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デスマーチしつつ、『Künftiges Erwartungsbild』更新ですね

管理人一同は―――
 『魔法少女ろりこっとん プロジェクト』。通称『ろりこっとんプロ』
 『砲撃文庫』・『創刊砲撃マ王』
 『SSをノベルゲー化プロジェクト』
 それらの三つを力強くを応援しています。

おはようございます。雪奈・長月です。
そういえば、30時間SPですね。
死ねます。存分に死ねます。確実に死ねます。
一定時刻ごとに、キーワードの一文字を言っていて・・・それを集めた人には抽選でプレゼント。
24時間SPで頑張っても当たらなくて泣いたのに、その企画を30時間SPですので・・・ 死 ね ま す ね !
涼香様によって、私たちリスナーは殺されてしまうのですね・・・・・・
とっても、ガクブルです。コーヒーを何リットル飲めば良いのでしょうか・・・・・?
でも、やりますかね・・・・・・・頑張って、30時間起きなきゃね☆
だって、プレゼント欲しいですし。大丈夫。コーヒー飲みながらSS打ちをすれば良いのですからね♪
事件も解決させないといけませんしね。この事件だけで半年以上かけている気がしますからw
ラジオ中はSSの更新を連発します。
三十時間のミッション。頑張ります

涼香様の時空管理局ラジオ進行中!
砲撃文庫より出版『涼香様が見てる』でちゃんと予習復習しましょう。
人生は狂気の沙汰ほど、めしかゆうまです。
ひとまず涼香様は自身の身体をご自愛ください。
そしてココに来る皆様も身体に気をつけて下さい。

過去の部分が読みたい方は『戯言劇団』へ。(改名しました)
ある種のカオス空間なのでご注意下さい。
基本的に『交換戯言日誌』で掲載した分の保存庫でありますが・・・・・・
とある方のSSも掲載してあります。
興味のある方は、『演目:梟戦記』にどうぞ。

他に何かありましたら、『幻想寓話』へ。
匿名でも構いません。ご自由にお使い下さい。
使う場合、スレッドは出来るだけまとめていただけるとありがたいです。



『Künftiges Erwartungsbild』 十五話『眠れない二日間』(27)

〈三時四十分 冬秋〉

「Are you ready?」
「「いえぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」」
 既にライブが終わっているだろうと想っていた冬秋は目の前の光景に唖然とする。
 開始してから既に二時間半近く経っているはずなのに終わる気配はなく、熱気が徐々に上がって行っていた。
「あいつらも、頑張っとんなぁ……」
 特設ステージを走り回りながら熱唱する二人の姿を備え付けの巨大スクリーンで眺めながら、冬秋は楽しげにニヤリと笑った。
 彼女たちは野外ライブの前にクラガンの歌合戦にも出場してきたのだ。肉体的にも、精神的にも、そろそろ限界に来ているに違いない。
 いつ倒れてもおかしい状態であるにもかかわらず、二人はそれを顔に出す事無く、ライブに訪れてくれた観客たちに笑顔を振りまいている。
「でっかくなったなぁ……あいつらも」
 そう呟きながら冬秋は初めて二人に会った頃の事を思い返す。
 二人と冬秋が出会ったのはまだ『ワルツウィンドウ』が結成したてで、知名度がまだ少し少ない頃であった。
 満員の電車内で痴漢にあっていた彼女たちを、冬秋が助けたのがきっかけで知り合った。
 冬秋はそれがきっかけで、彼女たちからボディーガードの依頼をされるようになる。
 そして今では二人のボディーガードをしているという理由で、他のアイドル事務所の妨害班や熱狂的なファンに襲われている。
 しかしプロデューサー兼、マネージャーである弥生は千歳の家出や琴羽の不調で冬秋以上に色々と苦労していた。
 様々な困難を乗り越え、クラナガンの歌合戦出場や元旦ライブをするまでに至った経緯を知っているだけに、冬秋は目頭が熱くなるのを感じた。
