返す。
 本当はちゃんと櫛でしないと毛が痛むのだが、今は勘弁して欲しい。
「出来る事を伸ばし、出来る事を増やせるよう頑張れば良いんです」
 それにしても綺麗な金色の細い髪だ。指から滑り落ちる感触が意外と気持ち良い。
「本当に、シャルさんって……口が上手ですよね……」
 何故か今度はため息を漏らされる。そんな事をされるような発言をしたつもりはないのだが。
「じゃあ、すみませんがオリヴィエさんの権限で書庫機能の限定使用権限インスタントパスの一時委託……その承認をお願い出来ませんか?」
 出来ますよね、と今度はちゃんと微笑みながら自分はオリヴィエ嬢に問いかける。
 書庫機能の限定使用権限インスタントパスとは、魔道図書館を効率よく使う為の機能を使用する為に必要な権限だ。
 ここでは書物の構成上の理由で使用できない検索魔法の使用権限や、広大な書庫を移動する為の短距離跳躍ショートジャンプ用の魔法陣利用権限がそれに該当する。
 その権限は申請すれば司書より交付され、一時的であるがこの広大な情報の森から知恵を得る為の手段を得られるという訳である。
 だが与えられるにはそれなりの資格保有者であるか、それを利用するに見合った理由がなければならないが。
 司書の中には限定使用権限を申請しても渡してくれない者も意外と多い。
 権限の一時譲渡が義務でないのも理由の一つであるが、これは利用者への信頼と助けたいという思いに寄ってなされなければならないからだ。
 そもそも悪用されても良いという覚悟がなければ、地下書庫で権限譲渡を行うべきではない。
 まぁ、情に漬け込んで権限を一時委託させる自分も大概だが。我ながら、えげつない。
「本当に、シャルさんって……〝わるいひと〟です」
 そんな事を言いながらもオリヴィエ嬢は自分の携帯端末に電子書類形式で書庫機能の限定使用権限インスタントパスを送ってくれた。
 細目で非難がましい視線がやや痛かったが。
 だから空気を払拭する為に自分はこんな反応を取ってしまう訳で。
「それほどでも♪ 可愛い反応するオリヴィエちゃんも悪いんだよ、キャハっ!」
 うん、やべい。やっている自分でも思うが……ほんと、気持ち悪い。
 どうやったら、こんなキャピキャピ声が出るもんなんなのか自分ですら分からない。
 時々、意図しないところでへんな人格意識キャラが出てくるから困る。
「シャルさんって、本当に……変な所で振り切れますね……」
 こちらが予想した通り彼女は苦笑いする。
 ええ、いや、ほんと……すみません。

 *

 集めて来た必要資料の山を移動させつつ、自分はオリヴィエ嬢の待つ席へと戻る。
「随分と、遅かったですね」
「……ええ、申し訳ありません。セクター間の移動に時間が掛かりました」
 彼女に恨みがましい視線を向けられたが、少なくとも嘘は言ってない。
 地下階層同士の移動は出来ないから、わざわざメインエントランスの魔法陣を経由して動かなければならない。
 勿論、それ以外の場所からは地下階層に向かえないという強制概念ルールが敷かれている。
 メインエントランスのカウンター以外から侵入出来ないだけあって、建物の耐久度はともかく防犯性に関しては聖王教会本部中枢レベル。
 それだけに地下階層に保存されている蔵書の質は半端ない。噂では古代ベルカ王家の魔道書が地下深くに保存されていると言われているくらいだ。
 だから年々、堅固な地下書庫のセキュリティに不正アクセスをかけて悲惨な目にあう者が後を絶たない。
 ここの正式な職員ならば他の潜入方法を知っているだろうが、それ以外の方法は非公開になっているのだ。
 その上、融通の利かない司書と問答をかましたり、別の階層にある書物をこっちに持ってくる申請の受理を待ったりで時間が掛かったのだ。
「でも……これで、作業が出来ます」
 自身の周囲にある魔道書限定で検索魔法を通し、同時並行で端末に入れてある自分のレシピをリストアップ。
 展開した空間モニターに検索魔法をかけて抽出した魔法を転写し、魔道式と詠唱に目を通していく。
「レシピの更新……でしたっけ」
 どこか探るようなオリヴィエ嬢の声。自分は自身の扱う魔法の式と魔道書から抜いた情報を見比べながら頷く。
「ん、まぁ……目的としては、そんなところですね」
 正直な事を言えば、次回提出分のレシピは仕事の合間に完成している。研究費もしっかりと降りる出来に仕上がったと思う。
 だからここに来たのは、めぼしい魔法を仕入れたり手持ちの魔法の強化したりといった個人的な目的であったりする。
 視線を空間モニターに向けている自分に、彼女はこんな問いを投げかけてきた。
「……シャルさんがよく言ってるレシピって、どういったものなんでしょうか?」
 作業の手を止め、情報の抽出も停止。中途半端な状態ではあるが限定励起している魔道書の稼動を中止させ、念の為に封印もしておく。
固有戦術書レシピという名前自体、専門用語みたいなものですからね」
 自分もまともにそれを知ったのは管理局に入ってからだったし。
