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  • 2009-03-14
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魔法少女リリカルなのはギャルゲーテイストSS『Künftiges Erwartungsbild』 十五話『眠れない二日間』⑳

『交換戯言日誌』は・・・・・・
 『魔法少女ろりこっとん プロジェクト』。通称『ろりこっとんプロ』
 並びに『砲撃文庫』・『創刊砲撃マ王』を応援しています

おはようございます。雪奈・長月です。

今日は日曜日。
今も、涼香様の時空管理局ラジオ進行中!
ひとまず涼香様は自身の身体をご自愛ください。
そしてココに来る皆様も身体に気をつけて下さい。

時空管理局通信にウノスカSS投稿完了。
これを含めて、後三話ぐらいですね・・・・・・

私は少し悟りらしき物が開けました。
Chronicle*SCREAM』のStay様に感謝ですね。
それでも、時々腹痛で起きてしまったり、鬱に陥って色んな物に現実逃避してしまったりする事には変わりないですが。


ついに今回の記事で108番目です。
煩悩の数に達しました。
私の煩悩は108以上あるような気がします。
ちなみに、私のSSのオリキャラは108人以上はいると思います。
誰か、暇でしたら・・・・・・設定資料集を一緒にまとめてくださる方を募集中。
うちの子ご自由のお描き下さい同盟』へ衝動に駆られて入信・・・・・もとい、加入。
私のSSに登場するなのはキャラ、並びにオリキャラをかける猛者を今でも募集中。
これからどうぞよろしくお願いします。



良い意味で空気読めないのと
良い意味で想いが叶うのって……
とても素晴らしいですよね

だから、エロゲとギャルゲーは面白いのかもしれません

私は主人公に感情移入出来ないSS職人
あくまで、それを良いアングルで見ている傍観者だから、私は諜報部なのかもしれないね
でも、そんな立場でも……ニヤニヤするんだw
苦くても、辛くても、内容的に好きなものだと……気になって仕方ないんですね。
とあるゲームのプレイ動画を見ながら脳内麻薬を分泌してSSを書こうとする人の戯言でした。
確かに、これはいちゃラヴです。私の脳みそから脳内麻薬を沢山分泌してくれます。
甘い。口から砂糖が出せそうなくらい甘い。
大人っぽいビターさがありながらも、凄く青臭いんですよねぇ・・・・・
とある人は主人公に一途だし、
とある人は主人公が『好き』を飛び越えて『いとおしい』の領域だし、
とある人じゃ小悪魔だし、
とある人はギャップがやばいですし、
とある人は主人公スキスキオーラが満開ですし、
とあるキャラはきまぐれな子猫さんみたいですし、
なんですか・・・これ・・・・?
桃色時空ですか?
愛は世界を救う爆薬じゃないですけど・・・・・・
世界を砂糖漬けにする気ですか?
(あくまで、何を指しているかは秘密です)



過去の部分が読みたい方は『戯言劇団』へ。(改名しました)
ある種のカオス空間なのでご注意下さい。
基本的に『交換戯言日誌』で掲載した分の保存庫でありますが・・・・・・
今回はとある方のSSを掲載いたしました。
興味のある方は、『演目:梟戦記』にどうぞ。

他に何かありましたら、『幻想寓話』へ。
匿名でも構いません。ご自由にお使い下さい。
使う場合、スレッドは出来るだけまとめていただけるとありがたいです。

悟りは少しだけ開けたのですが、寂しいのと内容に自信がない時期が続いたので・・・・
進行はまだ少し遅いです。頑張らないと・・・・・・・
今回は先回で書き切れなかった分を書き上げました。
まさか一週間も掛かるとは思いませんでした。
それでは更新です。





