Entries

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

-件のコメント

[C225]

そりゃそうだ。
訳の分からないところに一人放り出され、食べたことないものを振る舞われ、地名から自分が過去にいると推測したらはやてじゃなくても大体の人は動揺とある種の絶望感を持ってしまいかねない。
 みっちゃんやクレアのような温かい人達と言うのはそういう時には凄くうれしくも感じる…といった感じがよく伝わってきて、まだまだ謎や理由が多そうなはやてのこの冒険がより一層楽しみになりました。
頑張ってください応援しています
  • 2011-04-03
  • 投稿者 : ぷー
  • URL
  • 編集

コメントの投稿

新規
投稿した内容は管理者にだけ閲覧出来ます

-件のトラックバック

トラックバックURL
http://clowncraown.blog90.fc2.com/tb.php/169-89e4cd0e
この記事に対してトラックバックを送信する(FC2ブログユーザー)

魔法少女幻想戦記リリカルはやて KronoDriver03

日曜日に一度更新しましたが、内容に満足の行かない作者が書き直しをしました。
ずいぶんと遅くなり、お待たせして申し訳ありませんでした。
では、これを書くきっかけや参考なった素晴らしい方々に改めて感謝しつつ、話を始めたいと思います。

魔法少女幻想戦記リリカルはやて KronoDriver03 『おいでませ、新世界』
 †

 涼やかな風が吹き、枝葉が揺れる音が聞こえた。
 通り抜けたそれが頬を撫で、光が顔に当たる。
 余りの眩しさに、瞼越しであるにもかかわらず、彼女の目は痛みを訴えた。
「うっ……」
 刺すような痛みに、強く目を閉じて呻くはやて。
「気がつきましたか?」
 声が聞こえた。誰かが側にいる。はやては慌てて起き上がろうとする。
 しかし、その動作は声の主によってそっと押し留めた。
 そしてはやての瞼にそっと手が当てられる。
 その手は程良く冷たくて、スーッと清涼感のある良い匂いがした。
 恐る恐る瞼を開けるはやて。手の平で遮られ、暗いものの隙間から微かに光が漏れていた。
 次第にそのぼんやりとした光に目が慣れていく。
 気遣うように手がゆっくりと取り払われ、はやては目の前に広がるものを見る。
 痛みは薄れたが、まだ視覚がぼやけていた。
 はやての視界に見えているのは、緑色のぼやけたもの。
 それが葉っぱの色だとはやてが気付いたのはもう少し経ってからのこと。
 新緑の隙間から見えるのは空の青色とまぶしく輝く太陽。
 久々に空なんて見上げたなぁ、とはやては思った。
 暢気にそんな事を考えている彼女に声が掛けられる。
「大丈夫ですか?」
 それは鈴の音を思わせるくらい澄んだ声だった。
 軽く頭を上げるはやて。そのまま視線を声のする方へと向ける。
 はやての顔をのぞき込むように見ていたのは、金髪の少女だった。
 絹のように柔らかそうな髪。まるで溶かした金を髪にしたかのようだった。
 紫水晶のような瞳はきらきらと輝き、その奥底には安堵の色が見えた。
 膝枕されているのだろう。後頭部に柔らかくて暖かい太ももの感触がする。それがどこか心地良くて、気持ち良い。
 彼女から漂う慎ましやかで上品な雰囲気。何から何まで淑女然とした女性を、はやては一人しか知らなかった。
「……カリム……?」
 はやては擦れたか細い声で小さく呟く。
 わざわざ考えずとも、その名が自然と口についた。
 カリム・グラシア。聖王教会に所属する騎士にして、はやてにとっては姉のような存在。
 何故、彼女がこんなところにいるのだろうか。
 記憶が正しければ、その身に宿している特異能力資質レアスキルゆえに教会から出ることはほとんどないはずだ。