 しかし感涙しているわけにも行かない冬秋はその滴をすぐに拭い、まだ袋の中にあるおにぎりをかじながらも周囲を見回す。
 何故ならば、二人を再び誘拐する計画が持ち上がっていると言う情報を耳に挟んだからだ。
 今回は二人の護衛をする依頼を貰ってはいないが、前回のアフターサービスとして働くのも良いだろう。
 師匠である天音の頼みをこなしている間に誘拐される事態を危惧していなかった訳ではないが、それは杞憂であったようだ。
「一度は失敗しているくせに、また仕掛けるなんてしつこいやっちゃ……仕事人としてはダメダメや」
 まぁ、そんな粘り強さも嫌いじゃないんやけどな。と呟きながら冬秋はおにぎりをかじる。
 ちょうどその時であった。二人の歌声や観客の歓声に混じって、ハウリングに似た音を冬秋は聞いた。
 しかしその音を聞こえるのは冬秋だけで周囲の観客はステージの二人に夢中のようであった。
 何故ならこのハウリングは魔力が現実に干渉する時に発せられる音で、一般人はおろか魔導師でも聞き取る事が出来ない物であるからだ。
「……来おったな」
 持っていたコンビニ袋を地面に落とし、冬秋はニヤリと歯をむき出しにしながら楽しそうに笑った。
「エクセレス……ショウダウンっ!」
 冬秋の前方。ステージの近くから大声で何かを呼ぶ声が『ワルツウィンド』の二人が紡ぎ出す歌声と共に響いた。
 その数秒後に巨大な何かが突き出され、そこの周囲に居たのだろうと思われる人たちが宙を舞った。よく見ると、それは―――巨大で真っ赤な腕であった。
 腕が突き出されると同時に不協和音に似た不快な雑音が二人の歌声を打ち消し、その場を支配する。
 無数の歯車が回転する音や何かを軋ませるような音を奏でながら、何者かが呼び出したそれは姿を現せた。
 それは金属の鎧を纏った巨大な人形であった。その姿は少し細身であるものの、古い西洋の騎士を模している人型の機械。
 とても精密な精緻や巧緻を凝らして造られたかのような意匠で、鮮やかな赤色の装甲を持つ巨大な異形のからくり人形であった。
 どうやら、エクセレスと言うのがあの巨大な人形の名前らい。
 睡眠ガスや催涙ガスをばらまき、その隙にステージの二人を拉致。そして何かしらの形でその場を離脱―――というのは冬秋も考えていた。
 しかし無関係の人が多い場所でこんな巨大な人型デバイスらしき物を召喚して、二人を誘拐しに来るとは冬秋も想像していなかった。
 予想外の事態が起きているとしても、止まっているわけには行かない。阿鼻叫喚を上げている観客たちを掻き分けて進みながら、巨大スクリーンの方を見る冬秋。
 スクリーンの二人は目の前に巨大な人形が召喚された事など全く気づいていないかのように歌い続けている。
 少し前に『ワルツウィンド』の如月千歳は冬秋にこんな事を言った事があった。
 冬秋が自分たちを護るのが仕事のように、私たちは見ている人に夢を与えるのが仕事なんです。
 仕事場はある種の戦場。戦線離脱など許されない。
 だから今はステージが彼女たちの戦場。観客が去らない限りは降りる事は許されない場所なのだ。
 歌い続ける二人の姿からそれを察した冬秋は、全く……気丈なやっちゃと笑う。
 そして冬秋が前でその場の光景に釘付けになっている観客を踏み台にしてでも向かおうとしたその時、ステージに天使が舞い降りた。
 あくまでそれは第一印象に過ぎないのだが、背中に黒い羽が本当に生えた少女がステージに下りてきて、エクセレスから二人を守るように立ちふさがる。
「どけえぇぇぇぇっ!」
 誘拐犯らしき声がマイクに拾われ、自然公園の周囲に配置されたスピーカーからも聞こえた。
 しかし少女はその声に怯む事無く、エクセレスと誘拐犯をぼんやりと見つめている。
 冬秋は少女に少し悪いと思ったが、そこまでたどり着くまでの時間稼ぎになってくれる事を祈りながら観客を掻き分けて進む。
 しかし冬秋がいる位置からステージまではまだ距離があった。
 その上、ほとんどの観客が逃げようとせずにスクリーンを食い入るように見つめている為に進みにくい。
 冬秋が四苦八苦している間も、ステージの前では誘拐犯と天使が一触即発の雰囲気を醸し出していた。
