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『Künftiges Erwartungsbild』十五話『眠れない二日間』(25)

『交換戯言日誌』と『戯言劇団』はARPの提供でお送りしています。

管理人一同は―――
 『魔法少女ろりこっとん プロジェクト』。通称『ろりこっとんプロ』
 『砲撃文庫』・『創刊砲撃マ王』
 『SSをノベルゲー化プロジェクト』
 それらの三つを力強くを応援しています。

おはようございます。雪奈・長月です。
凄く遅いですが……娘TYPEが出ましたね。
魔法戦記リリカルなのはForce……四期ですね。
しかし、私が喜びたいのは・・・そこではないです。
男性主人公解禁と言う事です。
ついに、『なのは』で男性主人公解禁ですね。
少し恥ずかしい話ですが……立ち読みにしていた本屋で……
「男性主人公解禁っ! これで勝てますっ!」
と素で叫んでしまいました。
既に絡みネタの幾つかは作ってあります。
私を舐めないで下さいねっ!
SS職人を舐めないで下さいねっ!
はやく、この事件だけでも終結させますよ~!

涼香様の時空管理局ラジオ進行中!
砲撃文庫より出版『涼香様が見てる』でちゃんと予習復習しましょう。
人生は狂気の沙汰ほど、めしかゆうまです。
ひとまず涼香様は自身の身体をご自愛ください。
そしてココに来る皆様も身体に気をつけて下さい。

過去の部分が読みたい方は『戯言劇団』へ。(改名しました)
ある種のカオス空間なのでご注意下さい。
基本的に『交換戯言日誌』で掲載した分の保存庫でありますが・・・・・・
とある方のSSも掲載してあります。
興味のある方は、『演目:梟戦記』にどうぞ。

他に何かありましたら、『幻想寓話』へ。
匿名でも構いません。ご自由にお使い下さい。
使う場合、スレッドは出来るだけまとめていただけるとありがたいです。





『Künftiges Erwartungsbild』 十五話『眠れない二日間』(25)

〈三時六分 【イタリアンレストラン『光の女神てんし』】〉

 やっと休憩を貰ったフェイトはふらつくような足取りで休憩室に辿り着いた。
 この時刻は局員の大体がホールか厨房に行っているらしく、ほとんど人がいなかった。
 いるとしたら背もたれの椅子に座りながら寝ているか、用意した栄養ドリンクを飲んでいる局員くらいであった。
 フェイトは近くにあったソファーにその身を横たわらせる。
 着ている服にしわがついてしまうという事は重々承知であったが、それすら気にならないくらい疲れ果てていた。
 ウェイトレスとしての仕事。あの合間に行うコンサート。
 そして―――時折、壊れる部下。レン・ジオレンスについて。
 考えないといけない事が一杯で、それらはフェイトの精神をすり減らしていた。
 深いため息をつきながら、ぼんやりと天井を見上げるフェイト。自身の身体はとても重く、まるで自分の物ではないかのように感じられた。
 見えるのは真っ白な光を放つ蛍光灯と、その光に引き寄せられた羽虫。
 蛍光灯の光を眺めていると、何かが刺さったかのように疲弊した目が痛んだ。
 腕で視界を多い、蛍光灯の光をさえぎるフェイト。視界を覆った瞬間、強い眠気に襲われた。
 視界がグルグルと回っているような錯覚を感じ、深き闇に引っ張られていく。
 今眠ったらまずいと思いながらも、フェイトの意識は闇の中に飲み込まれていった。