 それに目の前にいる彼女は、はやての記憶の中にある彼女よりどこか若々しくに見えた。
 いぶかしむ彼女の視線に気づいていないのか、金髪の少女は無邪気で可愛らしい笑顔を見せる。
「大丈夫そうで良かったです」
 下からその笑顔を見上げていたはやては、かあっと顔が熱くなるのを感じた。
 自分の知る彼女が、まさかこんな子供のような笑みが出来るとは思ってもみなかったからだ。
 はやてはその表情につい見蕩れてしまう。少女はじっと見つめて来る彼女にきょとんとしつつも、不思議そうに首を傾げる。
 その時、
「お~い、嬢ちゃん起きたか?」
 ガサガサと草むらを踏み分けて一人の青年が現れる。
 年齢は二十代ぐらいだろうか。口の右端にはキセルらしき、長細い管を銜えていた。
 羽織っているのはどこか学生服を髣髴とさせるようなデザインの黒いコート。
 はやてを膝枕していた少女が青年の名を呼んだ。
「あっ……ミドガルズさん」
「いい加減、みっちゃんと呼べよ……おい」
 ため息をついた彼は肩を落としてうなだれる。
 それと一緒に、コートにつけられていた金属のアクセサリーが揺れた。
 ゆっくりと顔を起こした青年は、状況が掴めていないはやてを見た。
 そして子供を思わせるような明るい笑みを浮かべる。
「山道のど真ん中でぶっ倒れてたが、大丈夫のようだな」
 彼はそう言うと、はやてに手を差し出した。
「ええ、ありがとうございます……」
 出された手をぐっと掴むはやて。引き上げて貰おうと力んだ瞬間、彼女のお腹が鳴った。
 一瞬だけ凍りつく空気。はやての顔が見る見るうちに赤く染まる。
 ミドガルズと呼ばれた青年が盛大に笑い出し、彼女もつられるようにクスクスと笑い出す。
 ひとしきり笑った彼は、にやりと歯を見せて笑いながら言った。
「とりあえず、メシだな」
「……はい」
 はやては真っ赤になった顔を隠しながら頷く。初対面の人の前で醜態を晒した恥ずかしさで、相手の顔がちゃんと見れなかった。
 引き上げられたはやては、自身の身体に怪我や不調がないか触診する。
 気分も悪くないし、身体を曲げ伸ばししても痛い所はない。空腹であること以外は問題ないようだ。
「ミドガルズさん……すみません。私もお願いします」
 さっきまではやてを膝枕していた彼女が正座した状態のまま、目にうっすらと涙を浮かべている。
 どうやら、はやての為に膝枕をしている間に足が痺れてしまったようだ。
 カリムにちょっと無理させてしまったなぁ、とはやては申し訳なさを覚えた。
 ミドガルズは口端をより歪め、
「おいおい、お前が優しいのは分かるけどさ。無理してんじゃねぇよ……クレア」
「はは、申し訳ありません」
 彼は悪戯っぽく笑いながらも声には心配するような響きをにじませて、彼女の身体を引き上げる。
 クレア、とミドガルズに呼ばれた少女は痺れている足をプルプルと震わせながら立った。
 ミドガルズの口から飛び出した名前に、はやては顔を強張らせる。
 驚きと共に、彼女は己の耳を疑わずにはいられなかった。
 確かに今、彼は目の前の彼女をカリムではなくクレアと呼んだ。
 その事実が示すことはただ一つ。
 つい先ほどまではやてがカリムだと思っていた女性が赤の他人だと言うこと。
 はやては一瞬にして、足元が崩れ去るのを感じた。
 状況が把握できず、意味が分からない状態で、彼女がまだ平常心を保っていられたのは――
 ひとえに、カリムによく似た女性がここにいて、彼女をカリムだと思っていたからである。
 それが崩れた今、はやては何が何なのかよく分からず、何を信じればいいのか分からなくなっていた。
 はやての目の前が真っ暗になる。ふっ、と彼女の身体から力が抜ける。
 倒れる先に待っているのは、硬い地面。衝突すればそれなりの痛みが伴うことだろう。