 誘拐犯は苛立っているかのように殺気を飛ばしているのだが、その殺気を何事もないかのように受け流す天使。
 そんな緊迫した空気の中、女性の姿の声が割り込む。
「……そこの二人。今すぐ、武装を解除して下さい」
 誘拐犯と天使は声のする方に視線を向けた。そこにいたのは、左手に白と紫の手甲型デバイス。両足にブーツ型デバイスを装着したメイド服姿の女性。
 彼女がいるのは地上ではなく空中。紫色の魔法陣の上に乗っていた。
 女性は自身の身分を名乗り、武装の解除をするように命じる。
「時空管理局第108陸士隊所属……ギンガ・ナカジマです。武装を解除し、そのまま投降して下さい」
 しばらく二人はギンガを見ていたが、興味が無くなったかのように視線を交戦する敵の方へ戻した。
 流石に最前列の辺りは危険だと感じているらしく、観客たちも後ろに退いている。しかしその目はキラキラさせている。
 クリスマスにも『ワルツウィンド』の二人は誘拐された事があった。
 しかしその時は幽霧霞三等陸士たちが誘拐犯たちから二人を奪還。
 その時、場を繋ぐ為に諜報部の部隊長である雪奈・長月が自身の人脈を使って人を集結させ、二人のライブから『時空管理局感謝祭』へと強引に内容を変えていた。
 だから、これもあくまで野外ライブを盛り上げる為の演出であると思っているのであろう。
「エクセレスっ!」
 誘拐犯は声高く自身のデバイスの銘を呼ぶ。
 その声に従って、エクセレスは内蔵されているカートリッジをロード。背中から余剰な魔力が煙と共に排出される。
 手甲や前腕部の閉じられていた装甲が開き、手甲内部にある機関が風を巻き起こしながら魔力を吸収する。
 『エクセレス』は右腕を後ろに引く。その腕が光を放つ。
 光源は右腕を中心に展開されていた光り輝く七枚の腕輪。
 土星の輪を思わせる、厚みが全くない光の腕輪の正体は幾何学的な美しい紋様とミッドチルダ式の文字で構成されている魔法陣であった。
 ステージに魔法を打ち込もうとする『エクセレス』の体内から何かが高速で回転する音が聞こえ、右腕の魔法陣もノイズに似た雑音を起こしながら回転する。
 それに対して天使は右手を上に、左手を下にして突き出した状態で構える。
 観客を掻き分けながらもスクリーンを確認していた冬秋は天使の構えに驚く。
 あれは―――月城流拳技の一つ。
「くだけちれぇぇぇぇぇぇぇぇっ!」
 誘拐犯の怒鳴り声がマイクに拾われ、ハウリングを起こしながらスピーカーから流れた。
 天使の取っている構えが何を意味しているか分かっている冬秋は叫んだ。
 その声は決して届かないと分かっていても、冬秋は叫ばずにいられなかった。
「止めやっ! あの構えは……」
「イグニッション……バーストおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!」
 しかし冬秋の叫び虚しく、誘拐犯は魔法を発動させた。
 『エクセレス』の右肘から魔力が勢い良く放出され、それを推進力して天使に迫る。
 天使は迫り来る巨大な拳を上下から手で挟みこみ、そのまま一気に右手と左手の位置を逆にする。
 回転と共に強風が巻き起こり、ベキベキと音を立てながら騎士の腕が捻じ曲がる。
 『エクセレス』の右腕は捻じ曲がる所で止まらず、そのまま捻じ切られた上に砕け散った装甲が周囲に撒き散らされる。
 しかし天使が拳を受け止めた場所に『エクセレス』が発動した〈イグニッションバースト〉の魔法陣が固定され、大きな魔力爆発を起こした。
 その爆発によって、天使の身体は軽く吹き飛ばされた。
 スクリーンで見ながらも進んでいた冬秋は顔に驚きを浮かべながら呟いた。
「やっぱり、あれは……月城流拳技『渦潮』やないか……」
 誘拐犯は『エクセレス』で放った渾身の『イグニッションバースト』が天使に聞かなかった事に唖然とする。しかしそれが隙となり、それが仇となった。
 吹っ飛ばされた天使は空中で黒い靄を集束させ、誘拐犯と『エクセレス』に創造した物体を放った。それは巨大な十字架。