〈三時七分 幽霧〉

 クラナガンの駅前にたどり着いた幽霧たち。
 まだ夜中と言うのに、妙に家族連れやカップルが異様に多かった。
 子供たちは少し眠そうに瞼を擦っているが、親やカップルはまるで身体だけの大きい子どものように目をキラキラさせている。
 何でだろうかと熟考する幽霧であったが、しばらく間を空けてから今日が何の日か思い出す。今日は正月であった。
 きっと、初日の出を待っているのであろう。
 ちらりと街頭の時計に目を向けると、二つの針が三時七分を示していた。
 時計を見ながら幽霧は淡々と呟いた。
「もう、三時なのですね」
「初日の出が確か、五時二十三分ですから……後、二時間と言った所でしょうか」
 男物の黒いスーツに手を入れ、懐中時計を取り出した雫はのんびりと返す。
 星が見えない漆黒の空を見上げながら、幽霧はぼそりと呟いた。
「……先生とこんな風に過ごすのは久し振りですね」
 それはまるで遥か昔の事を思い返しているかのようであった。
 小さい頃は蜜月と呼べるくらい良いものであったが、今の生活はとても辛くて仕方ない。
 もし願いが叶うのであれば、幸せであった昔に帰りたい。
 空を見上げる幽霧の呟きは暗にそう言っているかのように見えた。
 雫は昔を懐かしむ様な幽霧の言葉にクスリと苦笑する。
 まるで壮大な夢を語る可愛い我が子を眺める母親のようであった。
「病院の屋上で一緒に星を見たのを忘れたのですか?」
「流石にアレは……例外でしょう」
 苦笑する雫の言葉に、顔を背けながら答える幽霧の顔は赤い。
 隣にいたアルフィトルテは幽霧のスカートを引っ張りながら、まるで珍しい物を見つけたかのように笑った。
「ママ~。かお、まっかぁ~♪」
「ふふ……そうですね」
 アルフィトルテの言葉で、雫も面白い物を見たかのように微笑んむ。それはおかしいのを必死に我慢する子供の様でもあった。
 否定する為に顔を戻した幽霧は子供っぽさを感じる雫の微笑みに見蕩れてしまう。
 しかし二人に笑われている事が恥ずかしい事には変わりないらしく、顔だけではなく耳まで赤くしている。
「それに―――」
 雫は顔からその子供っぽい笑みを消し、真剣な顔で恥ずかしそうにする幽霧を見る。その視線は幽霧の胸元に集中している。
 それはまるで、そこに重要な何かがあると分かっていると言っているかのように。
 じっと、その一点だけに視線を注ぎながら雫は幽霧に問いかけた。
「あの人に続くと誓ったのでしょう?」
「……ええ」
 幽霧は右手で胸元―――正確には首にかけているそれを服の上からぎゅっと握る。
 その顔にはさっきまであった羞恥の表情は既に消え、決意のような物が浮かんでいた。
 雫はそんな表情を浮かべる幽霧に満足げな笑みを浮かべる。
 何故かアルフィトルテも満足げに微笑んでいた。
 決意に似た表情を浮かべる幽霧と満足そうに微笑む二人の間に声が割り込む。
「……あれ? 幽霧と……雫さん?」
 三人は声のした方へと視線を向ける。
 視線の先にいたのは、陸士部隊捜査課所属の風切羽捜査員であった。
 羽は楽しそうに幽霧たちの方へ走ってきた。
「こんばんは」
 何故か嬉しそうに挨拶する羽。甚平に羽織を羽織った姿で、その胸元には花束が抱えられていた。
「ええ、こんばんは。風切捜査官」
 幽霧も社交礼儀として、目の前の局員へ挨拶を返す。
「こんばんは。風切羽捜査班」
「うにゅ……こんばん……は」
 雫はいつも通りに丁寧な口調で羽に挨拶を返す。
 しかしアルフィトルテは羽に人見知りをしているのか、雫の陰に隠れながら挨拶をする。
 三人を見ながら、羽は悪戯っぽい笑みを浮かべた。
 その笑みは陸士部隊捜査課の八神はやてと諜報部の雪奈・長月を彷彿とさせた。
 羽は目の前にいる幽霧と雫を茶化すような口調で訊ねる。
「……デートですか?」