 それでも良いかなと、はやては思った。少なからず自暴自棄になっているのは分かっている。
 しかしそうでなければ、己の自我を保てる自信がなかったのだ。見間違えた恥ずかしさは確かにあった。
 だが、それ以上に右も左も分からない所に一人いる恐怖があったのである。
 今は痛みでも何でも良いから、壊れそうな心を和らげるものが欲しかった。
「うおっ……とぉ。大丈夫か? 嬢ちゃん」
 右手でクレアを引き上げていたミドガルズに左腕で抱き留められる。
 外見は細身であるが、割と鍛えているのだろう。彼女の身体を支える腕はがっしりとしていた。
「あ、すみません……」
 恥ずかしさがこみ上げ、顔に血が集まるのを感じて離れようとするはやて。
 しかし、何故か身体が離れようとしなかった。
「あ、あれ? なんでや?」
 言うことの聞かない自分の身体に、はやては目を白黒させる。
 彼女のそんな姿をミドガルズはキセルの煙を揺らしながら何も言わず見ていた。
 そしてクレアがちゃんと立ったのを認めるとそのまま、
「ふぇ……?」
 ミドガルズは空いた右腕を彼女の後頭部に回した。
 そのせいで、はやては彼の胸板に顔を押し付けるような感じになってしまう。
 男性に抱きしめられている。そう思った瞬間、はやては顔だけではなく身体が熱くなるのを感じた。
「気にすんな」
 小柄なはやてをすっぽりと抱くような形になった彼は、そう言って背中を軽く叩き始めた。
 それはまるで情緒不安定な子供をあやし、落ち着かせるような感じであった。
 みっともない事ばかりして、今は見知らぬ異性に慰められている。
 醜態を晒してばかりで恥ずかしかったが、はやては抱いてくれる相手に妙な安心感を感じた。
「ん~。まぁ……」
 クレアの生暖かい視線を感じつつ、ミドガルズは腕の中にいる相手を諭すように言った。
「時には、こんな時もあんだろ」
 まだ少しドキドキしているが、はやての心はさっきより落ち着いていた。
 誰かにこうして貰った経験がない彼女にとって、それは驚くべきことだった。
 彼女が落ち着いたのは分かったのだろう。腕を解き、ミドガルズはゆっくりと離れる。
「ありがとうございます。えっと……」
「みっちゃんだ」
 笑みを浮かべつつも強調するように言うミドガルズ。
 あくまで彼は、名前ではなく「みっちゃん」と呼んで欲しいらしい。
「とりあえず、メシでも食おうぜ。話はそれからだ」
 頭についている草や土を払う為だろう。彼はケラケラと笑い声を上げて彼女の小さな頭を撫でる。
 少し乱暴であったが、それでもどこか相手を安心させようとする気遣いがあった。
 そんな経験のないはやてには、それがとてもくすぐったかった。
「ミドガルズさぁ~ん……」
「はいはい。クレアはおっちょこちょいだなぁ」
 クレアが地面に尻を突いて困ったような声で助けを呼ぶ。どうやら足に痺れが残っていて、立ってられなかったようだ。
 目に涙を浮かべている彼女をミドガルズは苦笑しながらも再び片腕で軽く引き上げる。
 そして彼は右手でクレアの手を握ったまま、はやての方に左手を差し出した。
「ほれ、手」
「え?」
 彼の行動の意図が分からないはやては首を傾げる。
 口に銜えていたキセルを無造作にシャツの胸ポケットに突っ込んだミドガルズは真顔で言った。
「はぐれて迷ったら困るだろ? それに……」
 いきなりはやての右手を取ると、彼は指を絡めた。
「一人が寂しい時は手をつなぐのが良いもんだ」
 そう言ってミドガルズはいたずらっぽくウィンクすると、そのまま二人の手を引いて歩き出す。
 しかし、はやての意識はそれどころじゃなかった。
 手のひら同士を合わせ、指の間に指を絡ませて握るつなぎ方。それはまさしく、「恋人つなぎ」と呼ばれるそれに他ならない。
 さっきから異性に抱きしめられたり、頭を撫でられたりなどしている。そして今は恋人同士でするようなつなぎ方をさせられている。
