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魔法少女幻想戦記リリカルはやて Krono Driver01

少し前のオフ会で、話をしていたらいつの間にか思いつきました。
深く意味はありません。でも、やったら楽しいと思った。急に書きたくなった。
理由にしてみればそんな感じです。
「リリなの」言いつつ、主人公は八神はやてだけどね☆(爆)
だけど、この物語は八神はやてでないとなりたたないと私個人は思っています。
かなり個人的な意見を述べれば、
なのフェイのどっちかが主人公なら、『魔法少女リリカルなのは』成り立つと思う人……
……帰れとか言ったりします。
そのくらい、この回の主人公は八神はやてでないといけないとか思ってます。
ちなみに、八神はやて以外はオリキャラです。
オリキャラ至上主義とまではいきませんが……既存キャラだと書けないし、それはそれでつまらないと思う。
ねこじゃらし』の風切羽様とは別のベクトルで、別の可能性を模索しまくってます。
作って早々ですが、スペシャルサンクスを与えたい方々はいます。
秋のゆき』のRAG様
▽逆三角形』のカズ様
20twenty』のマッチ様
水面に映る夜天の月』の水鏡華月様
この方々の漫画や絵があるからこそ、こんな物語が生まれたのかもしれません。
まぁ、前口上は置いといて始めます。


System:魔法少女幻想戦記リリカルはやて Krono Driverの第一部第壱話を開始します


 そこはまさしく鉄火場で、生と死が入り混じり合った戦場だった。
 火薬の焼ける臭いもしたし、人の肉が焼ける嫌な匂いも勿論した。
 獣のように高々と吠える声に、耳を塞ぎたくなるくらいの断末魔。
 所々で火の手が上がっているからか漂ってくる空気も妙に熱い。
 魔導師も実戦投入されているのか、魔力光が色んな所で瞬いている。
 花火の如くきらびやかに輝くそれはまるで、命が燃えゆく様子を思わせた。
 殺された者はそこに身体を投げ出し、まだ生きている者は威嚇するように大声を上げながら切り結んでいく。
 命を奪い奪われるその光景は人の心を麻痺させ、狂気の領域へ引きずり込むには十分過ぎるのであった。
 人々は何かしらの狂気に取り憑かれ、それに任せて踊り狂い、己に襲いかかる存在に牙を剥く。
 既に血や泥に塗れた時点で人の精神は破綻しかけ、むせ返るくらい濃厚な死の匂いが充満していた。
 そんな目を背けたくなるような場所を、遠くにある丘から眺める者がいた。
 それは膝裏まである長いロングコートを風にはためかせ、口の端にキセルを銜えた青年だった。
 何故か頭には狸の立体的なお面を頭につけ、青みがかった彼の片目には魔法陣が浮かび上がっている。
「うわぁ……すっげぇ血なまぐせぇ」
 彼はそう呟くと口にあった物を離し、どこか呆れるような声を漏らして渋い顔をする。
 黒いコートの懐に右手を突っ込み、そこから鎖の付いたものを引っ張り出す。
 それは表面に傷がたくさんついた懐中時計だった。端についたスイッチを押し、蓋を開いて円盤が示すものを一瞥した彼はぼやくように呟いた。
「もうおっぱじめてやがる」
 そう言いながらも口元に楽しそうな笑みを浮かべ、まるで今から悪戯を始めようとする悪餓鬼のような雰囲気が漂っていた。
 左手で弄んでいる管の長いそれからは赤い煙が上がっていた。
 火皿から上がるその色はまるであの戦場で流された血を彷彿とさせた。
 どうやら何かしらの方法で己の視力を強化し、丘の向こうで開始された戦場の様子を見ているらしい。
 そんな彼の気分に水を差すように、
「別に良いわ。例え人が何人死のうと……私には関係ない事だから」
 と、どこか気だるそうに言ったのは左目に革の眼帯をした金髪碧眼の少女だった。
 年齢は十代後半いったところだろうか。それなりに膨らみのある胸がその身に纏っている男性用のカソックを押し上げている。
 セミロングの髪型からは活発そうな感じがするが、その目はどこか気だるそうな印象があった。
 本当にどうでも良いのか、戦闘が起きている地上ではなく空の方を眺めている。
「ヴィヴィ、そんな事を言っちゃ駄目ですよ」
「……クレア」
 そう言って眼帯の彼女を笑顔でたしなめたのは青年の近くで戦況を見守っていた金髪の少女だった。