「この場合のレシピというのは、そうですね……」
 少し考えてから自分は彼女に回答する。
「〝自分が出来ること〟……でしょうかね」
「?」
 どうやら表現が抽象的過ぎたらしく、意味が分からないと言わんがばかりに首を傾げるオリヴィエ嬢。
「自身の固有技能。使用魔法とその特徴。それらを全てまとめた論文……レポートみたいなものです」
 ただし、技能向上をチェックする指針でもあるから局員の給料明細に影響が入る事も多い。
 そもそもレシピというのは独自のシステムや魔法を運用する魔導師を管理する為のものだ。
 だから、
「近い表現で言えば、〝特許申請〟でしょうか」
「特許?」
 魔法にそんなのがあるのだろうかという顔をするオリヴィエ嬢。
「有用な技術を公開し、それが社会に貢献できるものであったなら……お金が降りますので」
 だから辺境の地で任務に当たっている武装局員や魔導師の資質を持つ研究員はこれで稼いでいる者が割と多い。
 管理局に属さないが、技術提供を行っている組織がいくつか存在するのもそこが理由だ。
「それに、相応の研究を行う技術者なら研究費も管理局から頂けますので……提出して困るものではないですね」
 自分は古代魔術の再現という分野で研究を行っている為、下りる予算も割りと普通の研究者より優遇されている。
 まぁ、再現した魔法が異世界を侵攻する魔道兵装にされる事を考えると――ちょっとした罪悪感を得るが。
「独特な魔法を使う局員は提出が義務付けられていますね」
 諜報部は大体が既存の魔法ではなく、独自で編み出したものを使う。
 だから諜報部の場合は自身の固有技能や体質といった特徴全てをまとめた論文の随時提出が義務付けられている。
 もし遅れれば、上層部から反逆行為といわれのない言いがかりをつけられて内部監査されるのだ。
 それで色々ともたつかれると今度は人事課と会計課がうるさい。
 まぁ、監視しなければ何かをやらかすか分からない部隊は雁字搦めにして置きたいと言う気持ちも分からなくはないが。
「でも、実はこれは……ベルカから伝わった文化なんです」
「……?」
 彼女の有する知識の中に該当するものがなかったのだろう。不思議そうに首を傾げるオリヴィエ嬢。
 自分は術式考証の為に取って来た歴史書に視線を落として言葉を続ける。
「オリヴィエさんでも、『奉剣奉書』という言葉は知っているかと」
 ちらりと視線を少女に向けると、何だか困ったかのように汗をかく姿があった。
「……小学校の歴史で習ったかと思うのですが」
「そそそっ、そうですねぇっ!」
 館内にもかかわらず大きい声を出す彼女。
 うん、動揺が隠せていないのがよく分かった。
 今は利用者少ないものの、図書館勤務の人間がこれで良いのだろうか。
 内心ではため息を漏らしつつ、自分は言葉を投げかける。
「そういえば今日は随分と早いシフトなんですね」
 それも口元を吊り上げ、うっすらと笑みを浮かべて――だ。
「創校記念日で、しょ……大学が休みなので」
 身体をびくりと震わせ、苦笑いしながら誤魔化すオリヴィエ嬢。
 どうやら咄嗟の失言を笑顔で流してしまえるほど、まだ面の皮は厚くないらしい。
 まぁ、自分より年下の女の子をいじめすぎるのも良くないだろう。
 実は彼女が名乗ったSt.ゼーブレヒト魔法学院大学一年という学歴も、オリヴィエ・ヴァレンシュタインという名も、真っ赤な嘘。
 いや花も恥じらう女学生である事と、名前に関してはある意味、間違ってはいないかもしれないが。
 自分の前に立つ彼女の正体はSt.ヒルデ魔法学院初等科二年の高町ヴィヴィオ嬢。
 数日前に公衆の面前で赤っ恥をかかせてしまった高町なのは教導官の娘さんである。
 だから正直な事を言えば、しばらく会いたくなかったのだが。
 相手には正体が発覚していないが、流石に気まずさというのがあるのだ。
「……まぁ、良いでしょう。話を続けます」
 そう、自分が気にするべき問題ではない。
 何故ならヴィヴィオ嬢の事情に踏み込む資格はないからだ。
 彼女には、彼女なりの葛藤やそういうのがある。
 それが変身魔法からも分かってしまうのだから、安易に踏み込んではいけないと感じたのだ。
「奉剣奉書は書いて字の通り、武具や魔道書を捧げる儀式のことですね」
 それに今、自分がやらないといけないのは固有戦術書の原型である儀式を説明する事だ。
「生涯の主とも言える王に……ね」
「……王ですか」
 その単語に、どこか浮かない表情を浮かべるヴィヴィオ嬢。
 まぁ、そこは仕方のない事だろう。彼女の出自が出自なのだから。
「現代の一般常識では、ベルカ式魔法の優れた術者を『騎士』と呼ばれてますが……」
 歴史書をめくると、そこには武具と杖を王の前に捧げる騎士と魔導師の挿絵が描き込まれていた。
 玉座に座る王の顔はまさしく、変身魔法を使ったヴィヴィオ嬢と瓜二つ。
「古代ベルカでは奉剣奉書の儀式を経た熟練者のみ、そう呼ばれる事を許されたそうです」