 目覚めてから初体験だらけな意味の分からない状況に、彼女の思考はショート寸前だった。
「はっはっはっ……両手に花だぜ」
「本当に、ミドガルズさんは手をつなぐのが好きですね」
 彼の突発的な奇行に慣れているのだろう。クレアは楽しそうに鼻歌を歌いながら歩くミドガルズを見て微笑む。
 はやての方は恋人つなぎの衝撃から抜け出せないのか、振り回すように腕を振られているにもかかわらずなされるがままだ。
 慈母のように優しく笑う彼女に、彼はまるで無邪気な子供のように笑って答えた。
「本当に些細なことだけど、誰かのぬくもりを感じられるのって大切なんだぞ」
「……?」
 それにはクレアだけでなく、我に返ったはやても意味が分からず首を傾げた。
「誰かがそばにいる。それは何気ない普通のことかもしれねぇ」
 ミドガルズは前を戻すと、顔と視線をわずかに上へ向ける。
 その先には空があり、つがいらしき二匹の鳥がちょうど木から飛び立った。
「でもな、それは当たり前だけど、ぜってぇ無くしちゃいけねぇとても特別なもんだ」
 彼が一体、何を見ているのかは分からない。それでも、その言葉は自然とはやての心に入り込んできた。
 やはりその言葉の意味はよく分からないが、胸の奥が温かくなるものがあった。
 それと一緒に、さっきから感じていた羞恥心がいつの間にかなくなっていた。
 残っているのは、彼のごつごつとした手の平の感触とそこから伝わるぬくもり。そして妙な心地よさだった。
「ふふっ……ミドガルズさんは時々、不思議なことを言いますね」
「だから、俺のことは、みっちゃんって呼べって」
 クスクスと笑うクレアに、ミドガルズは疲れたような声を出す。
 時間にして十分ぐらい道なき道を歩くと、突然ひらけた所に出る。
 野営でもしていたのだろうか。積まれた薪の上で火がパチパチと燃えている。
 そして焚き火のそばでは、男装をした金髪の少女が何か作業をしていた。
「お疲れ」
 両手を塞がれている彼はその少女に軽く声をかける。
 それに気づいた彼女は身体を起こし、手をつないでいる三人を見た。
 髪はセミロングで、その色はクレアのものと比べると少し暗めに感じられた。
 彼女の中で特に印象的なのは、顔の左半分を覆い隠している眼帯だった。
 はやての知る医療用のものと違い、少女のしているそれは革と金属で作られた実用的なものであった。
 女の子が使うものにしてはやけに仰々しくて無骨だが、彼女の男装とあいまってどこか似合って見えた。
「約束どおり、取って置いたわ」
 ミドガルズたちの存在を認めた少女は手元にあった物を投げて寄越す。
 投げられたそれを片手でキャッチしたはやては、手の中にある物に仰天する。
「っ……うわぁぁぁっ!」
 驚きの余り、はやては左手にあった毛むくじゃらのそれを地面に取りこぼす。
 音を立てて地面に落ちたそれは種類は分からずとも、確かにそれは動物の足だった。
 血抜きはしているようだが、それでも切り取られたその足には生前の温かみがまだ残っていた。
「何騒いでるのよ……ただのウサギの足じゃない」
「で……でもなぁ……」
 つないでいた右手を振り解いて慌てふためく彼女の姿を眺めて嘆息しつつも、金髪の少女は手元にあったウサギの毛皮を剥いでいく。
 ミドガルズといえば、ビビっているはやての姿を見て豪快に笑っている。
「私でも、いきなり投げられたら驚きますよ……? それ……」
 ウサギの足を投げた彼女にドン引きしているのだろう。クレアの左手は隣で今も手をつないでいる彼の手をぎゅっと握り締め、右手はそのコートを強く掴んでいた。
 ひとしきり笑った彼はしゃがみこんで、はやてが地面に落としたウサギの足を拾う。手の上でそれをもてあそびながら彼は言った。
「まぁ、とりあえずメシでも作るか」

