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魔法少女リリカルなのはギャルゲーテイストSS『Künftiges Erwartungsbild』 十五話『眠れない二日間』(23)

『交換戯言日誌』と『戯言劇団』はARPの提供でお送りしています。
管理人一同は―――
 『魔法少女ろりこっとん プロジェクト』。通称『ろりこっとんプロ』
 『砲撃文庫』・『創刊砲撃マ王』
 『SSをノベルゲー化プロジェクト』
 それらの三つを力強くを応援しています。

おはようございます。雪奈・長月です。
無事、時空管理局通信のCDが届きました。
わっしょい、わっしょい、どっこらセイン(棒読み)
今日は日曜日。
今も、涼香様の時空管理局ラジオ進行中!
砲撃文庫より出版『涼香様が見てる』で復習しましょう。
人生は狂気の沙汰ほど、めしかゆうまです。
ひとまず涼香様は自身の身体をご自愛ください。
そしてココに来る皆様も身体に気をつけて下さい。

過去の部分が読みたい方は『戯言劇団』へ。(改名しました)
ある種のカオス空間なのでご注意下さい。
基本的に『交換戯言日誌』で掲載した分の保存庫でありますが・・・・・・
今回はとある方のSSを掲載いたしました。
興味のある方は、『演目:梟戦記』にどうぞ。

他に何かありましたら、『幻想寓話』へ。
匿名でも構いません。ご自由にお使い下さい。
使う場合、スレッドは出来るだけまとめていただけるとありがたいです。

(注)
ヴィアッリ・フィオーレ=viaさま
蔵那クロエ=ラグナ六区様

                  と脳内変換して、お読みください



魔法少女リリカルなのはギャルゲーテイストSS『Künftiges Erwartungsbild』 十五話『眠れない二日間』(23)