 外見は眼帯を付けている彼女より少し上くらいで、髪を青いリボンで一つにまとめている。腰の辺りまである長いその髪はまるで金で作られた糸のように美しい。
 女性用である為にどこか意匠が違う感じはするが、彼女が着ているのも確かにヴィヴィと同じ露出度の少ない修道服。
 クレアの浮かべている表情はどこか温かみがあり、まるで太陽のような感じがした。
 彼女の目は可愛い妹を見る姉のそれであったが、その仕草はどこか我が子を叱る母親のようでもあった。
 声音は柔らかいものだったが、怒られたのが癪だったのだろう。そっぽを向くヴィヴィ。
 今から三人が行おうとしていることを考えれば、それは暢気にも程があるやり取りであった。
 実際に彼もそう思っているのか、二人の少女を見ながらクククと笑っている。
「てめぇら、姉妹で喧嘩してんじゃねぇよ」
 茶化すようなその一言によって怒りの矛先を変えた二人は、むっとした顔で彼をじっとにらむ。
 美少女である二人に睨まれても可愛らしいと思っても、恐怖を感じたりはしないのだろう。
 陽気に笑いながら青年はキセルを銜え直し、ヴィヴィとクレアに指示を出す。
「二人は仲良く左側をやれ。俺はこの子連れて、右側制圧してくっから」
 そう言って彼はむこうで行われている殺し合いに、顔を強張らせている茶髪の女性の方を見る。
 青を基調とした女性用スーツの上に小麦色のコートを羽織り、髪はクレアほどではないが長さは肩甲骨まで届くほどであった。
 青年は吸い口を歯で挟みながら悪戯っぽく笑い、魔法陣が浮かんでいた片目を閉じて女性に訊ねた。
「鉄火場に突っ込む覚悟は固まったか? 麗しのお嬢様(フロイライン?)」
 既にクレアとヴィヴィは己の持つデバイスを展開し、その手に得物を手にしていた。
 剣を携えたクレアは女性に向けられた問いに対して柔らかく笑い、
 ヴィヴィは、肯定するが如く両拳につけた手甲を打ち合わせる。
 己の知らない所で進んでいく状況。
 まるで遊びに行くが如く楽しそうな三人。
 ただ一人、武装していない茶髪の女性――八神はやては思った。
 何故、自分はこんな所でこんなことに巻き込まれているのだろうか……と。

 †

 ジェイル・スカリエッティは何の脈絡もなく言った。
「君は次元海豚を知っているかね? 八神はやて」
 それは彼女が改良された『夜天の書』を取りに来た時の事だ。
 魔力反応紙に魔法を記憶させる為の加工をしながら彼はそんな質問を投げかけてきたのである。
 彼にしては珍しく自身で提示した予定時刻を超えたから、興味を持ちそうな話題でそれを誤魔化す気なのだろうか。
 そんな事を考えつつ、はやては彼の秘書であるウーノが淹れた紅茶を口に含む。
 音を立てないようにゆっくりとカップを左手のソーサーに下ろした彼女は少し突き放すような口調で答えた。
「知らん。フェイトちゃんなら知ってんと違う?」
 次元鯨という生物については彼女もよく知っている。
 しかし次元海豚と呼ばれる生き物の存在は初耳であった。
 その鯨は【竜王】などの稀少価値の高い資質を持っていなければ使役出来ないとまで言われている誇り高い次元海洋生物だ。
 大きさは既存の大型次元航行艦など、その鯨と比べればありか豆粒に見えてしまうくらいだ。
 次元航行部隊は己の職場を「うみ」と称し、次元鯨なる生き物も実際にいるのだ。よくよく考えてみれば次元海豚というのがいるのも当たり前だろう。
「それはそうだろう。私でも、あの海豚を実際に見たのはたった一回だけで、それもほんの一瞬なのだからな」
 知らないと返した彼女に対し、すごく満足そうな笑みを浮かべるスカリエッティ。
 優越感に浸っているような顔をする相手に、はやては軽く怒りを覚えた。
 わざわざ時間を空け、彼の依頼もきちんと果たしてきたのに、そんな仕打ちを受けるとは思いもしなかったからである。
 しかし彼女は胸にあるその苛立ちを抑え込む。ここで怒れば、相手を喜ばせるだ。
 それでも薄気味悪い笑みを浮かべている彼の顔に魔法が叩き込めるようにしつつ問いをぶつけた。
「その海豚と、持ってきた本にどんな関係があるんや?」
「まぁ、落ち着いて聞きたまえ」
 流石に魔法を研究室の中で使われるのは仕事の都合上で困るのだろう。いつもは自己中心的な部分が目立つ彼にしては珍しく相手を押さえるような身振り手振りをする。