 †

「ミドガルズ・カヘクスヴェリアだ。とりあえず、みっちゃんと呼べ」
 食後の一服にシャツの胸ポケットから抜いたキセルを吸いながら、ミドガルズはそう名乗った。
「クレメンティア・グラシア・スヴェントヴィトです。クレア、って呼んでくださいね」
 優しげな笑みを浮かべてそう言ったクレアは残った骨を地面に埋め、その上に土をかけ始める。
 瓜二つの外見といい、グラシアというファミリーネームといい、彼女はカリムと何かしらの関係があるのかもしれない。
 しかし、グラシアの後に続いたスヴェントヴィトという名に、はやては聞き覚えがなかった。
「……ヴィオレッタ。ヴィオレッタ・ヴィクトリカ」
 眼帯の彼女は少し間を取ってからぶっきらぼうにそう言って脂の付いた手を視線を落とす。
 そして布で自身の手を無言で拭き始める。陽気なミドガルズや礼儀正しいクレアと違って、彼女はどこかはやてを拒絶している雰囲気があった。
「いっちょまえに人見知りかよ……ヴィヴィ」
「……うるさい」
 キセルを吹かしつつミドガルズは髪が滅茶苦茶になるくらい力強く、隣にいる彼女の頭を撫で回す。
 ケラケラと笑う彼の姿に、ヴィヴィは苛立ちを混じりの声を出して威嚇するように睨みつけた。
 ミドガルズにしてみれば、年下の可愛い女の子に睨まれても怖くないのだろう。それでも彼は笑みを絶やず楽しそうだった。
「で、嬢ちゃんはなんていうんだ?」
 急に話題を振られて驚くはやてであったが、それでも落ち着いて自己紹介をする。
「私の名前は、はやて。八神はやてや」
「不思議な名前ですね」
 そう言ったのは、ウサギの骨を埋めた所の前で十字を切っていたクレアだった。
 確かにこの人たちから見ればおかしいやろうなぁ、とはやては心の中でそう考える。
「私の住んでいた所では、これが割と普通やったんけどな」
 ミドガルズたちは名前に当たるファーストネームが最初に来て、その後にミドルネームなりファミリーネームなりが来る。
 しかし、はやてのいた国では苗字に当たるファミリーネームの後に、ファーストネームが来ている。
 そういうものは国や民族、あるいは文化的側面によって大きく変化するものだ。
 名前の文化的観点から鑑みるに、ここはミッドチルダかベルカ――もしくは、はやての世界で言う西洋文化の世界と考えて良いだろう。
 更に突き詰める為に、はやては比較的話が通じやすそうなミドガルズに声をかける。
「えっと、ミドガルズさ……」
「俺のことは、みっちゃんと呼べ」
 そう言って、満面の笑みを浮かべるミドガルズ。
 流石のはやても初対面の人、それも年上らしき異性を馴れ馴れしく呼ぶのは抵抗があった。
 クレメンティアを「クレア」と呼ぶのは略称だからまだ呼びやすい。
 だが彼の希望する「みっちゃん」という呼び方は明らかにあだ名の部類だ。それにいささか子供っぽい。
「ミド……」
「みっちゃんだ」
 相手がちゃんと呼ぶまで繰り返すつもりなのだろう。ミドガルズは顔の笑みを全く崩さない。
 ここまで来ると、どっちかが折れなければ話は進まないことだろう。
「……みっちゃん」
 先に諦めて折れたのは、はやての方だった。
 その希望に従い、彼女はミドガルズをあだ名らしき名前で呼ぶ。
「何だ?」
 要望が叶い、ミドガルスはニヤリといたずらっぽく笑った。
 大人気ないと思わずにはいられなかったが、話の邪魔になると判断。
 はやては彼をじっと見ながら静かな声で話を切り出す。
「ここはどこなんや?」
 やはり質問としておかしいものだったのだろう。
 彼女の問いに対し、近くにいたクレアは首を傾げる。
 ヴィヴィは表情こそ変えないが、それでも怪訝そうな視線をはやてに向けている。
 しかしミドガルズだけは不思議そうな顔をせず、真顔であっさりと答えた。
「ベルカ地方だな」
 まだ少し半信半疑だが、はやては自身がどういう状況にいるか納得出来た。
 ベルカ地方。頭の記憶が正しければ、それは聖王家が成立する前に使われていた呼び名。
 はやてなどが使うベルカ式の名前の由来は発祥の地がベルカ地方であったからだといわれている。
 何故ならばこのベルカ地方が特に民族間戦争や内部紛争が激しく、その中で殺傷能力特化の魔道言語術式が育まれて来たからだ。
 初代聖王が世界統一を果たした際にそれらの言語術式もある程度は統一され、それが最終的に「ベルカ式」と呼ばれるようになったらしい。
 聖王教会に所属するカリムや古代ベルカについて調べているルーテシアが言っていたのだから、その情報は信用できるものだろう。
 確かに、ミドガルズは今いる場所を「ベルカ地方」と呼んだ。ならば、今いる時代などもある程度までは推測可能だ。
 とんでもない場所に来てしまったと、はやてはそれを声に出さずとも心の中ではそう考えていた。
 原因は分からないものの――自分は今、聖王家誕生前のベルカに来てしまっているのだから。


スポンサーサイト

1件のコメント

[C225]

そりゃそうだ。
訳の分からないところに一人放り出され、食べたことないものを振る舞われ、地名から自分が過去にいると推測したらはやてじゃなくても大体の人は動揺とある種の絶望感を持ってしまいかねない。
 みっちゃんやクレアのような温かい人達と言うのはそういう時には凄くうれしくも感じる…といった感じがよく伝わってきて、まだまだ謎や理由が多そうなはやてのこの冒険がより一層楽しみになりました。
頑張ってください応援しています
  • 2011-04-03
  • 投稿者 : ぷー
  • URL
  • 編集

コメントの投稿

新規
投稿した内容は管理者にだけ閲覧出来ます

0件のトラックバック

トラックバックURL
http://clowncraown.blog90.fc2.com/tb.php/169-89e4cd0e
この記事に対してトラックバックを送信する(FC2ブログユーザー)

Appendix

プロフィール

雪奈

Author:雪奈
「交換戯言日誌」を見に来て下さってありがとうございます。
終焉の引き金を引くのは貴方。
物語の続きを作るのもまた……
読んでいる貴方なのです。






無料アクセス解析

最近の記事

FC2カウンター

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

ブログ内検索

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。