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魔法少女リリカルなのはギャルゲーテイストSS『Künftiges Erwartungsbild』 十五話『眠れない二日間』(24)

『交換戯言日誌』と『戯言劇団』はARPの提供でお送りしています。
管理人一同は―――
 『魔法少女ろりこっとん プロジェクト』。通称『ろりこっとんプロ』
 『砲撃文庫』・『創刊砲撃マ王』
 『SSをノベルゲー化プロジェクト』
 それらの三つを力強くを応援しています。

おはようございます。雪奈・長月です。
今日は日曜日。夜神亭 の夜神様が誕生日を迎えるそうです。
おめでとう御座います。また一つ、大きくなったのですね。

涼香様も数日前は誕生日だったのですね。
お誕生日おめでとう御座います。
私はプレゼントを用意できていないので、挨拶に代えさせていただきます。

涼香様の時空管理局ラジオ進行中!
砲撃文庫より出版『涼香様が見てる』でちゃんと予習復習しましょう。
人生は狂気の沙汰ほど、めしかゆうまです。
ひとまず涼香様は自身の身体をご自愛ください。
そしてココに来る皆様も身体に気をつけて下さい。

過去の部分が読みたい方は『戯言劇団』へ。(改名しました)
ある種のカオス空間なのでご注意下さい。
基本的に『交換戯言日誌』で掲載した分の保存庫でありますが・・・・・・
とある方のSSも掲載してあります。
興味のある方は、『演目:梟戦記』にどうぞ。

他に何かありましたら、『幻想寓話』へ。
匿名でも構いません。ご自由にお使い下さい。
使う場合、スレッドは出来るだけまとめていただけるとありがたいです。





『Künftiges Erwartungsbild』 十五話『眠れない二日間』(24)

〈二時三十分 幽霧〉

「あんな風に言って良かったのですか?」
「……何がですか?」
 【アイス『ゼ-ゲンヴィント』】から出た幽霧たち。
 話し掛けられた雫は幽霧の言葉に首を傾げながらも反応する。
 幽霧は言う事を少し躊躇っているかのような口調で言った。
「アルフィトルテやアイン秘書官たちの身体にそんな物があるといって」
 きっと、『核兵器より綺麗で、AMFよりたちが悪い兵器』が内蔵されていると言った事を指しているのであろう。
 その言葉に雫は軽く息を吐き出し、口元に微かな笑みを浮かべる。
 まさかそんな反応をするとは予想もしていなかった幽霧は少しだけ驚くような表情を浮かべる。
 少し驚いている幽霧の顔を見て、クスリと笑った雫は言った。
「今はまだ彼女に『心臓』が使いこなせるとは思えませんから」
 その意見には幽霧も納得をしざるを得なかった。
 自身の相棒であり、デバイスであるアルフィトルテに何かが埋め込まれているのは定期健診時にアインから聞いたから知っている。
 彼女によると、人型を保つには魔力を必要とする為にその身体には特殊な機構が搭載されているらしい。
 その特殊な機構には物質を魔力に変換する効果があり、その魔力によってアルフィトルテやアインたちは稼動しているのだと言う。
 数分前に聞いた雫の話によると、使い方によっては核兵器よりクリーンでAMFよりたちが悪い兵器と化す。
 幽霧がアルフィトルテに搭載された『特殊機構』で知っているのはそこまでだ。
 ナタネや雫が『心臓』と呼んだ機構にある本当の名称やその形状と言ったものは全く知らなかった。
「それに……」
 何か思う所があるらしく、雫は軽く上を見ながら目を細める。
 幽霧から見たその綺麗な横顔は憂いみたいな物が感じられ、少し寂しげにも思われた。
 そしてさっきの言葉に付け加えをするかのようにのんびりと呟いた。
「……『アレ』は彼女の願いを叶える力も無いですしね」
「アルフィトルテに搭載されているのは……一体、何なのですか?」
 じっと雫の顔を見ながら、そう訊ねる幽霧。
 家族同然である雪奈と雫が作った物なのだから、幽霧にも少なからず興味はあった。
「ある意味で……『賢者の石』みたいな物かな?」
 じっと見つめてくる幽霧にそう言って、雫は悪戯っぽく笑った。
 その笑顔はまるで無邪気な子供でありながらも、なにやら悪戯を考えているようでもあった。
 まるで諜報部の部隊長。雪奈・長月一等陸差を彷彿とさせるような―――そんな笑み。
 不用意に触れてはいけないような神々しいまでの透明さを感じさせる美しさを持つ雫がそんな悪戯っぽい笑顔を浮かべるとは、思わなかった幽霧は思わず赤面してしまう。
「ふふふっ……」
 笑顔で幽霧の話をはぐらかせた雫は鼻歌を歌いながら楽しげに歩き始めた。