 十字架は誘拐犯と『エクセレス』の腹部を貫通し、地面に縫いつけた。貫通した位置から流れ出た血やオイルが十字架を伝い、鉄臭い水溜りを作り出す。
 その瞬間、ライブの演出ではないとやっと気づいた観客たちは絶叫を上げた。
 自身たちのステージが殺人現場と化している状況に、千歳と琴羽も流石に絶句している。
「あ~。ついにやりおったか」
 串刺しになった誘拐犯と『エクセレス』の姿をスクリーンで眺めながら冬秋は呟いた。
 足止め程度に考えていたが、まさか誘拐犯を刺殺するとは思わなかった。ひとまず、二人が誘拐されなかった事に冬秋が安心した―――その時だった。
 突き刺さっていた黒い十字架が誘拐犯と『エクセレス』の身体に飲み込まれていく。池になっていた血とオイルが誘拐犯と『エクセレス』の身体に吸い込まれ、肌や装甲に刺青らしき紋様が浮かび上がる。
 そして誘拐犯は身体を起こし、エクセレスは再び稼動し始める。
 死んでしまったと思っていた冬秋やそれらを見ていた観客たちはそれにギョッとする。
 立ち上がった誘拐犯は両足を開き、左手に腰を当て、人差し指を立てた右手を突き上げた。
 『エクセレス』も開ける装甲を全開にさせながら、誘拐犯と同じポーズを取った。
 色んな人の目が集中している中で、誘拐犯は叫んだ。
「ミッドナイトおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ……いえあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
「ぶうぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉんっ!」
 誘拐犯と『エクセレス』の足元の魔法陣が展開され、全身から黒い靄が噴出した。
 それを運悪く吸い込んでしまった者はその場に倒れたり、暴れ始めたりし始める。
 彼とそのデバイスが噴出した黒い靄を毒ガスだと思ったのだろう。観客たちはそれを吸わないようにする為にその場から逃げ出す。
 ステージに向かおうとしている冬秋は文字通り迫ってきた人波に翻弄される。冬秋はその場から逃げようとする肩や身体をぶつけられながらも前に進もうとする。
 しかしステージ前に存在するのは濃厚な狂気によって強引に狂わされた人たちの大群。見知らぬ人同士で暴行。形振り構わず他人を組み敷いて襲う。暴行。窃盗。強姦。
 まともな思考を持っていれば、それらを躊躇いもなく行う事はないだろう。
 しかし放出された黒い靄がもたらしたものは、それだけでは終わらなかった。
 誘拐犯と『エクセレス』は凝固して漆黒の鎧となった黒の靄を纏い、星の見えない空に向かって咆哮する。
 外見上は細身の騎士であったが、その中身は本能のみで生きる猛獣であるかのように感じられた。
「イグニっ! ションンンンン……」
 両足を踏みしめ、構えた誘拐犯の口から言葉が紡ぎ出されると同時に二人の手甲や前腕部の閉じられていた装甲が開き、手甲内部にある機関が風を巻き起こしながら魔力や靄を吸い込む。
 二人は右腕を後ろに引き、再び光り輝く七枚の腕輪を展開。
「あああああああああああああああああああああああっ!」
 〈イグニッションバースト〉を打ち込もうとする誘拐犯は咆哮し、『エクセレス』の体内から何かが高速で回転する音が聞こえ、二人の右腕に展開された魔法陣もノイズに似た雑音を起こしながら回転する。
「ブリッツキャリバーっ!」
「OK.Master」
 既に〈イグニッションバースト〉の威力は分かっているギンガはせめて『エクセレス』のものだけでも止める為に、『ブリッツキャリバー』を完全に起動させ、〈ウィングロード〉の上を高速で走る。
 ギンガが『リボルバーナックル』に魔力を注ぐと同時にナックルスピナーが回転。荒々しい風を生み出す。
 そして『エクセレス』が〈イグニッションバースト〉を打ち込まれもうとしている位置へ滑り込む。
「バぁーストぉぉぉぉぉっ!」
 二人の騎士が右腕を叩きつけると同時に、ギンガは『リボルバーナックル』の全面に硬質のフィールドを生成し、そのフィールドごと『エクセレス』の拳に衝撃を撃ち込む。