〈二時 【アイス『ゼ-ゲンヴィント』】〉

 ミヤモトを〈咎人の拘束衣バインディングクロウス〉で拘束し、台車を押しながら航空武装隊が出店している場所へ向かっていた。
 鮮魚市場の大型魚類よろしく、台車で運ばれていくミヤモトに周囲の人たちは奇異な視線を向ける。
 中には、携帯デバイスのカメラ機能で写真を撮っている者も何人かいた。きっと、ネット掲示板でその写真が話のネタとして投下される事は間違いないだろう。
 一応、『人の噂は四十九日』と言うことわざが存在するが……いろんな意味でミヤモト一等空士は肩身の狭い生活を送る事となるのは安易に予想できた。
 無言で台車を押す幽霧に、隣で歩いていた雫が声を掛ける。
「幽霧、そろそろ休憩しますか? ちょうど次元航行部隊のアイン秘書官がプレゼンをしている店が近くにありますよ」
「……そうですね」
 台車で運ばれているミヤモトはそれなりに重いらしく、幽霧の額にはうっすらと汗が浮かんでいる。
 雫はスーツのポケットから取り出したハンカチで幽霧の汗を拭う。
「あっ……ありがとうございます」
「どういたしまして」
 表情は変わらないものの頬に朱が差している幽霧に、雫は頬を緩ませる。
 周囲から聞こえてくるシャッター音を聞きながら二人を見ていた局員は思った。
 幽霧霞は本当に男性なのだろうか。端から見ると明らかに、開発部の雫・鏡月と姉妹であるようにしか見えないのだが。
 気がつくと周囲の通行人は台車に運ばれているミヤモトだけではなく、幽霧と雫の二人まで携帯デバイスで写真を撮っていた。
 写真を写す者は何かに取り憑かれたかのようにシャッターを切り、顔には恍惚そうな表情を浮かべながら口元から涎を垂らしている。
 そして遠巻きから見ている通行人―――主に女性たちは幽霧と雫を見ながら熱い羨望のため息をついていた。
 色んな意味で気まずいこの場から早く逃げたいと思う局員なのだが、あからさまな態度を取る事を出来ずにいた。
 そうこうしている内に幽霧たちは【アイス『ゼ-ゲンヴィント』】に到着した。
「自分は警邏任務があるので、これで失礼します」
 局員は幽霧たちに敬礼し、そのまま人込みの中に紛れていった。
 そして三人は【アイス『ゼ-ゲンヴィント』】を見上げる。
 戦技教導部隊の【喫茶『白桜雪』】や陸士部隊捜査課の【甘味処『華鳥風月』】などは普通のお店であったが、アインが出店している【アイス『ゼ-ゲンヴィント』】はサーカスで使われる大きなテントであった。
 青や白でカラーリングされたテントはきっと、朝ぐらいになったら人を引きつけるだろう。
 子供たちに引かれた家族で一杯になる光景が思い浮かぶようであった。
 アルフィトルテは目の前にあるテントを見ながら感嘆の声を上げる。
「ママっ……おっきいね」
「……そうだね」
 幽霧のスカート引っ張りながら眼を輝かせるアルフィトルテの姿に、ほほえましさを感じた雫は口元に小さな笑みをこぼす。
 はしゃぐアルフィトルテに引っ張られながら幽霧は垂れ幕をくぐり、【アイス『ゼ-ゲンヴィント』】の店内へと入っていく。
 店内は木製のテーブルや椅子が置かれ、何故かカウンター席もあった。まるで小洒落たバーのような雰囲気が漂っていた。
 カウンター席に真っ白な髪をした人が座り、その向かいではメイド服を着た銀髪紅眼の綺麗な女性が立っていた。
 ミヤモトを乗せた台車を押しながら、幽霧はカウンターの方へと進んでいく。
「こんばんは。アイン秘書官」
「ええ、こんばんは。幽霧霞三等陸士」
 アイン秘書官と呼ばれた女性は口元に笑みを浮かべながらそう返した。
 カウンター席に座らせるためにアルフィトルテを抱き上げた雫はチラリと隣にいる白髪の少女を見る。
 灰色っぽい白の髪に白い肌。着ているのは幽霧の着ているメイド服とデザインが似ているが、純白のメイド服であった。
 真っ白なワンピースの上にフリルのついたエプロン。頭にはフリルのカチューシャがちょこんと乗っている。
 そしてスカートの下からフリルのついた白いぺチコートがちらりと見えた。
 細かい縁取りや装飾がなされたそのメイド服はまるでウェディングドレスのようであった。
「ナタネさんも一緒でしたか」
「……今はヴィリエ・オーギュストです」
 溶けかけの白いアイスクリームを見つめながらナタネは雫に返す。