〈二時四十三分 屋台群『冬天市場』〉

 陸士部隊の局員が屋台を出店している一角。
「先輩っ! 焼きそば三つです」
「あいよぉ……」
 ヴァイスとアルトは汗だくになりながら、焼きそばを売りさばいていた。
「ふい~。何で、こんな時間なのに人が多いんだ……」
 両手でこてを操りながら愚痴を漏らすヴァイス。
 ずっと鉄板の前にいたのだろう。顔はすでに汗だくだ。
「仕方ないですよ。お詣り後は初日の出を拝むコースの人が多いんですから」
 アルトは周囲を見回しながらそう言った。
 周りには近くの席に座って、屋台で買った物を食べている物が大勢いた。
 中にはお酒を飲んでいる人もおり、熱気で蒸し暑い。
「ビールを飲んでる奴が羨ましいよ……ったく」
 ぼやきながらもヴァイスは焼きそばを売りさばいていく。
 それをあるとはせっせと発泡スチロールの容器に乗せていった。
「お兄ちゃん」
「あん? 誰だかしらんけど、用なら後にしてくれ」
 いきなり背中に掛けられた声をヴァイスは適当にあしらう。
 どうやら、背後にいるのが誰なのか全く気づいていないようだ。
 背後にいる者は腰に手を入れ、自動式拳銃を引き抜いた。
 そしてその拳銃の銃口をヴァイスの背中に押し付け、引き金に指をかけた状態で小さい声で言った。
「……おにいちゃん」
 引き金に力を入れられていき、銃口から弾が撃ち出されようとした時。
 ヴァイスは両手にヘラを持った状態で腕を上げた。
「分かった。俺が悪かった。だから、その物騒な物を下ろせ……ラグナ」
 ラグナと呼ばれた少女はヴァイスの背中に押し付けた自動拳銃を腰に仕舞いなおす。
 深いため息をつきながら上げていた腕を下ろし、ヴァイスは再び焼きそばを炒め始めた。
 近くにあったヘラを取ったラグナはヴァイスの隣で一緒に焼きそばの麺を炒め始める。
 焼きぞばを容器に乗せていたアルトはラグナのよどみない手つきに感嘆する。
「流石、ラグナちゃん。手つきは先輩顔負けだね」 
「やれやれ……俺の妹はいつの間に物騒になったんだか……」
 両手に握った二つのコテを捌きながら嘆くヴァイス。
 どうやら、いきなり腰に拳銃を突きつけた事を嘆いているようだ。
 きっとヴァイスの中ではラグナは、か弱い妹と言う事らしい。
 その言葉に対し、コテを華麗に捌きながらラグナは苦笑する。
「お兄ちゃんが不甲斐ないからだよ」
「ぐっ……」
 流石にそれを言われると何も言えないらしく、ヴァイスは歯噛みするしかない。
 ラグナの眼帯も原因がヴァイスの不手際にあるし、自身の家に帰って来る事も割と少ない。
 理由は他にも色々と存在するのだが、可愛い妹にそれらを持ち出されるとヴァイスはどうしようもないと言う事だ。
 鉄板の焼きそばを容器に盛りながら二人のじゃれあいを盗み見たアルトは口元に笑みを浮かべる。
 その光景はまるで、不甲斐ない兄としっかりとした妹の典型的なものであった。
 二人に微笑ましさを感じると同時に、アルトは久し振りに家族に会いたいなと思った。
 しばらくすると人の波も落ち着いていき、ヴァイスたちにも少し余裕が出来てきた。
 焼きそばを作りつつ、屋台から見える人たちを見ながらヴァイスは隣のラグナに訊ねた。
「なぁ、ラグナ」
「……何? お兄ちゃん」
 いつ大勢の客が来ても良いように焼きそばを作りながら、ラグナは反応する。
「お前……武装局員になるつもりなのか?」
 そこでよどみなくヘラをさばいていたラグナの手が止まった。
 ソースがこげて、妙に焦げ臭い匂いが屋台の中に充満する。
 きっとヴァイスは既に気づいていたのであろう。
 自身の妹が管理局の武装局員になる為に自作でデバイスを組み、その勉強を始めている事を。
 手を止めたラグナに、ヴァイスは諭すように言った。
「生半可な気持ちで目指すと……眼球だけじゃすまないぞ」