 誘拐犯が打ち込んだ〈イグニッションバースト〉は地面を揺るがし、周囲から生えた魔力の柱が周囲にいる観客を打ち上げた。
 放たれた衝撃でギンガと『エクセレス』の腕が振動し、高密度の魔力が衝突する事によって一瞬だけ空間が歪む。
 身体に伝わる痛みからか、顔をしかめるギンガ。
 しかしデバイスである『エクセレス』には全く変化がない為、ギンガの〈ナックルバンカー〉は効果がなかった思われた―――その時であった。
 『エクセレス』の右腕がボコボコと気泡らしきものがいくつも発生し、爆発と共に右腕が吹き飛んだ。どうやらギンガの〈ナックルバンカー〉が『エクセレス』の〈イグニッションバースト〉を押さえ込み、集束させた魔力や魔法自体を逆流させたようだ。
 隻腕になった『エクセレス』にひとまずはとめる事が出来たと安心するギンガ。
 そこでさっきまで宙でぼんやりとギンガたちを見ていた少女の口がゆっくりと動く。
狂気の猟犬イレフンテ
 靄が集束して犬の形を取り、ギンガに突っ込んだ。
 気づいていないギンガに噛み付いた犬の牙はバリアジャケットを貫き、身体に食い込んだ。傷口から狂気が流し込み、少しずつ溶かしていく。
 痛みでやっと犬の存在に気づいたギンガが振り払おうと足掻くたびに犬の牙が食い込み、身体の自由を奪っていく。
 しかし少女は手首の傷口から黒い靄を噴出しながらぼんやりとギンガを眺めている。その目からは感情が全く感じられなす、ただ見ているだけのような感じであった。
 黒い靄の濃度がある程度まで濃くなった所で少女は口を動かした。
「……罪の雨シュルトレーゲン
 その口から紡ぎだされた銘によって黒い靄は無数の細い針となって、豪雨のように勢い良く射出。ギンガに喰らい付いている犬ごと刺していく。
 その針がギンガに降り注いで刺していく勢いはまるで豪雨。
 針は刺し傷から身体の中に溶けていく激痛と狂気でギンガを蝕んでいく。
 肌は徐々に黒ずんでいき、身体も言う事を効かなくなっていく。
 身体を動かせないまま、降り注ぐ黒い雨と自身の身体に美味しそうに噛んでいる犬を眺めているギンガの身体が出血のせいで徐々に冷たくなっていく。まるで雨に打たれてずぶ濡れになっていくかのように。
 ギンガと同じように〈罪の雨シュルトレーゲン〉を喰らっている『エクセレス』は少しずつ装甲自体が黒ずんでいき、吹き飛んだ右腕が修復されていく。
 誘拐犯は狂ったかのように吠えながら拳を振り回し、周囲にいる人を容赦なく殴っていっている。
 殴られてノックダウンした人たちは既に狂っている人の餌食となり、抑圧された本性を出した者たちの慰み者なって行く。
「あっ……あっ……」
「ひどい……」
 余りの悲惨な光景に千歳と琴羽は口元を押さえて、座り込んでしまう。
 天使と二人の騎士が無差別にばら撒いている狂気は周囲に伝染していき、クラナガン自然公園の特設ステージ周辺を現世の地獄へと変えていく。
 そこは錆びた鉄のような匂いや鼻の奥がつんと痺れるような甘ったるい奇妙な臭気が濃厚に入り混じった世界。
 ある意味でその世界は一つの天国にして地獄であった。
 背中に小さな羽根が生え、身体中に黒い線が刺青のように浮かび上がった天使は楽しげな笑みを浮かべる。
 狂気で開放された人たちが放つ狂気が黒き靄となって、天使の身体に吸い込まれていく。
 吸い込んだ黒き靄で天使の肌に浮いた線が濃くなり、背中の羽は肥大していった。
 周囲が悲惨になっている間も冬秋は必死で人を掻き分けながら進んでいた。今はまだ二人に危害は加えられていない。せめて、千歳と琴羽だけはこの場から助け出したかった。
 その時、右のポケットに入れていた携帯デバイスがバイブレーション機能で動き出す。こんな時に誰だと苛立つ冬秋は携帯をそのままにして前へと進むために人を掻き分ける。
 しかし数分が経っても携帯のバイブは止まらない。
「……ちっ」
 舌打ちしながら冬秋は携帯を開き、その通信に出る。
「冬秋」
 携帯から聞こえて来たのは冬秋の師匠である天音からであった。しかし声音や雰囲気はまるで違っていた。