 今回の改良を彼にただでやって貰う事と引き換えに、はやてはとある依頼を受けていた。
 それは彼の紛失した研究資料を取り戻す事である。
 知識や技術力に関しては次元犯罪者にもかかわらず彼を雇った開発部でもトップクラスなのは言うまでもない。しかし彼には研究と関係ない事に対しては無頓着というか朴念仁な所があった。
 現にスカリエッティの心を射止めたウーノも、恋心に気付いて貰えるまではよくやきもきしていたという話だ。
 研究に関しても結果が出れば興味がなくなるのか、時には研究内容を横取りされたり研究資料を盗まれたりしている。
 別にスカリエッティ専属の秘書であるウーノの管理能力がずさんという訳ではない。
 他人からしてみれば重要すぎる資料などを、彼が適当な所に置いたままにしている事が多いからである。
 微妙に片付け出来ない所が子供っぽくて可愛いとウーノは苦笑いしつつも惚気ていた事をふと思い出すはやて。
 仲が良いのは良いが、迷惑をかけるのは勘弁して欲しいと彼女は小さくため息をつく。
 はやてが個人的に親交のある無限書庫の非常勤司書であるヴィヴィオがそれら関連の事件に巻き込まれるのは多いが、被害をこうむるのは彼女だけではない。
 時には情報が流失して彼が設計したデバイスの図案が密売の手に渡り、知らないうちにそれを犯罪に使われた事もあった。
 そんな事がたびたびある為、盗難にあった彼の研究資料を探す時は色んな部隊が狩り出されるのが日常茶飯事の事になっている始末。
 陸士部隊や捜査課、果てには管理局内でも悪名高い諜報部隊までもが彼の資料やその研究結果の流失には頭を悩ませていた。
 今回は『時空航行流離理論』という、名前からして次元犯罪の火種になりそうなものが産業スパイか彼を妬んだ研究者に盗難されていた。
 資料の回収にはエリオとヴィヴィオにも協力して貰ったが、後で命と貞操の危機だったと文句を言われたのである。
「次元海豚とその意味の通り、次元の海に住む……いや、次元の海でしか存在する事の出来ない海豚の事だ」
 そう言ってスカリエッティは専属の秘書であるウーノが整理したファイルを本棚から抜き、そこに視線を落とす。
 空間にディスプレイとキーボードを展開し、資料を眺めながら片手でキーを叩く。
「君は知らないと思うが、次元航行艦の元は偶然にも迷い込んだ次元海豚の死骸などで作られていたとも言われるそうだ」
 スカリエッティにプログラムが入力されるのと連動して机にあった魔力反応紙が宙に浮かび、何も書かれていない所に魔力が帯びていく。
 はやては彼の製作工程をぼんやりと眺めつつ、彼が何を言いたいのか考え始める。
 昔の次元航行艦の材料。その単語から考えられる能力は一つしかなかった。
 これはあくまで予測でしかないが、導き出された次元海豚の能力がそれならば、スカリエッティすら一瞬しか見た事がないというのも納得できる。
「……次元航行。もしくは、次元跳躍能力を持った生物が、あんたの言う次元海豚という事か?」
 ウーノにページをめくって貰っていた書類から顔を上げるスカリエッティ。
「ご明察だ。次元航行艦がある今でも、次元海豚の生態は分かっていないし、研究は進められている」
 彼にしては珍しく満面の笑みを浮かべてその予想を肯定。そして紙にまとめた資料をウーノにめくって貰いつつ、キーボードを操作し始めた。
 自動書記式の魔導書が作られる工程とはこんなものなのかと思いつつ、はやてはすっかりぬるくなった紅茶を啜りながら物思いにふける。
 タイプされる音に合わせて宙に浮かんだ魔力反応紙に文字が刻まれてはすっと消えていく様はまるで魔法使いの存在を知らぬ子供の思い描く魔法に相応しい物であった。
 スカリエッティやウーノが使っているキーボードがピアノの鍵盤みたいなタイプであるだけに、姿だけを見れば彼の奏でる音で紙が踊っているようにも見えた。
 それで彼女が思い出したのが、幼少の頃に見たちょっとした映画の事だ。
 老いた魔法使いに水汲みの雑用を任された若い見習いが調子に乗って失敗し、己の無力さを嫌というほど知らされる。
 何も知らない頃は何気ない気持ちで見ていられたが、今思い返すと身をつまされるような思いをはやては感じずにはいられなかった。