魔法少女リリカルなのはギャルゲーテイストSS『Künftiges Erwartungsbild』 十五話『眠れない二日間』⑳

〈零時五十分 綺璃斗〉

 神社で交戦した蒼月から命からがら逃げた綺璃斗は上空から狂気をまき散らかしていた。
 狂気は下で歩いている民間人や局員がその被害をくらい、体調不良で倒れる人や狂気で狂う人が増えてきた。
 狂気で開放された人たちが放つ狂気が黒き靄となって、少女の身体に吸い込まれていく。
 周囲が錆びた鉄のような匂いや鼻の奥がつんと痺れるような甘ったるい奇妙な臭気が濃くなって行くにつれて少女は身体が修復されていくのを感じた。
 数分前に蒼月から受けた〈参乃陣四刃 八咫の黒』の傷は既に修復され、少女の身体自体が別の物に進化していく。
 吸い込んだ黒き靄で進化していく彼女ならば、並大抵の魔導師に負ける事はありえないであろう。
 しかしある種のうぬぼれに酔っていたさっきとは違い、今はどんな相手にすら全力で立ち向かうだろう。
「……?」
 周囲に漂う靄から少女は不自然な物の流れを感じた。
 次の瞬間、少女に向かって青い光を放つ線が向かってきた。
 咄嗟に少女は周囲の靄を固め、漆黒の壁を形成。
 しかしその青い線はその壁を突き抜け、少女の顔面ギリギリで止まる。
 遥か下を見ると、とあるビルの屋上に青い魔法陣が展開されていた。
 しかし綺璃斗の視覚ではその魔法陣の中心にいる存在を確認する事は出来ない。
 その間にも次々と黒い壁に青い棒が突き刺さっていく。



「―――どうにか足止めは成功かな」
 クラナガンに多くある高層ビルの一つ。
 その屋上で一人の女性局員が空を見つめながら呟いた。
 左手に握っているのは俗にボウと呼ばれる洋弓型デバイス。
 しかしリムと呼ばれる弓の返る部分とストリングが異様に長いという意味では、和弓のような形状も持ち合わせていた。
 青い棒が突き刺さった黒い壁を見つめる女性に念話の連絡が入る。
[えゆ三等空尉……こちらオウル・プリヴェント。集束まで後十秒。足止めをお願いします]
「こちら、えゆ。了解です」
 念話でえゆと呼ばれた女性は展開された魔法陣の中で胴造りを行い、矢も無いままで打ち起こしまで行う。
 そしてカムで重さを調整する事によって多くのエネルギーを蓄えながら引き分けをする過程で魔力が集束し、長い棒状の矢を作り出す。
 サイトで標準を合わせ、空間把握魔法〈アルテミス〉で対象の位置を算出。その魔法で強化された視覚で対象を睨みつける。
 対象は靄を固めた壁で身を護りつつ、周囲には黒い球体を配置。
 何かが近づくたびに球体は黒い針となって伸び、その針は刃となってその身を鞭のようにしならせながら近づく物に斬りかかる。
 えゆは軌道操作魔法〈クイックシルバー〉を矢に組み込む事で対象物以外を回避するように設定する。
「……限定十秒 対象のみを追尾クイックシルバー
 発射と同時に対象が移動する可能性も考慮に入れ、軌道操作魔法〈クイックシルバー〉で追尾効果も一緒に矢へ組み込んでおく。
 サイトで狙いを合わせ、えゆはある程度の魔力を溜め込んだ矢を射出。発射時の振動と衝撃はスタビライザーで殺したが、タメ撃ちによって掛かった腕の負担でえゆは顔を一瞬だけ歪ませる。
 射出された矢は青い光の尾を引きながら対象へと飛んでいく。
 しかしその軌道上に浅葱色の魔力光を纏わせた少年局員が割り込む。
 対象以外には当たらないように設定された矢は推進力として溜め込まれた魔力を使う事で強引に軌道を変える。
 強引に軌道を変えたせいで勢いが衰え、対象の壁に突き刺さるどころか途中で霧散する。
 えゆは共同戦線を張っている少年局員に念話を送る。