 雫はその言葉に瞼を閉じ、口元に笑みを浮かべながら含み笑いをする。
「そうでしたね」
 クスクスと笑いながら雫はアルフィトルテの隣に席に座る。
 カウンターの向かいに立っていたアインはショーケースに入れたアイスをステンレスの器具ですくい、硝子製の小さな容器に盛り付けた物をアルフィトルテの方に差し出す。
 しかし食べて良いのか分からないアルフィトルテはキョトンとした顔で首を傾げた。
 じっと目の前のアイスを見ながら食べようか迷うアルフィトルテに、アインはクスリと笑いながらその手を掴んで引き寄せる。
 そして掴んだその手に握らせたのは、キラキラと輝く銀のスプーン。
 スプーンの握りながら、アルフィトルテはアインを見つめた。
「……食べて良いの?」
「良いですよ」
 アインの言葉にアルフィトルテは顔をぱあぁぁっと明るくし、硝子の容器に盛られたアイスをすくい始める。
 嬉しそうにアイスをほおばる姿を眺めながら雫は懐を探って財布を抜こうとする。
「えっと……」
「お代はいりません」
 しかしアインは懐から財布を出そうとする雫を手で制する。
 彼女の意図に気づいた雫は、プっ……と吹き出す。
「それは……」
 雫がなんと言おうとせんか分かったアインはカウンターのむかいではにかみながら言った。
「可愛い妹を溺愛する姉の愚行と受け取っても構いません」
 それはまるで、自身の妹が可愛くて仕方ない姉のようであった。
 アインの嬉しそうな顔を見ながら雫は口元を緩め、安らかな笑みを浮かべる。
 その表情は大きくなった我が子を見ているような雰囲気を醸し出していた。
 ―――季節が変わっても時が経ってもあなたのそばにいたい。
 『夜天の書』の管理人格であった彼女はずっと、その本の奥でそう願っていた。
 しかしその願いは何度も打ち砕かれた。願いが叶わない苦しみが永劫に渡って続くかと思われた。
 最後の夜天の王となる少女、八神はやてによってその苦しみから解放されたかと思われた。
 だが、残っている限りは遠からず防衛プログラムが再生して暴走してしまう。
 そして元のプログラムが既に存在しないため、暴走しない状態には戻せない。
 自身が存在する限りはまた世界が崩壊の危機を迎える事が分かっていた彼女は自らの消滅と言う選択を選び―――
 世界を救う為に彼女はとある冬の日に音もなく声もあげず消えてった。
 長い苦しみから解放された彼女は、両手差し出しても溢れる程の幸せと夢を手に入れても良かった。その資格が彼女にはあった。
 幸せになる資格を持っていた彼女が手に入れる事が出来たのは――――
 八神はやてから貰った『夜天の王を守護する祝福の風リインフォース』の名のみ。
 しかし運命の悪戯か―――彼女は新たなる生を得た。
 そして、新しい生き方をする為に彼女は歩み始めた。
 長年の間積み重ねてきたその努力が今ここで少しだけ報われた瞬間だと言えるだろうと、雫は心の底から思った。
「じゃあ、私もバニラアイスを一つ」
「どうぞ。お代は要りません」
 アインはそう言って真っ白なアイスをディッシャーと呼ばれるステレンレスの器具で硝子の容器で盛り始める。
 首を傾げる雫にアイスを盛った容器を差し出すアイン。その容器にはバニラアイスだけではなく、色んな種類のアイスが盛られていた。
「うわぁ……いいなぁ…」
 アルフィトルテは雫の前にあるアイスに感嘆の声を上げる。
 隣のアイスを見るその顔はとても羨ましそうであった。
 差し出された色とりどりのアイスに驚く雫にアインは言った。
「だって、私に新しい人生を歩ませてくれたのは貴方達ですから……母様マイスター
 頬は桜のように薄いピンク色に染まり、瑞々しい唇は微かに潤んでいる。
 その顔はまるで初恋の相手に好きと告白する女の子のようであった。
 アインの言葉に真っ白な雫の頬に朱が差す。まさか、子供を産んでもいないのに『母様』と呼ばれるとは思っても見なかった事だろう。
 雫は赤くなった顔を見せないためか、その視線をカウンターに落として俯く。
 そして黒髪で顔を隠しながら雫は呟いた。
「…幽霧がアルフィトルテに『ママ』と呼ばれる気持ちが少し分かりますね……」
 少し気恥ずかしそうな顔でもあったが、口元は嬉しいと言った感じに笑みが浮かんでいた。
 それと同時にぽたりとカウンターに水滴が落ち、小さなしみを作り出した。