 本来の天音から出る声は誰かを和ませるような穏やかな声。
 しかし今の天音から出たのは人を本能的に従わせる冷徹な女王閣下のような声であった。
「師匠……閣下?」
「今、クラナガン自然公園にいるのね」
 その言葉に冬秋は無言になる。そんな事を聞くためにいちいち通信を入れてきたのだろうか。
 急ぐ余り、苛立っている冬秋は既にステージの事しか考えていなかった。
 冬秋の無言を肯定と見なした天音は諭すように言った。
「もし、それに出会ったら逃げなさい。貴方じゃ、あれには勝てない」
 天音の言葉に冬秋は立ち止まり、何処に向ける事が出来ない怒りで両手に力を入れる。携帯が軋むような音を立て、手が血の気を失って白くなるくらいに。
 携帯の向こうにいる彼女は冬秋を侮辱するわけでも、嘲笑しているわけでもない。
 冬秋が勝てる見込みがないから、怪我をしないように言っているのだ。
 その優しさが冬秋は痛かった。男は女を守る事が最も大切な事だと考えている冬秋が師匠とはいえ、女性である天音に庇われようとしている。
 そういう事態に陥っている自身が冬秋はふがいなかった。
 しかしそう易々と目の前の光景から逃げる事は出来なかった。
 黒い天使に襲われる人たち。中には自身の知っている人もいる。それを見捨てる事が出来なかった。
 空を見上げると、天使が二人の方に向かおうとしていた。
 軽く間を置いてから冬秋は携帯の向こうにいる天音に返した。
「……男は女を護るためにいるんや。ここで逃げたら、ワイは自身のポコチンをぶった切ったる」
「よく言ったわ。冬秋。貴方はまさしく漢だわ。護りたい者の為に相手を潰しなさい。それが……」
「それがワイの正義や」
 そう言って肩に掛けた長細い鞄のチャックを開く冬秋。
 中から出てきたのは釘バット。金属のバットに釘が打ち込まれ、釘の中には曲がっている物や赤い物が付着した物もあった。
 釘バットを抜いた冬秋は考える。どうすれば、一刻も早くステージの方へ行けるか。
 このまま混乱している人の波を掻き分けるのは駄目だ。余計な時間が掛かり、二人を蹂躙する時間を天使に与えてしまう。
 ならば、冬秋が選ぶ選択肢みちは唯一つ。
「肩を借りるでぇ!」
 冬秋はそのまま高く跳躍。前方にいるファンたちの肩や頭を踏み台にして、舞台へと向かう。
 足元で聞こえる呻き声や、背後から聞こえてくる罵詈雑言を冬秋はあえて無視。
「どらぁぁぁぁっ!」
 どうにか冬秋は天使が攻撃を仕掛けるより先にステージへとたどり着き、『ワルツウィンド』の二人を守るように立つ。
 そして向かい来る天使の頭を狙って豪快にフルスイングした。予想外の一撃を天使は避ける事が出来ず、冬秋の釘バットが綺麗に打ち込まれた。
 割り込んできた冬秋の一撃によって殴られた天使はフラフラと危なっかしい飛び方でありながらも踏みとどまる。
 振り抜いた釘バットを肩に掛け、冬秋は天使に怒鳴った。
「おまえが天使か悪魔なんか、ワイは知らへん。とりあえず……ワイに潰されとけ」



〈四時十三分 幽霧〉

 セイロンたちと【イタリアンレストラン「光の女神てんし」】に訪れた幽霧。木造らしい扉のドアノブに手をかけ、ゆっくりと開く。
 ドアの内側につけられたカウベルの軽快な音と共に、中からトマトとチーズの良い匂いが漂ってきた。
 店内は割と落ち着いた感じで、周囲の壁には食器などが乗せる棚や壁掛け時計がつけられている。電灯は客の目を痛くしない為の気遣いからか、蛍光灯のような白くて強い光ではなく橙色より少し淡い感じの光で店内を照らしている。
 周囲からざわざわと話し声が聞こえるが、うるさいと言う感じではなく、これが普通の風景であるように思えた。それと同時に時間の歩みが外より遅くなっているような感じがした。
「いらっしゃいませ」
 カウベルの音でオーダーを取っていたティアナが入ってきた幽霧たちの方に振り向いて出迎える。仕事柄で慣れていないのか、笑顔が少しぎこちない。
「えっと……二名で」
 そんなティアナの笑顔でも向けられると緊張してしまうらしく、セイロンは人差し指と中指を立てながらぎこちなく答える。