 雑用を任せられた弟子に、はやては己自身や作業をしているスカリエッティを投影してしまうのである。
 『世界』に勝負を挑むかのような事を目標とし、血と泥にまみれながらも道化を興じる。
 何にも心を奪われず、痛めず、誰とも心を通わせなどしない。
 絶望と隣り合わせであろうとも苦しむ事も悩む事もなく強くあるように見せる。
 あらゆる絶望を貪り、悲しみを飲み干し、己を慕ってくれる部下たちと愛しき戦友たちの命を背負い、この残酷で醜くも美しい世界へと勝負を挑む。
 そして『世界』に裏切られ、悪意という名の濁流に飲み込まれ、下手すれば命を落とすかもしれない。
 遥か遠き美しい青の空に憧れ、蝋で作った翼と共にその身を太陽に焼かれて死んだイカロスのように。
 はたまた、魔法を止める呪文を知らないのに調子に乗って魔法を使い、自分には力がないという現実を見せつけられて絶望した魔法使いの弟子のように。
 現に、はやての目の前には生命操作技術の完成、その為の空間作りという夢を叶える為に『世界』に喧嘩を売って敗北したジェイル・スカリエッティがいる。
 だからこそ、魔法使いの弟子だけでなくスカリエッティにさえも己を投影し、自分はこのまま進んで大丈夫なのか考えてしまうのである。
「……お代わりをどうぞ。はやてさん」
 そう言って紅茶を注いだカップをはやての前に置くウーノ。
 彼と共に作業をしていた彼女がいつの間にかお茶を淹れて事にはやては内心、驚かずにはいられなかった。
 周囲に気を配ることを忘れるくらい物思いにふけっていた己を恥ずかしく思いながら彼女は入れて貰ったお茶を飲む。
 紅茶にしては清涼感のある味に少し驚きを感じたが、どこか心が落ち着く温かい味だった。
「ハーブティーです。最近、興味を持つようになったので」
 少し驚いているはやての顔を見て、ウーノは柔らかい微笑みを浮かべる。
 その表情はまるで可愛い我が子を持つ母親のようなものを感じさせた。
 いや、それは当然だろう。ウーノもあと数ヶ月経てば、本当の母親になるのだから。
 まだお腹の方は目立っていないが、身体の中には既に新たなる命が宿っているらしい。つわりが始まる前に挙式予定らしいが、やる事はやっていた事ということだ。
 シャマルの話によると、ハーブティーは働きが穏やかでカフェインを含まないことから妊産婦にも向いているらしい。
 彼女いわく、時には医務局で出産関係も扱う場合があるらしい。
 妊娠中は何かとブルーになったりすることもあるので、リラックス効果の高いハーブを上手に活用すると良い。
 しかし通経作用などがあるものもあり、妊娠中は避けた方が良い物。成分の強い為に長期間に渡って飲まない方がいい物もあるという話だ。
 ハーブによっては、妊娠初期は飲んではいけないけれど、後期には大丈夫だったり、出産を助ける効果があるのもある。
 まぁ、ウーノの事だから効用を知っててハーブティーを作っているだろうと考えてはやてはそれを口に含んだ。
「成功例とは言えない代物だが、次元海豚の細胞を人間に移植する人体実験によって、次元海豚の能力を得たというレポートも私は知っている」
 はやてが呆けている間もスカリエッティは一人延々と語っていたのだろう。いつの間にか次元海豚の話から、それを使った実験へと話が移っていた。
 カップをソーサーにそっと下ろした彼女はどこか邪なものを感じる笑みを浮かべて反応を返す。
「あんたが間接的に失敗と言うんや。続きがあるんやろ?」
「ああ。その能力を得た検体は……実験途中で行方不明になった。すぐに発見されたが、そこは驚くべき場所だった」
 いつもは道化ぶっている彼にしては珍しい真剣な表情に、もしかして何かあるのではないかと彼女の顔も引き締まる。
 妻であるウーノにとってもそんな夫の顔を見るのは初めてなのだろう。作業の手を止め、はやての後ろで付き従うように立った彼女はスカリエッティをじっと見つめている。
「そこは?」
「……過去だ。十年も前に残された資料に載っていた」
 そう言った彼の口ぶりはどこか明日の天気を答えるような軽さがあった。しかしその内容は目の前にいるはやてを絶句させるには十分過ぎるものだった。
 検体が実験中に過去へ飛んだという事実。それは偶然の産物とはいえ、時間を移動する技術が見つかったということを意味していた。