[ミヤモトくん。先行しすぎです]
 えゆから念話が送られてきた少年は忌々しげな顔で軽く舌打ちをする。
 そして左手に持った日本刀型デバイスへ魔力を注ぎ込みながら黒い壁へと突っ込む。
 魔力の込められた居合いがたたきつけられる直前になって、その壁に変化がおきる。
 壁に突き刺さった矢を構築する魔力を失う事で消滅すると同時に黒壁が靄へと戻り、少女は靄を無数の黒い飛針に再構築して射出。
 射出された針にとって突っ込んでくるミヤモトは格好の獲物。
 咄嗟にミヤモトはバリアを展開するが、それが完成する前に針が身体に突き刺さる方が先であった。
 顔や心臓はどうにかバリアで防ぐ事は出来たが、それ以外の部分には針が余すところ無く突き刺さる。
 針の突き刺さる痛みと身体に狂気が染み込む激痛がミヤモトの脳内を焼き、ほんの数秒だけ思考能力を失わせる。
 少女は笑みを浮かべながら、痛みで怯んだミヤモトに突っ込んできた。
 その手に握られているのはミヤモトと蒼月が使っていた得物―――刀
 鞘を握るような形で握った左手で刀を入れ、右手は刀の柄を握っている。
 ミヤモトが刀の射程範囲に入ったとき、少女は刀を握った右手を左から右へ振り抜いた。
「Молния в темноте」
 抜刀する事で切れた傷口から出た黒い血か靄か分からない物で滑らせた刃でミヤモトを切ろうとする。
 そこでミヤモトは刃が身体に触れるギリギリで強固な結界を展開する。
 危機一髪で助かったとミヤモトは思っただろうが、次の瞬間にはその考えは否定される。
 野太刀の奔った軌道に沿って集束した狂気が巨大な黒き刃となり、ミヤモトの展開した結界をガリガリと削っていく。
 最終的に黒き刃は定規を当てたのごとく綺麗な一文字を描きながら結界を切り裂き、驚愕で顔を強張らせるミヤモトに襲い掛かる。
 ミヤモトはアサギの〈ブリッツ・リヒト・シュトライヒェン〉と蒼月の〈参乃陣四刃『八咫の黒』〉を模倣した斬撃によって大きく吹き飛ばされる。
 意識が飛びそうになったがミヤモトはどうにか意識を保ち、少女から離れた所で踏みとどまる。
 斬られた後を見ると、左の二の腕から右の二の腕にかけて綺麗な直線が入れられていた。
 しかしバリアジャケットを着ていたおかげで、薄皮を斬られた程度であった。
 ミヤモトが少女から離れて数秒後にタメ撃ちされた青い矢と琥珀色の弾丸が光の尾を引きながら少女の方へ迫る。
 しかし少女はそれを持っていた刀でなぎ払った。
 魔力を注ぎ込む事でバリアジャケットを修復しながらミヤモトは少女を狙撃する担当をしている一等陸士と遊撃担当のえゆに向かって念話で怒鳴った。
「オウルっ! えゆさんっ! 何で撃たなかったんだ!」