「……分かりました」
 ぎこちない笑顔でもちゃんと保てないのか、少し仏頂面になったティアナがセイロンと透子を空いているテーブルへと案内する。
 幽霧たちは入り口の前で立ったまま別の局員が来るのを待つ。
 アルフィトルテは幽霧を見上げながらスカートを引っ張る。
「お腹空いたね……」
「そうだね」
 見上げてくるアルフィトルテの頭を撫でながら幽霧は答える。良く見ないと分からないが、幽霧の口元には笑みが浮かんでいた。
 その姿が姉妹か何か見えて微笑ましいのだろう。雫はそんな二人を眺めながら笑みを浮かべていた。
「あっ。幽霧くん!」
 ちょうど合間が出来たのであろう。幽霧たちの方へシャーリーがやってきた。上は黒いベストとベストと同じ色のネクタイに白い長袖のワイシャツ。下に穿いているのは黒のスラックス。それはまるでギャルソンのような装いであった。
 淡々とした口調で幽霧はシャーリーに挨拶する。
「こんばんは。シャリオ・フィニーノ執務官補佐」
 フルネームで呼ばれるとは思わなかったのか、一瞬だけ驚いたような顔をするシャーリーであった。しかしすぐに吹き出し、苦笑いする。
「そんなにかしこまらなくても良いですよ。普通にシャーリーで」
 シャーリーは幽霧の隣にいるアルフィトルテを視線を向ける。その瞬間、目がキラキラと輝き始める。
「アルフィトルテちゃんだぁ」
 何か不吉な気配を感じたのか、アルフィトルテは幽霧の後ろに隠れようとする。しかしその時には既に遅かった。
 隠れようとした時には既にアルフィトルテはシャーリーの腕の中であった。
「やっぱり、アルフィトルテちゃんは可愛いな♪ 肌もすべすべだし、小さくて抱き心地もいいなぁ」
 アルフィトルテはその腕の中から抜け出そうとするのだが、シャーリーは中々離そうとしない。
 流石に〈アブゾォーヴシフト〉を使用するわけにいかないアルフィトルテは目に涙を浮かべつつも困ってしまう。
「幽霧くんっ!」
「駄目です」
 シャーリーが本題に入る前に幽霧は即答する。こんな展開に出てくる言葉がどういうものなのか、幽霧は既に予想していたからだ。
 いつもならアルフィトルテをちょうだいと言うのが多いが、シャーリーの場合は分解させてくれないかという事だろう。
 デバイスであるとは言え、アルフィトルテは幽霧の相棒だ。そう易々と分解させるわけにも行かない。
「お願いしますよ~」
 即答する幽霧に、シャーリーはアルフィトルテを抱きながら口を尖らせる。
 あくまでひこうとしないシャーリーに、幽霧はどうしたら良いのか分からずに困ってしまう。
「……シャリオ・フィニーノさん?」
 今まで三人を眺めていた雫が微笑みながらシャーリーをフルネームで呼んだ。その声は冷え冷えとしていて、背筋に寒気が走るようであった。
 足元などに魔法陣は展開されていないが、何処からともなく何か出てきそうな気配も感じられた。
「はははははは……」
 雫から出ている空気にシャーリーの生存本能が刺激されたのか、乾いた笑いを上げながらアルフィトルテを離した。
 アルフィトルテは幽霧の後ろまで走っていき、スカートの影からシャーリーを見る。
「えっと、お仕事の方は大丈夫でしょうか?」
「あ~。ちょっとやばい……かな」
 そう言ってシャーリーは周囲を見る。周囲の局員も慌てた風に給仕をしている。
「自分で良ければ、仕事に入りますが」
 少しでも助けようと思った幽霧はシャーリーに申し出る。
「それは嬉しいけど……」
 言葉を濁しながら、シャーリーは雫の方をチラリと見る。きっと幽霧は雫とデートしている途中だと思っているのだろう。
 流石にそれを邪魔するのは野暮だと考えているのかもしれない。
 シャーリーの考える事を仕草や言動で考えている事を悟ったらしく、雫は口元に笑みを浮かべながら言った。
「私も良いですよ。困っている人を助けるのも当たり前です。私も手伝いましょう」
「あっ……ありがとうございます」
 雫がそう言うと思わなかったらしく、シャーリーは礼を言いながらも驚いていた。



〈四時二十分 雹嵐&マリア〉