「何か、理由があったのですか?」
 どこか確認するような声音で尋ねてくる彼女。
 やはり遺伝子とかにそういった情報が組み込まれているのだろうか。
「……ええ。当時は自国の王を神の化身と崇め、儀式を経てその使徒となる信仰がベルカの各地にあったそうで」
 その典型的な例が、ベルカ式魔法の術者を多く有する聖王教会。
 高町ヴィヴィオ嬢の母体だとされる聖王を崇拝する大規模組織だ。
「王は天上の主から力を承った代理人にして、地上でその力と王権を振るう事を許された担い手という概念。それを……」
「亜神王権……」
 彼女がぽつりと呟いたその単語に、表情筋の収縮などは起きなかったものの驚嘆した。
 自分がひいきにして貰っている商売相手が秘蔵している歴史書から仕入れた情報を知っているとは。
 古代文明には血液に膨大な情報を入力する技術があったらしいが、彼女にもそれが施されたものが使われていたのだろうか。
「その『亜神王権』の概念に基づき、騎士は己が誇りを捧げ、魔導師は己が人生を奉ずる」
「……それが、奉剣奉書の儀式。ですか」
 言葉を噛み締める呟くヴィヴィオ嬢。その顔は少し青い。
 自分の出した情報の中に、血に込められた記憶か感覚を呼び起こすトリガーになったのかもしれない。
 もしそうだとしたら、彼女には悪い事をしてしまった。心の中でそう思いながら自分は静かに肯定する。
 さて、どうしようか。これからが固有戦術書の起源における核心の部分なのだが……このまま話すべきだろうか。
 内心では悩む自分に、ヴィヴィオ嬢が問いを投げてきた。
「でも、私のママ……お母さんが時空管理局で魔導師をしているのですが、そういう作業をしてる所を見たことも聞いたこともないのですが」
「部隊によっては、書かなくて良いところもありますから」
 陸戦部隊は独自の魔法を保有しない魔導師が多いから提出義務がないんですよ、と付け加える。
「きっとご母堂自身も知らないことでしょう」
「そうなんですか?」
 自分の言葉に納得する彼女。
 しかし自分はまだこの少女に言っていないことがある。
 実は戦技教導官や執務官などのエリート勢の固有戦術書の作成は専門機関がやっている事が多いのだ。
 諜報部などの戦力過多な部隊などは情報を握り、何かしらの対処をしなければならない。
 だから固有戦術書の提出を幾つかの部隊には義務付けているのだ。
 故意な提出拒否や虚偽の書類提出を行えば審問官を派遣し、正確な情報判明するまで部隊規模での無期限の任務禁止まで下すという徹底ようだ。
 だが全ての部隊にそれをすれば、本来の仕事に支障が出てしまう。
 例えば、管理局の戦力強化を行う戦技教導隊。
 本局が管理している異世界の治安を守る次元航行部隊。
 激務と名高いそれらにまで提出を義務付け、ちょっとした不備で任務禁止をすれば、ある意味で有効な手段を自ら封じるようなものだ。
 もしそれが原因で問題が発生し、深刻な事態が起きれば目も当てられない。
「ええ、だから本当にこれは特許みたいなものなんです」
 仮にそんな事が起きないように、管理局上層部にとって重要な部署にはそれぞれ密かに専用の専門機関が置かれている。
 そしてその機関の人間が本人の代わりに固有戦術書を書いている為、意外とエリート勢はその存在すら認知していなかったりするのだ。
 きっと彼女の母親である高町なのは女史が、固有戦術書を書いている姿をヴィヴィオ嬢が知らないのはそういう理由だろう。
「……さて」
 自分は取り出した懐中時計を開き、時刻を確認する。
 針で刻まれた時間が、約束した時間が近い事を示していた。そろそろ彼女と別れねばならない。
「そろそろ私はお暇いたしますね」
 机に広げた魔道書を積み上げ、持ち上げる自分。
 ちょっと欲張りすぎた。本がやや重い。
「あっ、はい。お仕事ですか?」
「いえ……」
 ちょっと取り繕った感じではあるが、笑顔を向けてくる彼女。
 自分はウィンクをするように片目を閉じて、わざと冗談めかした口振りで返答する。
「ちょっと、逢引に」

.
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管理局の部隊も一筋縄ではいかない時代ですねぇ。
まぁ、レシピの用途自体が持ちすぎた力の抑制にあたるのでしょうから妥当なんですけどね。
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相変わらずの霞、いや今はシャルさんか。と、正体ばれてヴィヴィオですね。
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Author:雪奈
「交換戯言日誌」を見に来て下さってありがとうございます。
終焉の引き金を引くのは貴方。
物語の続きを作るのもまた……
読んでいる貴方なのです。






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