 ちゃっかり、ナタネの隣に座っていた幽霧は淡々とした口調で訊ねた。
「そういえば……高町一等空尉のいるお店で働く事になりましたが、どうでしたか?」
「……休憩時間が重なると、よく絡んできます」
 そう言ってアイスクリームを口へと運ぶナタネ。
 しかしその声音からは困っているようには思えなかった。
 〈アイギス〉で石化させても身体が崩れ行こうとしていたナタネを見て、殺気を放ちながら詰め寄ってきた険しい顔のなのは。
 ナタネが消滅を危機を免れ、再び会う事が出来たなのはの嬉しそうな顔。
 幽霧はそれらを知っているだけに、積極的になのはがナタネに絡むのも当たり前かもしれないと思った。
「そうですか」
 淡々と返す幽霧にナタネは全く気にも留めずに溶けかけたアイスを口に運び続ける。
 しかしそこで何か思い出したらしく、スプーンを置いてから付け加える。
「何故かヴィアフと名乗る方もよく絡んできますが」
「……あぁ」
「あの人は、なのはさんをとても大切にしていますから」
 ナタネの言葉に、その状況が鮮明に思い浮かんでしまった幽霧と雫は納得するしかなかった。
 戦技教導隊でAMF下の戦場におけるサバイバル演習を担当とするヴィアフ・ストラグル戦技教導官は、高町なのはをまるで妹のように可愛がっている事は有名な話であった。
 管理局に設けられた食堂や休憩所でも二人が一緒にいる姿がたびたび目撃されている。
 妹のように可愛がっているなのはが、自分ではなくナタネばかりに構っていれば―――やきもちを妬いて、絡んできてもおかしくないだろう。
 初対面の幽霧にも、躊躇することなく罵倒しに掛かるような彼女の事だ。
 休憩中でも、そうでなくてもナタネにしつこく絡んだのだろう。
 しかしナタネの事だから、そんな事など構わずに与えられた仕事をきちんとこなしてきたのだろう。
 ぼんやりとそんな事を考える幽霧に、ナタネはスプーンの先を咥えながら訊ねた。
「それと……アレは何ですか?」
 ナタネが視線の先で示したのは、幽霧の〈咎人の拘束衣バインディングクロウス〉で拘束された状態で鮮魚市場の本マグロよろしく、台車に乗せられた航空武装隊のミヤモト一等空士であった。
 何故かボールギャグから涎を垂らし、息を荒くしながら悦んでいるように見えてしまうのは―――気のせいだろうか。
 黙々とバニラアイスを食べていたアルフィトルテが口を挟む。
「じくうかんりきょくこうくうぶそうたいみやもといっとうくうしのなれのはて?」
「あぁ、やんちゃっ子という事で、人妻の女性局員には人気の問題児として有名な……」
 台車に乗せられたミヤモト一等空士をじっと見つめながら思い返すように呟くアイン。
 内容が微妙にけなしているような感じがするのは気のせいであろうか。
「ひとまず、航空武装隊の店まで持って行こうと思うのですが……」
 場所が分からないんですと言う幽霧。顔はいつものように無表情であるのだが、声からは少し困っているような雰囲気が感じ取られた。
 確かに、これを持ち歩くのは人目の関係で色々と大変であるだろう。
 暴れないように〈咎人の拘束衣バインディングクロウス〉を使用しているのだから、その拘束衣を解除する事が出来ない。
 どうしたものかと、改めてミヤモトの処置について考える幽霧たち。
 ナタネは無言で椅子から降り、台車に乗っている拘束衣姿のミヤモトに触れる。
 触れた手の平から魔法陣が展開される。
 その魔法陣はヴィータ二等空尉やスバル・ナカジマ一等陸士の扱う近接戦闘専用の魔法体系。ベルカ式にも似ているのだが、更なる拡張を行う為に特殊な意匠が付け加えられた感じであった。
 その魔法陣を見たアインは消えてしまいそうなくらい小さな声で噛み締めるように呟いた。
「……ヴォークトリヒト、コントータ…」
 台車の上に次元の裂け目らしき物が発生し、拘束衣を着させられたミヤモト一等空士をズブズブと引きずり込んでいく。