 武装局員となるという事は、殺すか殺されるかの状況に一度は立ち会わないといけないという事だ。
 そこで躊躇すれば更なる悲劇を迎える事となりかねない。
 現にヴァイスは撃つ事に躊躇している状態で撃った事によって―――ラグナは片目を失明した。
 下手したら、ラグナが赤の他人にしないと限らない。
 兄として、ヴァイスは妹に自身と同じ気持ちを味わせたくなかった。
 しばらく無言を貫いていたラグナであったが、ゆっくりと口を開く。
「私ね。まだ、お父さんたちに言われているの。「お前は可哀想な子だ」って……ね」
 その言葉にヴァイスの顔が強張ってしまった。
 自身の妹を撃ってしまった後、ヴァイスは家族にまで罵られていた。
 ラグナは仲直りが出来たとはいえ、トラウマはまだ残っている。
 今でも時折、その時の事がフラッシュバックしてきては手が震えてしまう。
 硬直するヴァイスの脇で再びコテを持っている両手を動かし、ラグナは焼きそばを焼き始めた。
 手を動かしながら隻眼の少女は硬直が抜けない自身の兄に言った。
「お兄ちゃん……私は片目しか見えない可哀相な子じゃなくて、誰かのために何かできる人になりたいの」
 断言するかのようなラグナの強い言葉にヴァイスは息を呑んだ。
 今までか弱いイメージしかなかった妹が自身の思いを強く表現するとは思わなかったからだ。
 身体を振るわせるヴァイスの隣でラグナの言葉は続く。
「幽霧さんの銃でお兄さんを狙撃した時、私は思ったの……こんな私にも、出来る事があったんだって」
 そう言って、ラグナは苦笑する。きっと自身を撃った兄を撃った事で自身の才能を知る事になるとは思わなかったのであろう。
「誰かに護られている事しか出来ない存在じゃなくて、私も誰かの為に何かできるんだって」
 自分自身の手を見つめながら呟くようにラグナは言った。
「人を助ける為なら私自身が泥や血を被る事になっても良いの」
 そう言ってラグナはヘラを持ったその手に力を入れる。
 固く握られ過ぎたその拳は白く血色を失い、小刻みに震え始めた。
 力を入れられたその手はとても、とても―――小さかった。
「だから、死んじゃうとしても…誰かの為に死ねるなら……本望だよ」
 ラグナの口から紡がれたその言葉は宣言であった。
 自身の言葉によって心を縛り、自分自身の全てを縛り付ける。
 身体も、魂も、細胞の一片さえも、例外さえなく全てを自らの掲げる誓いで染め上げる。
 それを叶える過程の中には憤りもなければ、悲しみと言う物も存在しない。
 自身の肉も、心も、自らの存在とその誓約を証明する為の礎でしかない。
 誓いによって自身を縛る―――そういうものであった。
 ヴァイスを睨みつけながら、ラグナは言った。
「お兄ちゃんやお父さんたちが止めても無駄だからね。私は狙撃手になるって、決めたんだから」
 妹の真摯な瞳をじっと見つめるヴァイス。ラグナは兄の目を精一杯に睨み続ける。
 それがどのくらい続いただろうか。先に視線を外したのは、ヴァイスの方であった。
 手に持ったヘラの後ろで後頭部をバリバリと掻きながら笑う。
「……ったくっ! 一丁前になりやがって。俺は止めねぇよ」
 その笑みはまるで兄として、ラグナの成長を喜んでいるかのようであった。
 いきなり笑い始めたヴァイスに、ラグナはきょとんとした顔をする。
 楽しそうにニヤニヤと笑うヴァイスは片手で妹の頭をガシガシと撫でた。
 兄によって髪をぐしゃぐしゃにされるラグナは呆然とする。
「ただし、困ったら……俺か…幽霧に言えよ。俺も幽霧も力になってやる」
「……幽霧さん?」
「馬鹿。霞で良いんだよ。あいつはお前と同じ年齢なんだからさ」
 ヴァイスはそう良いながら焼きそばを炒め始める。
 その脇でラグナは頬を朱に染め、隣に兄に聞こえないように小さな声で呟いた。
「……かすみ…くん……」