 そば屋で年越しそばを食し、同じ学校の人へのお土産を買っていたマリアと雹嵐は歩行者天国である大通りを歩いていた。
 飲食店は客をかき集めるために特別営業しているのだが、大晦日と元旦くらいは羽目を外したいのだろう。
 周囲には沢山の人たちがいた。道路に座って何か食べる者。何故か道端のガードレールに寄りかかりながらも眠っている者。本当に色々といた。
 マリアは苦笑しながら言った。
「結局……夜更かししてしまいましたね」
「こんな日があっても良いですよ」
 人は経験をして大きくなるやからなと、口元に笑みを浮かべている雹嵐は歩きながらそう付け加えた。
 陸士部隊捜査課の出している【甘味処『華鳥風月』】に向かった三人。そこで雹嵐が予想していた通り、セクハラに関しては異種族の狩人顔負けの身体能力を発揮する諜報部局員、紅月神威にマリアが襲われてかけた。
 一緒に給仕をしている局員たちも対処になれているらしく、腰の後ろに二振りの刃物を交差するように刺している甚平の姿の局員に首を捕まれた神威は厨房へズルズルと引きずられていった。
 その後にお詫びと称して出された温かいお汁粉に舌鼓を打った三人は満足な顔で【甘味処『華鳥風月』】を出てきた。
 そろそろ家に帰ろうとした所で、顔に黒い刺青らしき物が入っている三人組に遭遇。
 それを雹嵐とその相棒であるエンテが迎撃した事で、マリアは事なきを得た。しかし、身体に黒い刺青が入った人たちと何回も遭遇する事となった。
 撃墜したり、逃走したり、色々と行っている内にこんな時間になってしまったのだ。
 雹嵐の相棒であり、能力の一部であるエンテは能力行使で疲れてしまったらしく、今は彼女の影の中に沈んでいる。
「これからどうしますか? 雹嵐さん」
「そうですね。ついでに初日の出でも見てから帰りますか」
 お父様とお母様に怒られないかしらと困るマリアに、雹嵐は笑う。その目はまるで可愛い妹を見ているかのようであった。
「レイクォートのお父さんとお母さんはマリアが少しお転婆をしたって、許してくれます」
 だって、マリアはあの二人にずっと遠慮してきたのだからと微笑みながら付け加えたその時であった。
『お前が天使か悪魔なんか、ワイは知らへん。とりあえず……ワイに潰されとけ』
 どこからか少年の怒鳴り声が聞こえた。マリアは声の主を探す為に周囲を見回していたが、雹嵐は上を見上げていている。
 雹嵐の視線を追って、マリアも一緒に上を見上げた。
 クラナガンの街頭にあるビルに埋め込まれた巨大スクリーン。そこに一人の少年が映っていた。
 紺色のジャージを着た少年は釘バットを前に向けて突き出し、歯を剥いた状態で不敵に笑う。
『かかって来いや。ボコボコにしたる』
 少年が笑いながら何かにそう言うのと、ほとんど同時。いきなり大型スクリーンの画面が変わる。
 そこに映っていたのは、背中に黒い翼が生えた少女。
 長い髪は漆のように黒く、顔には少し幼さの残っている。身体はほど良く成長しており、抱き締めると折れてしまうような華奢な感じがした。それらと一緒に大人しくて引っ込み思案のような雰囲気を持ち合わせていた。
 彼女が纏っているのは尼僧服に似た黒い服。まるで、喪服のようだった。
 雹嵐はスクリーンの少女に目を細め、マリアは顔を青ざめさせていた。
 そして、青ざめたマリアは震える声で名前を紡ぎ出す。
「……綺璃斗……シュトラッセ……さん……」
 ―――綺璃斗・シュトラッセ。
 それが『神よ。何故、私に重荷を課したマグダラ』の能力を身体に宿した先天性古代遺失物能力者インヒレント・ロストロギアの少女の名前であった。
 ビルの巨大スクリーンに視線を注いだまま、雹嵐は青ざめているマリアに訊ねた。
「……どうしますか? ご主人様ヴェトレウリィ
 マリアは深呼吸をする事で気分を落ち着けてから、自身の従者である雹嵐に命令オーダーを下した。
「―――行きます。護衛を頼みますね」
 胸に手を当てた雹嵐は片目を閉じながら答えた。
了解いたしましたヤーご主人様ヴェトレウリィ

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