「いえ……」
 頬に微かな朱を差した幽霧は羽の言葉を否定する。
 しかし雫は羽に微笑みながらこう返した。
「はい、デート中です」
 その予想外な一言に幽霧は〈アイギス〉を喰らったかのように硬直する。そして質問をした羽は驚きの余り、口から盛大に唾が霧のように噴き出された。
 盛大に噴き出された唾とその音には駅前にいた人の大体が反応した。
 言った本人はそんな反応を示されるとは思わなかったらしく、キョトンとしている。
 しばらくしてから停止していた思考が動き始めた幽霧は羽に訊ねた。
「風切捜査官はどちらへ?」
「ちょっと、セントマリナ霊園へ」
 苦笑いしながら羽は幽霧にそう答えた。
 抱えてられている百合の花束を見て、納得した雫は再び笑みを浮かべて言った。
「ああ、やっと覚悟を決めたのですね」
「……ええ、決心するのに時間が掛かりましたけど」
 その言葉で、幽霧は羽がセントマリナ霊園に行く理由が分かった。
 陸士部隊所属の捜査員、風切羽を『双連比翼キズナ』という二つ名で言わしめている二振りのデバイス。
 炎属性の魔法に特化された刀型デバイス『Heat by melodyヒート・バイ・メロディ』―――ヒメ。
 凍結属性の魔法に特化した剣型デバイス『Rule of heartルール・オブ・ハート』―――ハル。
 羽と共に死線を潜り抜け、陸士部隊捜査課だけではなく管理局内でも『双連比翼キズナ』の名を轟かせるまでになった今でも彼と共に歩み続ける相棒たち。
 しかし厳密には『ハル』だけが羽の専用デバイスであって、『ヒメ』は別の人の専用デバイスであった。
 本来の持ち主はソラという名前の女性で、今は亡きゼスト・グランガイツの保護観察対象であった。
 彼女は既に亡くなっており、羽の言うには―――「ソラの代わりに自分が死ねば良かった」らしい。
 羽は彼女の死が原因で自暴自棄になり、しばらくは無意識ではあるが死に場所を求めるようになっていたらしい。
 その中で今の陸士部隊捜査課の隊長である拾われ、彼女の私的な秘書官として『J・S事件』などの数多くの事件に関わり、捜査課でも表向きは捜査官として活動しながらも裏では、はやて専属の諜報員として仕事をしている。
 はやてに拾われてから色々とゴタゴタがあったからというのもあるが、羽自身もソラの死についてちゃんとした整理をつける事が出来ずにいた。
 そしてソラの死やはやての秘書官になってから数年後になって、やっと羽の中で整理をつけれるようになり―――
 今日こうして、今は亡き相棒であるソラの墓参りに初めて向かうのであった。
 ちょっと不謹慎ではあるのだが、前に進もうとする羽を祝福する気持ちを込めて、幽霧は淡々とした口調で言った。
「……おめでとうございます。風切羽捜査官」
「うん……ありがとう。幽霧」
 幽霧の気持ちが伝わったらしく、羽は目を潤ませながらも笑った。
 そして三人に涙を見せたくないらしく、街頭の時計を見上げる。
 既に時計の針は三時三十四分を示していた。どうやら少し話し込んでしまったようだ。
 羽は時計が示している時刻によって、少し慌て始める。
「あっ……そろそろ行きますね。八神部隊長には、四時半には戻ると言っているので」
「そうですか。いってらっしゃいませ」
 幽霧はそう言って、まるで執事か何かであるかのように羽に軽く黙礼する。
 ほんの一瞬だけ驚いたような顔をしたが、その真意に気づいた羽は微笑んだ。
「……行ってきます」
 そう言って、百合の花束を携えた羽はセントマリナ霊園へと歩いて行った。
 しばらく羽の背中を見送っていた三人。
 羽の姿が人込みに紛れて見えなくなった頃に、視線を外した雫は二人に言った。
「さて、私たちも行きましょうか」
「はい。雫先生」
 そして幽霧たちもその場から離れ、周囲の散策を開始する。