 ミヤモトの怒鳴り声に頭が痛くなるのを感じながら狙撃担当のオウル・プリヴェント一途陸士は返した。
「お前が被って、撃てなかったんだ」
[私の位置からだと、ミヤモトくんも巻き込まれちゃうよ]
 念話からわずかに震えて聞こえる聞こえる声でオウルは、えゆが撃たなかったのではなく撃てなかったのだと思った。
 えゆの位置なら対象を撃つ事も可能であったのだろう。
 しかし照準やスピード―――そんな些細な力加減次第で、矢がミヤモトに当たる危険性もあった。
 敵の撃墜と、ミヤモトの無事。
 えゆはその二つを天秤にかけ―――
 矢を撃たないでチャージする事でえゆはミヤモトの無事を取った。
 ミヤモトならばちゃんと自身が出来る加減を知っていて、危なくなったらちゃんと下がる事を信じた上での行動であったのだろう。
 流石にミヤモトもえゆの気持ちが分かっているだろうと、アンチマテリアル型デバイス『ブリジット』の狙撃用のサイトで対象を狙いながら考えた。
 しかしミヤモトから返された念話はオウルの予想とは遥かに反している物であった。
 怒りで痛みすら忘れているらしく、ミヤモトは激昂しながら叫んだ。
[うるさいっ! 撃つ事に迷うなっ!]
 その言い方はまるで、味方の流れ弾に絶対当たらないという絶対の自信があるようにも思えた。
 気遣ったえゆにそれは無いだろうと思う一方で、オウルはミヤモトが怒る理由も分からなくはなかった。
 今、オウルが狙撃用サイトから見ている少女らしき物―――対象を撃墜。または拘束するのが今回の任務だ。
 ならば、ミヤモトと言う一等空士の身を危険に晒すとしても―――狙撃担当のオウル・プリヴェントと遊撃担当のえゆは対象を仕留めねばならない。
 例えそれが撃墜しなければいけない対象と一緒にミヤモトを殺すという結果にたどり着くことになろうとも。
 共同戦線とはそういうものだ。任務を達成するためには仲間の命―――最悪、自身を進んで犠牲にするくらいの覚悟で望まなければならない。
 勝つ為ならば、一人の命など微塵の重さも無い。
 全を救うためならば、躊躇わず一を殺さなければいけない。
 まさかそれをこんな状況で再確認させられるとは思わなかった。
 オウルは魔法陣を展開し、『ブリジット』のチャージを開始する。
 自身の魔力を核にして周囲の魔力を集束。むらが出ないように分解。そしてその魔力を圧縮。
 それを何度も繰り返す事で、発射された弾が相手を貫くまでのスピードを極限まで加速させる。
 一点集中の魔力弾、それに籠められる威力はかなりのものである。
 しかし難点は発射後の次弾装填で、リロードしてからの発射が他の銃撃型デバイスよりも遅い為に連射ができない事であった。
 特殊な魔法によって照準の精度が上げられたサイトを覗きながら、『ブリジット』の銃口を対象へと向ける。
 引き金を絞ろうとしたその時、バリアジャケットを修復させたミヤモトがその軌道線上に割り込んできた。
[うおぉぉぉっ! この化け物があぁぁぁぁ]
 流石にマズイかもしれないとオウルは思った。
 自身の使う魔法は魔力の圧縮によって弾の威力を上げている。
 一点集中型の魔力弾であるから、威力は折り紙つき。きっとミヤモトの身体すら貫通し、対象に着弾するであろう。
 最悪、ミヤモトを殺す事になるが対象を仕留める事が出来る。
 撃つ事に迷うな―――ミヤモトはそう言って、撃つ事を躊躇った二人を一喝した。
 そう言ったのだ。ギリギリで避ける位の自信はあるのだろう。
 ならば―――その宣言が嘘でない事をココで証明して貰わなければならない。
 軽く息を吐き出したオウルは狙撃用のサイトから対象とミヤモトを睨みつける。
 ミヤモトは設置された球体の迎撃トラップと、その隙を縫って攻撃してくる対象に足止めされていた。
 遊撃を担当しているえゆというと、ミヤモトが対象の攻撃を凌げるように球体を狙撃している。
 しかしその迎撃トラップは矢で安易に破壊する事が出来ても、すぐに修復されてしまう。
 防戦一方になっているミヤモトにも聞こえるように、オウルは念話を繋げた。
「はあ、仕方ない。当たってもしらねえぞ……ミヤモト」
 オウルは『ブリジット』の引き金を引き、琥珀色の魔力弾を解き放つ。
 ドンという鈍い音と共に銃口から砲撃魔法クラスの威力を孕んだ魔力弾が発射され、対象に向けて『ブリジット』を構えていたオウルに衝撃が来た。
 琥珀色の魔力弾は空を翔け上がり、ミヤモトと撃墜対象へ飛んでいく。
 狙撃担当のオウルが二人の動きを予想して発射した魔力弾は悪くても、ミヤモトをギリギリでかすめるような弾道で飛んでいた。
 いきなりココで、対象の攻撃を凌いでいたミヤモトが位置を変える。
 それはオウルの放った魔力弾がミヤモトの心臓を確実に貫く事が出来る位置。
 後十秒でその弾がミヤモトの心臓を穿ち抜くだろう。
 事前に念話を繋いで宣告したのだから、流石のミヤモトも対象を振り切るか何かして避けるだろうとオウルは踏んでいた。
 しかしミヤモトは弾の弾道から退避しようとしない。
 まさか―――ミヤモトはオウルからの念話を聞いていないのではないのか。
 オウルは自身のデバイスを落とし、念話を接続したまま精一杯の声で叫んだ
「ミヤモトおぉぉぉっ!」
[追尾及び、対消滅クイックシルバー!]
 その声が念話として聞こえるのが先か、魔法が発動されるのが先か分からないが、一筋の青い光が空を翔けた。
 青い光は夜空に光の尾を焼き付けながら琥珀色の魔力弾に衝突し、そのまま強引に対消滅させる。
 オウルは仲間を射殺しなかったと言う結果に安心しつつも、魔法に魔法をぶつける事で対消滅させられた事にはぞっとした。
 軌道操作魔法を使用しているとはいえ、衝突させて魔法を対消滅させる事は容易ではない。
 百分の一のタイミングと類い稀な解析能力がないとそれを容易に起こす事は出来ないからだ。
 流石、首都防衛部隊所属の三等空尉であるといえるだろう。
 その時、えゆからオウルへ念話が飛んできた。
[プリヴェントくん。大丈夫?]
 青い矢が空を翔けているのが肉眼で確認出来るところから、矢を撃ちながら念話をしているようだ。
「ええ。大丈夫です」
 背筋の寒気が収まらなかったが、オウルは大丈夫だと肯定する。
 命を賭けねばならない場所で一つの事にこだわっていたら、それが命取りになりかねない。
 軽く深呼吸をして、無理にでもオウルは気を落ち着けさせた。
[なら、大丈夫ね。分析と援護をお願い]
「了解しました」
 オウルは取り落とした『ブリジット』を構えなおし、再び魔力の集束開始。
 それと並行して、対象の生体をチェックする魔法を起動。
 外見は普通の人間のようだが、戦闘力だけは普通の魔導師を凌ぐ物がある。
 魔力の暴走と考えればそれまでかもしれないが、オウルが仕事で培ってきた勘と言う物が別の何かであると告げていた。
 対象がほとんど未確認生物に近い今は、できる限りの情報を調達しなければならない。
 それをもとに味方へとアドバイスを送り、味方が戦いやすいように援護を行う。
 それが――――アンチマテリアルライフル型デバイス『ブリジット』で射撃を行う魔導師である自身の役目だとオウルは考えていた。