〈三時五分 月城天音〉

 【居酒屋「苺壱枝」】の店長である月城天音は買い物袋をぶら下げながら歩いていた。
 普通、店に出す料理を作る為の買出しとすれば女性一人が持てる量だけでは絶対に足りないであろう。
 しかし彼女にはカリスマという物があった。彼女には心酔して無条件で付き従う者達がおり、大体の荷物はその人たちに任せていた。
 だから彼女は非公開にしなければならない物―――料理の隠し味になる材料を買う程度でいいのだ。
 彼女はカリスマ性が故に一部の知り合いから『閣下』という異名で呼ばれていた。
 だが、彼女が『閣下』と呼ばれている本当の理由を知るものは―――少ない。
 天音は次に何処で何を買おうかとのんびりと考えながら歩く。
 その頭に浮かぶのは久し振りに会う仲間や知り合いの笑顔。
「……ふふっ♪」
 喜ぶ顔を創造して嬉しくなったのであろう、歩きながら含み笑いを漏らす彼女の顔には笑みが浮かんでいた。
 しかしその顔も一瞬にして、険しいものへと変わる。
 何故ならば、不意に天音は懐かしさを感じたからだ。
 同時に、彼女は昔の頃に感じた気配とその時の感覚を思い出した。
 そう―――まるで、出会うのが稀有な事である同族と出会った時と同じ様な。
 目を細めながら周囲を見る天音。そして、培われた勘とその身体に宿る本能で見つけた。
 漆を塗ったかのように黒くて長い髪。まるで喪服の様な黒い服。
 そして、妙に息苦しい空気。呼吸するたびに喉や頭が痛くなる。
 まるで身体が不調を訴えた時に感じる寒気に似た感覚。
 なんとなく、天音はその少女についていってみる。
 しばらく人込みの中を歩いていた少女はいきなり路地裏へと入っていく。
 天音も怪しげな気配を放つ少女の背中を無言で追いかける。
 しばらく歩いただろうか。そこでやっと少女はついて来たあめのほうへと振り向く。
 少女が立ち止まったところで一緒に足を止めた天音を見るその顔には怪しげな笑顔が浮かんでいた。
 ゆっくりと周囲の闇が少女の背後で何かの形を取っていく。
 最初は霧か靄のように曖昧な物であったが、徐々に金属のような光沢を帯びていく。
 そして遂には少女の背後に騎士の上半身が生み出される。
 しかし、それを騎士と形容するにはおかしかったかもしれない。
 騎士の甲冑と形容するには禍々しすぎるからだ。そして、隙間から禍々しい殺気と黒い靄を噴き上げている。
 どうやら逆に天音の方が少女に誘導されてしまったらしい。
 騎士は黒い靄から鎚を作り出し、天音にたたきつけようと振り上げる。
 天音ならばこのような状況に遭遇したら、怯えでその場から動けなくなるだろうと思われた。
 しかし天音は笑った。それも誰かを和ませるような笑顔ではなかった。
 肉食獣の様に歯を剥いて笑っていた。まるで獰猛な野獣のような殺意に満ちてた。
 買い物袋を下ろし、笑みを浮かべながら天音はコートの裏ポケットから何か取り出した。
 出て来た物は真っ白な手袋。天音はその手袋をゆっくりとはめる。
 はめると同時に天音がその身に宿す先天性古代遺失物能力インヒレント・ロストロギア『白の魔女』が発動され、一部の人から『閣下』と呼ばれている所以と言える面が姿を現す。
 ニヤリと笑いながら天音は少女の従えている騎士に言った。
「来なさい愚民。無様に跪かせてあげる」
 足元から魔法陣らしき物が展開され、その描かれた線から白い炎が吹き出す。
 その白き炎は天音の身体に絡みつき、肌に炎をかたどった紋様を浮かび上がらせる。