 明らかにヤバそうな光景に幽霧たちは絶句する。その間にもミヤモト一等空士の身体は飲み込まれていく。
 小さい子供が見たら、明らかにトラウマに陥りそうな光景だ。
 アルフィトルテは黙々とアイスを食べているのが、唯一の救いかもしれない。
 完全にミヤモトを飲み込んだ所で裂け目は閉じられ、何事も無かったかのように消えていく。
「ミヤモト一等空士は……」
「次元航行魔法で、航空武装隊の店先まで送っただけです」
 何事も無かったかのように座っていた椅子に座り、溶けたアイスをすくいながらナタネはそう答えた。
 店先に目隠しやボールギャグを付けさせられた拘束衣姿のミヤモト一等空士が置かれた光景が脳裏に浮かび上がった幽霧はもう絶句するしかない。
 明らかに営業迷惑のブツであるとしか言いようがないであろう。
 そんな光景を思い浮かべて絶句する幽霧たちに、ナタネは問い掛けた。
「前々から聞きたかったのですが」
「なんですか」
 首を傾げながら不思議そうな顔をする幽霧・雫・アインの三人。
 ナタネはスプーンを容器の中に落とす。
「貴女たちの言う『特殊機構』って一体、何なのですか?」
 いまいち意味が分からない幽霧は首を傾げる事しか出来ない。
 しかし、その言葉によって雫の顔に浮かんでいた表情がすぅっと消え、アインは困ったような顔をする。
 どうやら、この二人はナタネの『特殊機構』が何の事を指しているか分かっているようだ。
 表情が消えた雫はゆっくりと口を開く。
「身体の組織を保つ為の―――」
「諜報部の研究書庫……長月書房ですか。そこで、『心臓』と呼ばれる特殊機構についての研究データを読んだのですが」
 しかし誤魔化せないためか、そこでナタネが口に挟む。
「―――っ」
 あやふやな情報で誤魔化そうとしていたのか分からないが、具体的な事を言われたらしく雫の言葉が止まる。
 幽霧も流石に自身の所属する諜報部が持つ研究書庫。『長月書房』については知っていた。
 上は四十二階、地下は六十六階と言う巨大な情報書庫。
 無限書庫の司書が使うような検索魔法は書庫にある魔道書に干渉する危険があるから使用禁止。
 強力な魔道書が何百冊もあるために、その魔力に当てられた紙切れ一枚が一種の魔道所と化している。
 その上、魔道書の精霊やその防御機構が徘徊している。
 魔道書が入っているのでも危険であるが、それを収めている書庫も十分危険であった。
 一室に計百八の階層を魔法で折りたたんで収納している為に、それを開放すると諜報部が入っている階層どころか―――建物事態が崩壊してしまうのだ。
 いろんな意味でセキュリティが厳重な書庫―――それが『長月書房』であった。
 エレベーターなし。階段はある位置がバラバラ。魔力を放出するタイプの魔法は魔道書に干渉するために使用禁止。
 まだ死亡者が出た事は無いらしいが、時空管理局で最も危険な場所のひとつとして数えられているらしい。
 諜報部の研修はその書庫に最低でも一週間こもり、魔法を一つ使いこなす事である。
 そして習得したその魔法や身体データを元に、仕事の配属や役割を決めるのだ。
 幽霧は研修時に〈其は英雄の魔弾アルテ・アリア〉を習得。昔に習得した魔法の関係で、潜入班の方に配属された。
 ナタネがそこで見つけたのだから、信憑性はあるだろう。
「諜報部の情報書庫に置かれている資料の中にも、その『心臓』や私の身体に埋め込まれた『特殊機構』に似たものを作っていた組織があったのですが……名前は、『創世―――」
 ナタネがとある名前を出そうとした時、雫は静かに言った。
「そうです。貴女の言うとおりです」
「鏡月主任」
 アインは何か言おうとする雫を止めようとする。
 しかしそれに対して、静かな面持ちで首を振る雫。
 そこでアインスも諦めたらしく、軽くため息をついた。
 ナタネを見ながら雫は口を開いた。
「核よりクリーンで、AMFよりたちが悪い兵器―――それが貴女の身体に内蔵されている物であり、『心臓』と呼ばれるものです」