 人が神の領域に一歩足を踏み入れた事と同時に、それは自らの望む未来へ過去を改変する手段が見つかってしまったという事。
 そう、己の望まぬ過去の出来事も歴史上ではそんな事は「なかった」事に出来るというおぞましき力の存在を人が認識してしまったという事である。
 身体をぴくりと動かしつつも彼女は無言で彼を見つめる。その目は相手の口から出たのが出任せか真実か探っていた。
「次元移動どころか、時間跳躍までしたと言うんか?」
 威圧感を与えるように睨んでくる彼女に、彼は怯えるような様子は見せなかった。
 むしろ彼は世間話をするかのような気楽さな口調で話を進める。
「馬鹿馬鹿しいと思うが、そのとおりだ」
 スカリエッティ自身も馬鹿らしいと思っているのだろう。
 その場で立ちあがって片手にファイルを持ちながら腕を広げる。
 そして、どこか芝居ががった大げさな身振りで首を振った。
「その研究で分かった事はただ一つ。次元海豚の生態が未だに不明といわれるのはその特性ゆえ」
「そして次元海豚の能力を得た存在は……」
 はやての言葉を引き継ぐようにスカリエッティは言った。
「シュレディンガースタンディング現象に囚われ、どこにでも存在するけど存在しないという超常現象の塊と化す」
 椅子に座りなおした彼は机にばらまかれた書類の一つを手に取り、それに目を通しながら説明を続ける。
 その顔には新しい玩具を発見したと言わんがばかり表情が浮かんでいた。
「SS現象と呼称させて貰うが、この現象を知る科学者の中にはこういう見解もある」
 顔を上げてはやてを見るスカリエッティの顔に浮かんでいたのは、まるで新しい玩具を見つけた子供のような笑顔だった。
 しかしその瞳の奥には、目を合わせたはやてすら身の毛もよだつような邪悪な狂気が宿っていた。
「SS現象により、過去にもその存在が確定したオーバーテクノロジーこそが……ロストロギアではないかと」
 顔をひきつらせている彼女を見て、己が相当な顔をしている事に気付いたのだろう。居住まいを正してから顔に浮かべていたそれを消したスカリエッティは彼女に言った。
「中には、製作者が分かっているものもあるがそれはごく少数。大体は製作者不明。才媛の君なら分かるだろう?」
 それでも明らかに興奮が隠し切れていない相手に対し、自然に身が後ろに引いてしまうはやて。
 だがそれを殺して目をより細め、淡々とした口調でレスポンスを返す。
「古代遺失物と呼ばれるものの正体は、私らのいる今より遥か先の未来で作られたものという事か?」
「あぁ、君の言った通りだよ。クロノドライバーの因子を持つ存在か、それで過去に送られた存在がなりやすい」
 彼女の蔑むような冷かな目つきで湧き上がった気持ちも落ち着いたのだろう。
 スカリエッティは笑みを残しつつも、事実だけを並び立てるように事務的な口調でそう答えた。
「君の扱っている古代ベルカの言語で言えば、ツァイト・ヴェレナー因子と言ったところか」
「時空跳躍因子……という事かいな」
 緊迫していた空気が僅かに緩み、はやてが深く息を吐き出した時を見計らったかのように彼は新しい質問をした。
「そこで君に質問だ」
 彼はそう言って柔らかく笑った。
 その表情に、彼女は背筋をぞっと震わすほどの異様な嫌悪感を覚えた。
 何故ならその瞳の奥につい先ほど垣間見た邪悪な狂気がドロドロにへばりついた泥のように宿っていたからだ。
 はやては思わずその場でえずきそうになった。
 彼女の状態など気にも留めずに、彼は笑みを貼り付けて相手の願いの象徴であり弱みの部分に切り込んだ。
「過去をやり直し、未来を変えたい……君はそれを願った事はないかな? 《夜天の王》八神はやて」
「……」
 その響きはまるで甘い罠で誘惑して魂の取引をしようとする狡猾な悪魔の囁きのようでもあった。
 目の前の愚者をそそのかし、引きずり込んで破滅させた後にその魂を蹂躙するが如く貪ろうとする悪魔。
 そんなものを彷彿とさせる顔を彼は見せていた。
 はやてはそれに対し、嫌悪というより嫌悪に近い感情を湧き上がらせる。
 まるで自身の醜いと思う部分を抽出して見せつけられているような感覚を覚えたからだ。
「さぁ、な……あんたには関係ない事や」
「そうか」
 その回答次第で何かをするつもりだったのだろうか。