「……ん?」
 それは日の出を待つ為に起きている人たちを狙って、特別営業を行っている飲食店エリアを歩いている時であった。
 幽霧の目がとある喫茶店の店先に目が留まる。
 緑と赤のチェック柄の軒にはノスタルディアと書かれた看板が掛けられ、壁は下半分がれんが造りで、上半分が古木を思わせるようなこげ茶色の塗装がなされている。
 壁には蔦草が巻き付いており、少し古びた洋館のような店という印象を抱かせるような感じであった。
 しかし幽霧が見ているのは、そこのテラスに座っている二人組みであった。
 一人は黒いスーツの上に茶色いコートを羽織り、背中の半ばまで伸びた黒髪を一つにまとめている男性。
 その向かいにいるもう一人は白と黒を基調としたメイド服を着た女性。
 女性の方には見覚えが全くなかったが、のんびりと紅茶を啜っている男性が誰なのか知っていた幽霧は『ノスタルディア』のテラスへと歩いて行き、無表情で淡々とした声でその名を呼んだ。
「夜神捜査班」
「ケーキを頼んだのですが、私と一緒にお茶でもどうですか?」
 夜神と呼ばれた男は紅茶のカップを揺らしながら笑う。
 三人はノスタルディアのテラスへ向かい、近くにあった椅子を持って来て座る。
 そして呼び出した店員に紅茶とオレンジジュースを注文し、幽霧は夜神に訊ねた。
「何故、夜神捜査班がここに?」
 休憩時間なのですか。それともデート中ですかと付け加える幽霧に、夜神はカップを持ったままクスリと笑う。
「ちょっと、依頼でね……待ち合わせをしているんです」
「護衛任務でしたか……珍しいですね。そういう類いは時空管理局第21特殊編隊の領分だと思ってましたので」
 要人の護衛任務などの仕事は時空管理局第21特殊編隊。通称『ナイツ』が行っている事が多く、諜報部は様々な情報の入手と管理を行うのが主な仕事だ。
 だから、同じ諜報部の夜神が護衛任務をしていた事に幽霧は微かに眉を動かして驚いてしまった。
 夜神は紅茶を啜りながら、驚く幽霧に微笑する。
「長月部隊長が広報部の人から受けた依頼だったのですが、ちょっと用事の関係で私がする事になったんです」
 まあ…部隊長もやる事はキチンとやったようですがと楽しげに笑う夜神。
 その言葉には幽霧たちも同意するしかなかった。
 女性の着ているメイド服は明らかに、雪奈が依頼人を仰天させるために着せたのであろう。
 管理局の局員ですら仮装しているのだから開き直っていると言うのもあるかもしれないが、メイド服着用に恥ずかしがる様子もなく、普通に紅茶を飲んでいる女性の姿は妙に気品があるように感じられた。
 夜神は思い出したかのように、幽霧たちを女性に紹介する。
「黒い髪の女性が、開発部所属の雫・鏡月さん。そして茶髪なのが私と同じ部署の幽霧霞で、紅い髪の小さい子は幽霧のパートナーをしているアルフィトルテちゃんです」
「始めまして、透子です。彼氏が……知っているかな? 広報部所属のセイロンという局員なんだけど…」
「ええ、セイロンさんの事は知ってますよ」
 店員が持ってきた紅茶で軽く唇を濡らした幽霧は透子に答えた。
 まさか幽霧がセイロンの事を知っているとは思わなかったのか、透子の顔には驚きが浮かんでいる。
 それも当然と言ったら、当然の話であるのかもしれない。
 セイロンは主に涼香付の秘書官であるような立場の為、表舞台の方に出てくるような事がなかなかないからだ。
 しかし幽霧は合同演習後の怪我で涼香など広報部局員と関わる機会があった為、セイロンの事も知っていた。
「お~いっ!」
「……来たようですね」
 遠くから青年らしき声が聞こえ、夜神はコトリとカップを置く。
 テラスにやってきた青年に幽霧は淡々とした口調で挨拶をする。
「こんばんは。セイロン一等陸士」
「幽霧さん。今夜はメイド服ですか。いつも大変……で…」
 メイド服姿の幽霧から透子に視線を移したセイロンは硬直する。そして、次の瞬間には鼻を押さえ始めた。
 少し経ってから、セイロンの押さえた手の間から紅い物が流れ始める。
 明らかにそれは鼻血と呼ばれるものであった。
 鼻血で真っ赤に染まった手で鼻を押さえながら、顔を背けたセイロンはもごもごと呻く。
「…畜生……あの…腹黒部隊長……透子にメイド服着せやがって…この可愛さは……卑怯……じゃないか……」
 指の間から流れ出た血がポタポタとテラスに落ち、真っ赤なシミをつくり出す。
 流石にテラスを真っ赤に染めるわけに行かないと思った幽霧は無言でセイロンにウェットティッシュを差し出した。
 セイロンはまずそれで手を拭いてから紅いシミをぬぐい、渡された普通のティッシュを鼻につめた。
 ひとまず落ち着いた所で、近くの席から持って着た椅子に座ったセイロンはのんびりと茶を飲む夜神を見ながら言った。
「……で、そこで茶を啜ってんのは誰なんだ?」
 夜神を見るセイロンは微妙にドスをきかせているが、血のにじんだティッシュを鼻に突っ込んだ状態で言うとシュールでしかなかった。