〈二時五分 【メイド&執事喫茶『至高の遺産Oberste Erbe』】〉

 他の部隊が出店している店とは違い、厳格な雰囲気が漂う査察部の【メイド&執事喫茶『至高の遺産Oberste Erbe』】。
 休憩を貰ったヴェロッサは両手にマグカップを持って、歩行者天国を歩いていた。
 カップの中には妙に甘い香りが漂うコーヒーが注がれており、外気の温度差からか真っ白な湯気をもうもうと上げている。
 彼が向かっているのは、【メイド&執事喫茶『至高の遺産Oberste Erbe』】の近くにある自由広場。
 そこは民間の屋台が幾つか出ているが、管理局の出店は無く、一般のために開かれた自由な広場であった。
 目的は休憩がてら、とある女性査察官とコーヒーを飲む為だった。
 彼女の名前はヴィアッリ・フィオーレ。
 対魔導師戦特化型魔導師で、別名『デバイスクラッシャー』と呼ばれる査察官。
 広報部の蔵那クロエ一等空士と腐れ縁で、今は他人が霹靂するくらい熱い恋人同士。
 別にヴェロッサは彼女をオトそうと言う邪な意図があって、彼女がいると思われる広場へ向かっているわけではない。
 堅苦しい空気で強張った身体をほぐす為の運動であり、彼女のように凛々しくて綺麗な女性を見て癒されたいと思ったからだ。
 探していた女性―――ヴィアッリ・フィオーレは広場となっている場所の入り口近くにある席に座っていた。
 足首まであるロングスカートや手首まである長い袖など露出度が少ないのが特徴的な漆黒のメイド服。
 すっと細い目に、憂いがあるような雰囲気を漂わせていた。
 周囲はカップルらしき二人組か家族連ればかりで、ヴィアッリ画異様に目立っていた。
 何気なくヴェロッサはヴィアッリに声をかける。
「ヴィアッリさん?」
 軽くヴェロッサの方に視線を向けたが、ヴィアッリからの返事は無い。
 この手の反応には慣れているのか、構わずヴェロッサは向かいにある席に腰掛ける。
 テーブルには紙コップが置かれ、中にはもう何も入っていなかった。
「飲むかい? コーヒー」
「……ええ」
 空を見つめながらヴェロッサにそう答えるヴィアッリ。まさしく、心ココに在らずと言ったような感じであった。
 休憩時間が始まってからずっと、ココで空を見上げていたのではないのだろうか。
 身体を伸ばして、甘い香りのするコーヒーの入ったカップをヴィアッリの前に置くヴェロッサ。
 何気なく彼も彼女と同じように視線を上げると、真っ黒な空が目に入った。
 クラナガンの街をどんなに多くの光で彩っても空には光が差すことなく、漆黒の分厚い雲が星や月の光を遮ってしまっている。
 何でヴィアッリがそんな空をずっと見上げているのか、ヴェロッサには分からなかった。
 ヴェロッサがマグカップに口をつけようとした時、ヴィアッリ派口を開いた。
「あの子ってね。本当は涼香さんがすきなの」
 いきなり何を言っているのだろうと、ヴェロッサは思った。
 しかし数秒後には、広報部の蔵那クロエについて言っていると言う事が分かった。
 何故ならば、ヴィアッリが「あの子」と呼ぶのは彼女―――蔵那クロエしかいないからだ。
「だから、私はその当て馬なの」
「自分で言ってて悲しくないですか?」
 あくまで自身はクロエが涼香の気持ちを確かめる為の道具でしかないと言うヴィアッリの自傷に、ヴェロッサはコーヒーを啜ってから率直な意見を漏らした。
 ヴェロッサの言葉に、ヴィアッリは淡々とそう返した。その声からは悲しいと言う感情は感じられない。
「それでも、私は良いの。あの子の事は好きだから」
 ゆっくりと顔を戻すヴィアッリ。その顔には自嘲しているかのような雰囲気を漂わせていた。
「でも、あの子は愚かなの。私とイチャイチャしている姿を見せて、涼香さんにやきもちを妬かせようとしているのよ?」
 そう言ってヴィアッリはヴェロッサの持ってきたマグカップに口をつける。
 ヴェロッサは何で、目の前にいる女性が自身の恋人をあざ笑うかのような事を言っているのか分からなかった。
 少し冷めたコーヒーで唇を濡らしたヴィアッリは再び上を向き、軽いため息を突きながら呟く。
「……涼香さんは、ギンガ・ナカジマさんを心の底から愛しているのにね」
 やはりヴェロッサからすれば、ヴィアッリが自身の恋人を貶めようとしているようにしか思えなかった。
 しかし、クロエをあざ笑うようなヴィアッリの口は止まる事を知らなかった。
「だけど、あの子は決して諦めずに……涼香さんが私にジェラシーを感じるようにイチャイチャする姿を見せ付けているのよ」
「貴女は……それで良いのですか?」
 仕事をする時の冷ややかな目でヴェロッサはヴィアッリに訊ねた。
 実を言うと、ヴェロッサはこんな彼女を見てはいられなかった。
 今の彼女は凄く痛々しくて―――まるで、自ら望んで業火に飛び込んでいく羽虫のようであった。
 自らを灼きながらもただひたすら、真っ直ぐな彼女を一体誰がそれを『愚かだ』と哂えただろうか。
 目の前にいるヴィアッリは笑顔を浮かべながら答えた。
「あの子の好きのベクトルが涼香さんにだけ向いていたとしても、私はあの子が好きなの」
 目はどんよりと濁っていて、その笑顔は―――
 とても妖艶で、倣岸で、残忍で、呆れるくらい無邪気であった。
 その笑顔にヴェロッサは足をぬかるんだ闇に取られ、背筋を何百匹の毛虫が這い上がる様な寒気を感じた。
 目の前にいる彼女にそれを悟られないようにヴェロッサは言った。
「難儀な恋をしてるんですね」
 ヴィアッリは狂気にまみれた様な笑顔で答えた。
「私はあの子にベタ惚れですから。あの子の為なら、私は道化と指を指されて笑われても良いの」
 そう言って身を乗り出し、ヴェロッサの方へ顔を近づけるヴィアッリ。
 顔を背けるかなんかして逃げなければならない―――と、ヴェロッサは思った。
 しかし、身体が動かない。まるで、自分の身体で無いかのように。生まれてから初めて恐怖と言う物を感じた気がした。
 今まで感じた恐怖など、これに比べたら平和過ぎる。これが恐怖というならば、今まで、自分は恐怖と言う物を知らなかったと言う事になるような。
 全身という全身が隈なく煽動する。心臓が破裂しそうなくらい早鐘を打つ。
 しかし身じろぎする事すら出来なかった。指の一本どころか、眼球さえ動かせず、ただ細い息だけが口の奥から吐き出される。
 ヴェロッサとヴィアッリの目が合った。そして彼女は―――
 マルデコレイジョウノエツラクハナイカトイウカノヨウニ、ニンマリトワラッタ。
 背中を何かが這いずりながら上がってくるような感覚を感じた。急速にのどの奥から乾いていくような感覚も覚えた。
 それでもヴェロッサは動く事が出来ず、ヴィアッリの顔が近づいてくるのをただ眺めるのみ。
「ん……」
「ふぁっ……」
 ヴィアッリによって、ヴェロッサの唇が塞がれる。
 その唇はマシュマロのように柔らかく、暖炉の火のように温かく―――失恋に似た苦味を感じた。
 ゆっくりとヴィアッリは彼から唇を離す。その顔には妖艶な笑みが浮かんでいた。
 開口一番にヴェロッサは目の前で哂う彼女に訊ねた。
「何故、撲にキスなんて……したんだ?」
 ヴィアッリは何でもなさそうに答えた。
「―――恋人でもない人とのキスはどんな味するか知りたかっただけよ」