 天音の挑発に反応した騎士は鎚を叩きつけようと振り下ろす。
 それに対して天音は腰を軽く沈め、腰を捻りながら握り締めた拳を迫り来る騎士の鎚に打ち込んだ。
 拳を叩き込まれた鎚に亀裂らしき物が入り、地響きのような轟音を立てて砕け散った。
 砕け散った鎚は白い光となり、天音の腕に浮かぶ紋様に吸い込まれる。
 天音はそこで止まることなく、右腕に白い炎を渦状に纏わせた状態で更に迫撃する。
 轟音がするくらい強く地を踏み込み、距離を詰めた騎士に突きを叩き込む。
 騎士は両手を組んで防御するが、その突きで装甲がひしゃげる。
 装甲がひしゃげると同時に天音の右腕に巻き付いていた炎が騎士を焼き尽くす。
 ここに第三者がいたならば、その光景を驚くに違いない。
 何故なら巨大な騎士が二回りも小さい天音の突きで霧散されてしまったのだから。
 天音は着地と同時に地を踏み込み、騎士に肉薄する。
「ヴァイス………」
 右拳を後ろへ引くと同時に『白の魔女』の能力を発動し、鎧に叩き込む。
「ファウスト!!」
 大量の熱量を孕む光を纏った右拳が騎士の鎧を溶かし尽くす。
 鎧を溶かされた事によって、少女が姿をあらわした。
 残りの靄を集め、騎士の片腕を創り出した少女は攻撃に転化。
 精製した腕を振り上げ、壁を壊しながら天音に叩き付ける。
 しかし天音は迫り来る巨大な拳を上下から手で挟みこみ、そのまま一気に回した。
 回転と共に強風が巻き起こり、ベキベキと音を立てながら騎士の腕が捻じ曲がる。
「―――月城流拳技『渦潮』」
 騎士の腕は捻じ曲がる所で止まらず、ねじ切れた上に砕け散った装甲が周囲に撒き散らされる。
 しかし天音はそこで躊躇などせずに少女に更に接近。
 迎撃する為に少女は霧散した黒い靄を集め、細長い槍を天音に向かって射出する。
 飛んでくる何本もの槍を両腕で捌きながらも天音は少女の方へ接近していく。
「―――月城流拳技『細波』」
 踏み込んだ天音の脚がアスファルトの地面を雷鳴のように打ち鳴らす。
 同時に繰り出された掌底が少女の胸板を直撃する。その破壊力は胸元で手榴弾が炸裂したかの如き威力。
 吹き飛ばされた少女の身体は宙を舞い、勢いよく地面に叩きつけられる。受身など取る事も出来なかった。
 しかし元々能力が暴走している為に少女の意識が在る無しに関係なく能力が勝手に発動。
 空間内にある靄が集束して、漆黒の巨大な円環と珠を形作る。
 円環は急速に回転し、中心の珠は回転しながら円錐へと変化し始めた。
「まだ足掻くのですか。この愚民が」
 攻撃の意思を感じた吐き捨てる天音。
 円錐は回転しながら発光し、回転する円環から撃ちだされる。
 これはまさしく、アサギとアキが使っていた〈抉り穿ち抜く神威ストレイトディヴァインド〉であった。
 その一撃は空気摩擦で白銀の閃光に変わる。その解き放たれた一閃は空気を押し出し、発射時に立ち込める粉塵すら吹き飛ばす。
 天音は足幅を大幅に開き、腰を沈めながら捻る。
「白葬」
 握った拳に『白の魔女』の能力を集中させ、円錐を突くと同時に解き放つ。
 大量の熱量を孕んだ白い閃光が円錐と少女を飲み込む。
 光が消えた時、そこには少女の姿はなかった。
「逃げましたか」
 そう言いながら、天音は能力を解除する。
「さて。そろそろ買う物を買って帰らないと」
 天音は手袋を外してコートの裏ポケットに納め、買い物袋を拾い上げて歩き出した。
 