 そっとテーブルにカップを置いた夜神はセイロンの放つ気迫に動じる事無く、のんびりと自己紹介する。
「諜報部所属。夜神です。担当は潜入捜査です。デバイスはミラージュコート。コードネームは『無猊劇団ノウフェイス』。ポジションはオールラウンドです」
 動じる事無く普通に自己紹介をしてきた夜神にセイロンは毒を抜かれたような顔をしたがすぐに気を取り直し、自らも自己紹介をして返した。
「広報部所属のセイロンだ。階級は一等陸士。ポジションは近接戦闘。コールサインはウィザード03」
 セイロンは自己紹介をしつつも、その手は腰につけている刀の方へと動いている。
 少し間を置いてから、セイロンは殺気混じりの目で夜神を睨みつけながら訊ねる。
「てめぇ…俺の恋人に手ぇ出してねぇよな……?」
 それを言ったのが先か、刀を抜いたのが先なのか分からないが、夜神の喉にその切っ先が突きつけられていた。
 しかし夜神も何もしなかったと言うわけではない。
 喉に切っ先を向けられても動じる事無く、右手の手の平を開いた状態で小さく「フェイクブレイド」を呟く。
 すると右手に野太刀が出現し、その刃がセイロンの首に当てられる。まるで動いたらその刃を引いてやると言っているかのように。
 その野立ちは刃が真っ白で、それ以外は全てが真っ黒な野太刀であった。
 セイロンに刀の切っ先を向けられ、野太刀を彼の首に当てながら夜神は言った。
「そんな事するわけ、ないじゃないですか。もしそんな事があったら…セイロンさんの愛情表現不足です」
 夜神の言葉が気に障ったのであろう。夜神の喉と切っ先の距離をギリギリにまで近づけさせるセイロン。
 諜報部の仕事柄、このような状態に慣れている夜神は表情一つ変えない。
 いつでも相手を突き殺せるように切っ先を向けながら睨みつけるセイロンと、口元に笑みを向けながらその視線に宿った殺気を受け流す夜神。
 ある意味で緊迫した空気の中、口を開いたのは―――セイロンの恋人である透子であった。
「セイロン……貴方、夜神さんに妬いているの?」
 その言葉に、セイロンは赤面しつつも盛大に噴き出した。
 霧状の唾を顔面に受けた夜神は不機嫌な顔をしつつも、そのままの状態を保ち続ける。
「俺がこいつに妬いているだって? そんなバカな……」
 言葉に反して、セイロンは夜神に向けた刀の切っ先が震えて見えるくらい動揺していた。
 そんな彼氏に透子は苦笑しつつも、更にセイロンを追及する。
「じゃあ、なんで夜神さんに刀を向けながら私に手を出したとか聞くのかしら? そんなに私を信用できない?」
「……くっ…」
 返す言葉がないのだろう。セイロンは悔しげな声を出す。
 幽霧たちは飲み物を飲みながら夜神たちを観察していたのだが、修羅場のような空気に見物人が寄って来た所で口を開いた。
「修羅場をするのは大いに結構ですが、お店に迷惑が掛かりますので……双方、得物を納めて貰えませんか?」
 そう言った幽霧の右手には拳銃型のアルフィトルテが握られ、左手には灰色がかった魔法陣が展開されている。
 いつでも魔法が発動できる状態で言った幽霧の言葉は口調がお願いでありながらも、実質的にそれは命令であった。
 流石に幽霧の魔法を喰らいたくないらしく、セイロンと夜神はそれぞれの武器を納めた。
 二人が大人しく武器を納めた事に安心する幽霧は、夜神たちに訊ねた。
「この後、皆様はどうするのですか?」
「ん~。私は護衛任務と言う名目で休憩を貰っていただけなので……すぐに『至高の遺産Oberste Erbe』へ戻らないといけないね。
 諜報部だからって、こき使って来るんですよね……嗚呼、面倒だ……」
 夜神はそう言いながら深いため息をついた。
 例え任務が終わっても仕事が山積みな夜神に同情しつつも、セイロンは幽霧の問いに答えた。
「俺たちは『光の女神てんし』かな」
 確か、次元航行部隊が出店してみるお店の名前が『光の女神てんし』であったはずだ。
 雫は小さな声で囁くように幽霧に聞いた。
「じゃあ、幽霧。私たちも一緒に行きますか?」
「……ええ」
 幽霧から返された言葉は珍しく歯切れが悪い。
 何故ならば、『光の女神てんし』にはあの局員がいるからだ。
 レン・ジオレンス。怪我で入院した時に同じ部屋であった局員だ。
 色々とあって、今は彼女と仲がよろしくない。
 下手すれば入院していたと同じように襲われる危険性があった。
 しかし雫の言葉を断れない幽霧は頷くしかなかった。
「じゃあ、行きましょうか」
「はい」


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Author:雪奈
「交換戯言日誌」を見に来て下さってありがとうございます。
終焉の引き金を引くのは貴方。
物語の続きを作るのもまた……
読んでいる貴方なのです。






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