〈二時三十分 アリサ〉

 リオから対象を撃墜するように指令を受けたアリサが特定された場に到着したときには大体が終結していた。
 漆黒の鎧をまとう騎士と少女の前に沢山の人間が倒れていた。
 死んでいるようには見えないものの、足や手が人間の腕ではありえない角度に曲がっている。
 彼らは騎士によって痛い目に合わされた人間のようだ。
「ひはっ!」
 無残にもやられた者たちを見下しながら騎士は嗤った。振り上げた両手には巨大な漆黒の錫杖が握られている。
 きっとその少女は彼女によって撲殺されるだろうとアリサは思った。
 錫杖を叩き付けようとする少女へ疾駆するアリサ。自身の握る槍に命令を下す。
「来なさい……フランベルジュ」
〈Verstandnis. Mein Herr〉
 アリサは光球に包まれる。それが割れた瞬間、姿を変えたアリサが姿を現した。
 纏うのは白基調で赤と緑のラインが入ったチャイナドレス。その上にはチャイナドレスと同じく白基調のコート。
 その手には穂先がまるで剣の様に長く、背丈よりも長い槍が握られていた。
 走りながら身体をしならせ、アリサは振り下ろされようとしていた錫杖に『フランベルジュ』を叩きつけるように振るった。
 『フランベルジュ』を叩きつけられた漆黒の錫杖は砕け、破片が道路に突き刺さる。
 そのままアリサは身体を勢いに任せて身体を回転し、横へ薙ぐように槍を振るう事で騎士を薙ぎ払った。
 ほぼ奇襲に近いアリサに攻撃に騎士は何度か地面に叩きつけられながら転がっていった。
 恐怖で怯える少女に駆け寄り、イヤリングをつけている方の耳に片手を当てながら叫んだ。
「こちらブレイブ・ツー。ゲストたちの緊急転送よろしく!」
[こちらシュヴェーアト。緊急転送受理]
 アリサの通信を待っていたのか、本部のオペレーターが瞬時に出た。
[ではブレイブ・ツーも戦線離脱を]
「……そうも行かないようね」
 緊急転送用の魔法が展開される気配を背後に感じながらアリサは騎士の飛んで行った方を見据える。
 微かな足音を立てながら、漆黒の少女が歩いて来た。
 その背後には上半身部分だけが浮かぶように存在する漆黒の騎士がいた。
 きっとアリサが薙ぎ払った騎士は本体を守る殻で、本体は歩いてくる少女のようだ。
 少女は何かを喋ったが、人間が発音するような音ではなかった。
 剣に形態を変えた『フランベルジュ』を構え、アリサは少女に言った。
「私は恭耶たちほど甘くないわよ!」
 口が裂けると思えるほど大きく口元を歪ませる少女。そしてアリサを指差した。
 漆黒の騎士は肩の部分から棘を生やし、アリサに目がけて放射状に放つ。
 飛んでくる棘に対し、アリサは『フランベルジュ』をハンマーのように振り回す事で棘を弾き落とす。
 しかし何発かは弾き落とす事が出来ず、バリアジャケットに突き刺さった。
「……つうっ!」
 アリサは突き刺さった棘を引き抜き、瞬時に治癒魔法を掛ける。
 傷が塞がると同時に剣を振り上げ、アリサは新たなる魔法を紡ぐ。
虚数アサルト……」
 鍔の部分から炎が噴き出し、炎の剣となって刀身を包み込む。
 そしてさっきまでは両手で扱っていた剣を利き腕の一本の力だけで勢いよく振り上げてみせた。
 元々の重量に引っ張られて身体が後ろへ泳いでしまう事をいとわずに。
 隙だらけの大振りだと誰もが思ったであろう。
 しかしそれこそがアリサの持つ次なる一撃の予備動作であった。
 土ぼこりを上げる程の強い踏み込みが、振り上げる際に仰け反った身体を引き戻す。
 えぐりこむように突きたてられたかかとから生じたのは螺旋を描くような力。
 脚から腰。腰から肩へと経由しながら一ヶ所に集束していく力は槍投げのような軌道で走った刃へと爆発的な加速と威力を与えた。
解体ブレイカー!!」
 振り下ろされた炎の刃は少女を切り裂き、炎で魔法を焼き尽くした。
 しかし〈虚数解体アサルトブレイカー〉は騎士の装甲らしき物を削っただけで効果は無かった。
 アリサは魔法破壊では騎士を消す事が出来ないと判断。驚くべき行動に出た。
 自身のデバイスである『フランベルジュ』を消す。それと同時にバリアジャケットの姿からメイド服姿に戻る
 そしてほとんど生身の状態で、少女へ疾駆した。
 騎士の肩が再び膨らみ、再び棘が一斉に生える。
 再び飛んできた棘をかわしながらアリサは跳躍。
 少女は夜空に舞うアリサを見上げる。金で作った様なアリサの髪は月光で輝いて見えた。
 アリサは中空で左手は鞘を握る形を取り、右手は刀の柄を握っているような形を作った。
心刀ハード……」
 騎士は剣を創造して構え、アリサを一刀両断にしようと斬り上げた。
 そしてアリサは居合のように右手を左から右へ振り抜いた。
「……一閃ブレイカー
 まるで刀を握って居合抜きをしたかのようにアリサは漆黒の剣を切断し、騎士自体を衝撃波で消し飛ばした。
 騎士を消し飛ばした衝撃波で少女の身体も紙のように飛ぶ。
 着地と同時にアリサは『フランベルジュ』を再構築。槍を少女に向けて魔法を発動。
「フレイムランサー」
 炎で出来た鑓が約二十本以上、空中に創造される。
「シュートっ!」
 アリサの創造した槍が少女へと飛ぶ。
 しかし少女は瞬時に霧散した霧を集めて黒い盾を形成。二十本以上の槍全てが盾に突き刺さった。
 余裕の笑みを浮かべながら黒き盾を解除した少女が見たのは、追撃を仕掛けるアリサの姿であった。
「な・め・る……なあぁぁぁぁぁぁあ! フラム・シュトゥルムヴァンデっ!」
 身体をしならせ、アリサは槍を振るう。圧倒的な体捌きに共鳴するかの如く、炎を纏った金属製の槍が鞭のようにしなり、風鳴りを伴いながら宙を薙ぐ。