〈三時五分 広報部〉

「涼香先輩」
 流石に企画の名前が「時空管理局四十八時間ラジオ」とはいえ、四十八時間も喋ってはいられない。
 涼香たちは収録スタジオの中でのんびりと休憩をしていた。
 機材の廃棄熱や発声する時に出てくる熱で、スタジオの中だけは暖房が要らないくらい暖かかった。
「そろそろ、甘ったるくなってきましたね……」
 自身で作ったお汁粉を啜りながらのんびりと呟く涼香。
 そんな涼香に一人の男性局員が声をかける。
「涼香先輩」
「んっ……? あぁ、セイロンさん。どうしたのですか?」
 セイロンと呼ばれた男性局員は軽く礼をしてから、涼香に言った。
「数分前に、戦技教導隊のステイ・クラウゼヴィッツ戦略分析官から連絡がありました」
「ありがとうございます」
 涼香はステイに念話を接続する。
「こちら、ウィザード00です……レギオン00。何か御用ですか?」
[それを聞くのは久し振りですね。涼香さん]
 念話の相手―――戦技教導隊のステイ・クラウゼヴィッツ戦略分析官はすぐに涼香からの連絡に反応した。
 ステイの言葉に、何かを思い出した涼香はクスリと含み笑いする。
「ええ、とても久し振りですね。元時空管理局遊撃隊部隊長ステイ・クラウゼヴィッツ―――『単身劇団レギオン』00」
[そうですね……元遊撃隊部隊長補佐涼香。通称『妖精遣いウィザード』]
 過去の栄光を表すような二つ名を呼び合った二人はしばらく何も言わなくなる。
 セイロンはいきなり黙ってしまった涼香を訝しげに見る。
 そしていきなり、涼香はニヤリと悪戯っぽい笑みを浮かべた。
「……で、用は何ですか? 隊長」
 涼香の口調はまるで、ステイの言われた事なら何でもしようと言っているかのようであった。
 何か思う所があったのか、その言葉に対してステイはクスリと笑う。
[放送中に警戒態勢を敷くように注意を促して下さい]
「了解しました。『単身劇団レギオン』00」
 話はこれで終わりなのだろうと思って、ステイとの念話を切断しようとする涼香。
 しかしそこで何かを思い出したようにステイがそれを止めた。
[それと……涼香さん]
「ん? 何ですか。ステイさん」
 涼香はステイが言葉を伝えてくるのをじっと待つ。
 何か躊躇いがあるのであろう。少し間を置いてから、ステイは涼香に言った。
[しばらくしたら……そうですね。あの事件と同じ日に呑みませんか?]
 相手の口から出た『あの事件』というキーワードの意味を知っている涼香は安易に頷く事は出来なかった。
 彼にとって、その事件は運命すら変えてしまうような出来事であったからだ。
 その事件には涼香にも浅からず関係があり、管理局だけでもそれの影響で何かが変わってしまった人が大勢いる。
 だからその申し出に対して、涼香が答えを出す為に数分の時間を必要とした。
 熟慮したその時間はほんの数分であった。しかし、涼香にとってはとても長く感じた。
 間を置いてから涼香は肯定の意をステイに伝える。
「……分かりました」
[じゃあ、お願いします]
 そこで涼香はステイとの念話を切断し、ずっと待機していたセイロンの方を見る。
 知らせてくれたセイロンにも礼を言わないといけないと思った涼香は微笑みながら言った。
「セイロンさんもちゃんと知らせてくれてありがとう御座います」
 涼香の言葉に対して、軽く頭を上げるセイロン。
 まるでこんな事など感謝されるいわれが無いと言っているかのようであった。
「それでは、自分は……これで」
 スタジオから出て行こうとするセイロンを向かって、涼香は声をかけた。
 自身の部下である者たちのスケジュールは大体を把握しているから、セイロンが休憩の時間であるのは分かっていた。
 しかしいつも真面目なセイロンが休憩時間をどう使うかは興味があった。
「セイロンさん。何か用事でも?」
 質問に対してセイロンはええ、と少し嬉しそうに答えた。
「恋人を迎えにです。透子も、女の子なので」
 涼香はその言葉によってセイロンがどのくらい、その彼女を大切にしているかが分かったような気がした。
 だから、涼香はセイロンを応援するような気持ちで再び声をかける。
「いってらっしゃいませ」
「……いってきます」
 背中に掛けられた涼香の応援に少し照れくさそうにしながら、セイロンは広報部の放送スタジオを後にした。


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Author:雪奈
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