 はたまた、彼女の決定的な弱みと言える部分をこの場で引きずり出してしまおうと考えていたのだろうか。
 その返答に対し、彼はどこか興醒めしたような顔をした。
 座っている椅子の位置を回し、机に向かうとつまらないと言うかのような口調で彼女に言った。
「まぁ、君が会わない事をささやかながら祈ろう」
 声からして妙に機嫌が悪いスカリエッティの口振りに、はやては不思議に思いながらも質問する。
「もし会ったら?」
「良き選択をする事だ」
 背中を向けているせいで彼がそんな表情をしているかは、分からない。
 だがアドバイスするかのようなその言い方はまるでスカリエッティが実際に時空跳躍した経験があると言っているかのようであった。
 何か怪しいと思った彼女は鎌を掛けた。
「逆に聞くけど、あんたは変えたい過去はあらへんのか? ジェイル・スカリエッティ」
 その問いはすぐに返ってきた。
「ないわけではないが、後悔はしていない」
「……なるほどなぁ」
 彼が逮捕される原因となった事件からも分かるように、ジェイル・スカリエッティは己の欲望のならばいくらでも世界に喧嘩を売るような人間だ。
 だから逆に変えたい過去などいくらでもあるとはやては考えて鎌をかけるような質問をしたのだ。しかし、まさかその予想が外れるとは思ってもみなかった。
「それと、これにサインしたまえ」
 そう言ってスカリエッティがはやてに向かって飛ばしてきたのは一枚の紙だった。
 ミッドチルダで使われている文字とも違い、ベルカの文字とも違う。
 はやても見た事のない文字がそこにびっしりと書かれていた。
 インクらしきそれはどす黒く、まるで凝固した血を彷彿とさせた。
 多少不思議に思いながらも、彼女は末尾の部分に己の名前を書き込んだ。
 名前の書かれた紙はスカリエッティの手元に戻り、彼の持っていた革地の背表紙へと吸い込まれる。それと共に置かれていた魔力反応紙も宙に浮かび、背表紙に向かって勢いよく押し寄せる。
 最後の一枚が挟み込まれていた時、スカリエッティが手に持っているそれは「本」としての形を成していた。
 最終確認としてページをぱらぱらとめくって閉じた彼は、その本を彼女の方へと勢い良く投げる。
 それをキャッチしたはやてはその本を何気なくめくる。中身は何も書かれておらず、魔力反応紙をたくさん集めて綴じただけの本だった。
 真っ白な本にギョッとするはやて。『書』の中にあった情報が全て抹消されたんじゃないかと思ったからだ。
 掴みかかろうとする彼女に向かって、スカリエッティはクククと意地汚い笑みを浮かべる。
「今の技術では情報圧縮してもこれ以上は容量が大きくならないのでね、サブを作らせてもらった」
 使うと良いと、悪戯っぽく笑うスカリエッティ。
 その言葉に、毒を抜かれたはやてはまるで狐か狸に化かされたかのような顔をする。
 彼が軽く手を挙げると、ウーノがはやてに向かって分厚い本を差し出す。
 表紙に金属で出来たベルカ十字が埋め込まれているそれはまさしく、はやての愛用している『夜天の書』であった。
 力が抜けた彼女に向かって、
「気をつけて帰りたまえ」
 と、ニヤニヤと笑って彼女を帰すスカリエッティ。
 何だか負けたような気がするなぁ、と思いつつはやては彼専用にあてがわれた研究室を後にした。
「契約は終えた……か」
 はやてが去った後、スカリエッティは静かになった研究室で一人ごちる。
 ウーノは疲労回復効果のあるハーブティーを淹れに行っている。
 だから、部屋には彼一人しかいない。
「後は運命次第といったところだな」
 そう言って彼は背もたれによしかかり、だらしない姿勢で椅子に身体を沈める。
 引き出しから管の長いキセルを口に銜え、ぼんやりと天井を見上げる。
 火をつけていないはずなのに、火皿からは白い煙が上がっていた。
「さて、君はどこに流れ着く? 何を願う? 何を変える?」
 口元に楽しそうな笑みを浮かべて、彼は問いかけるような口調でそんな独り言をつぶやく。
「私には、それが楽しみでならないよ」
 その顔はまるで壮大な悪戯の計画を考える子供のように、純粋でありながらも悪意に満ちた笑みであった。

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