 その動きは繊細にして豪放。機敏にして静謐。華麗にして残酷。槍なのに刀の様な鋭さがあり、槍なのに弓の様な美しい放物線を描く。
 炎を纏った衝撃波が少女に襲いかかった。
 少女にもプライドがあるだろう。吹き飛ばされると同時に身体を霧で包み込み、自身の身体を護る鎧を生成した。
 そしてアリサを屠るために鎧をまとった少女は走りながら巨大な大剣を生成する。
「それを……待っていたのよ! フランベルジュ!」
〈Verstandnis. Mein Herr〉
 バリアジャケットが解除され、その分の魔力は『フランベルジュ』に回される。一瞬にして槍が大剣へと姿を変える。
 アリサは親指の噛み破り、流れ出た血を大剣の刀身に塗りつけた。フランベルジュの刀身に血と同じ赤の文字と魔法陣が浮かび上がる。
 刀身に文字と魔法陣が浮かび上がっているフランベルジュの切っ先をアリサは向かってくる少女に向ける。
幾千の難を排するクラウ……」
 接触まで、あと三メートル……
 二メートル……
 一メートル……
 零,五メートル……
 零,零零零一メートル
光晶の御剣ソラス!!」
 少女が大剣を振り下ろすギリギリで、アリサは魔法を発動する。
 純粋に《斬る》事にだけに特化されたその魔法の名は。
 鞘から解き放たれたら、斬り刻み尽くすまで鞘に収まらないという伝説をもち、神代に存在した御剣の銘。
 その御剣の威力は神代を飛び越えて。
 今、ここに証明される。
 アリサの〈幾千の難を排する光晶の御剣〉は、少女のまとう鎧を斬り刻み尽くす。
 物理的にも。魔法的にも。
 切り刻んだ破片が飛ぶ様はあたかも桜が舞っているかの様に。
 これが、アリサが持つ最強の魔法であり
 天才を相棒に持つ彼女を支え続けた剣。
 〈幾千の難を排する光晶の御剣〉―――またの名を〈クラウ・ソラス〉
 そして、アリサという一人の魔導師が鍛え続けた。
 いや。鍛え続けられている一本の剣は。
 烈火の剣将を自負する守護騎士が未だに辿り着けぬ剣の境地に――――いつの間にか、辿り着いていた。
 大剣の切っ先を少女の首に突きつけ、ポツリと言った。
「勝負……あったわね」
 しかし少女は止まらない。全身から霧が噴き出す事で身体を包み込み、全方向から漆黒の棘を生やす。
 アリサは霧が噴出されたと同時に身体強化魔法を発動。身体能力を強化したバックステップでそれを交わす。
 漆黒の棘となった霧はアリサに攻撃を回避されてから十秒後に爆発。周囲に硬化した破片をばら撒く。
 爆発寸前でアリサは大剣を空に掲げ、その口から呪文を紡ぎ出す。
「汝、怒りを抱け。怒りよ、劫火となれ。劫火よ、汝の犠牲を持って全てを焼き尽くせ」
 その呪文に呼応するかのように『フランベルジュ』から炎が噴き出す。
 まるでその炎で世界を焼き尽くさんとしているかのように。
 劫火が絶えず噴出しているこの状態で斬られた際には少女ごと炭すら残さずに焼き尽くすであろう。
 しかし、この状態でもまだアリサの有する儀式魔法を発動する為の第一条件。
 噴き出す劫火は対象を焼き尽くすものではない。これは言うなれば、〈幾千の難を排する光晶の御剣〉に次いで破格の威力を持つ魔法を発動する為の下準備。
 地面に目掛けてアリサが『フランベルジュ』を振り下ろす。地面を抉る音を従え、舗装された地面に劫火をまとった大剣の切っ先が突き刺さる。
煉獄の槍。汝は暴食者の晩餐へと招く鍵シュヴェーア フェゲフォイア・エッセ ラーゼン アヴェンドマーヘル シュリュッセル
 大剣の切っ先が地面を穿った瞬間―――周囲に小型の魔法陣が無数に展開され、無数の何かが天井に向けて放射された。
 それは槍をかたどった炎であった。『フランベルジュ』から噴出した劫火が周囲に展開された魔法陣に転送、増幅されて放出される。
 数百、数千におよぶ炎の槍が、周囲の地面から射ち上がった。
 天上に放射された炎の槍は爆発によってばら撒かれた漆黒の破片をことごとく焼き払った。
 二人の戦闘を遠巻きに見ていた局員や何かと思って近づいてきた民間人は目の前の光景に大きく目を開く。
 爆発によってばら撒かれた破片は焼き払う事に成功したが、今もなお本体である少女の身体から噴き出す霧までは焼却出来なかった。
 噴き出した霧は収束して硬化し、巨大な漆黒の壁を形成。
 アリサと少女の間に障害をもたらす。
 引き抜いた大剣を手首で回転させ、壁に切っ先を向ける再び柄を両手で握りなおす。大剣の形が崩れ、槍の形に再構築される。
「炎の杭で汝の敵を貫け!」
 呪文に呼応し、『フランベルジュ』の穂先が炎となって燃え上がる。アリサは腕の力と身体の動きを駆使して槍を投擲。
 炎を纏った槍が漆黒の壁を貫く杭のように突き刺さり、炎の渦が巻き起こす。
「汝の頭に茨の冠を抱き」
 巻き起こった炎が槍となって漆黒の壁に突き刺さる
「十字架を架けよう」
 しかし壁に微かなヒビが入るだけで破壊までには至らない。
「我は槍を持ちし者。その槍を持って……汝を殺す」
 アリサはそびえ立つ漆黒の壁へと疾駆する。走りながらしっかりと右の手を握った。硬く握られた拳に魔力を集中させる事で右手が燃え上がる。
「フラン・シュヴェール」
 アリサは壁に突き刺さった槍の石突きに燃え上がっている拳を叩きつけ、呪文を紡ぐ事で魔法を完成させる。
「……ツェアリュットゥング」
 槍から炎の十字架が爆発と共に生まれ、漆黒の壁を吹き飛ばす。
 爆発によって生じた破片は霧となって空気に混じり、そのまま消えた。
 霧が晴れた目の前には既に少女の姿は無かった。
「ちっ……逃げられたわ」
 軽く舌打ちをするアリサ。『フランベルジュ』を解除し、その場から撤退した。


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