 対象が撃ち込んで来た漆黒の槍でミヤモトが吹き飛ばされるのを空間把握魔法で強化された視覚によって確認すると同時に、えゆは軌道操作魔法で矢に複雑な命令と膨大な魔力を組み込んでいく。
 援護射撃と対象の生体解析を同時進行で行わせているからか、オウルから解析による結果はまだ出てこない。
 最低限、オウルの解析が終わるまでは時間を稼ごうと考えながらえゆは対象を狙う。
「……爆砕分裂後、多角砲撃クイックシルバー
[えゆさん。何で、オウルの弾を対消滅させたっ!]
 対象に狙いを定めたところで、ミヤモトからの念話が割り込んできた。
 どうやら、えゆがオウルの魔力弾を対消滅させた事に憤慨しているらしい。
 えゆの中では今すぐ弁解したいと言う気持ちがあったが、対象を撃墜するまではそんな余裕などない。
 目の前では対象がこっちの攻撃を警戒してか、巨大な盾と球体型の迎撃トラップを作り始めている。
 対象の攻撃を迎撃するのであれば、できるだけ早く行わなければならない。
 チームであるとはいえ、一人で突っ走るミヤモトの言葉を今だけは無視をしなければならない。
「……話は後です」
[……っ! この――]
 ミヤモトがまだ何か言おうとしていたが、集中力を高めるためにえゆはあえて念話を切断した。
 そして十分な魔力を溜め込んだところで、えゆは矢を離す。
 青い矢は光の尾を空に焼き付けながら対象の方へと翔け昇り、完成した漆黒の壁に衝突。爆発する事で迎撃トラップを破壊し、壁に幾つものヒビを入れた。
 しかし爆発だけでは終わらない。矢が砕け散っても魔力は破片のような形状を取ったまま対象の近辺に存在し、周囲の魔力を集束し始める。
 危険を感じたらしき対象はその破片を壊そうとするが、オウルが魔力弾でえゆの援護を行う。
 そして十分な魔力を喰らった破片は青い光線となって、多角度から対象に襲い掛かる。
 色んな角度から集束式の砲撃魔法を喰らう事となった対象の身体は爆発によって発生した光と霧散した濃い靄によって見えなくなる。
 咄嗟にえゆは目を焼かれないように瞼を閉じた上で、右腕で目の辺りを隠す。
[えゆ三等空尉……]
 やったのでしょうかと念話で訊ねてきたオウルに、えゆはまだ分からないと答えた。
 すこしずつ光が弱くなっていき、えゆは対象のいた位置を見る。
 そこはまだ濃い靄が掛かっている性で姿を確認できない。
 下手をしたらさっきの攻撃で本当に撃墜してしまい、地面に落下した危険性もある。
 しかしそれは靄が晴れれば分かる事だ。風の流れで少しずつ靄が流されて消えていく。
「……えっ?」
 〈アルテミス〉で視覚を強化した瞳で確認した驚くべき光景に、えゆは不意に声を上げてしまった。
 少女らしき対象が左右に手を突き出した状態で、何事も無かったかのように浮かんでいる。
 まるでその少女を護るように球体状で展開されているのは黒い壁ではなく、少し黒ずんだ色をしている虹色のベルカ式魔法陣。
 えゆが発動した二段構えの魔法はその魔法陣の前で停止している。
 魔法陣を展開した状態で対象の口がゆっくりと動く。
「……掌握支配コンプレクティ・リアクト
 今までは意味の分からない音の羅列であったが、今その口から紡がれた音は紛れも無く人の喋る言語であった。
 その言葉に従って、魔法陣の前で停止していた青の光線がゆっくりと吸い込まれていく。
 そしてそれを吸い込んだ魔法陣はゆっくりと消失して行った。



 魔力によって強化された狙撃用のサイトからオウルも、えゆの魔法が対象の展開した魔法陣によって吸い込まれていくのを見ていた。
 オウルも陸士部隊の仕事で色んな違法魔導師やテロリストたちと渡り合ってきたが、魔法を吸収する魔法を見た事は無かった。
 目の前の光景に驚いているオウルの側で、対象の生体をチェックしていた魔法が解析結果を出した。
「っと…生体センサースキャン終了…か……? なんだこれは…」
 対象は身体の体温が異常に低いだけで、生きている事には間違いない。
 しかし身体の内部が解析魔法によって検出する事が出来なかったのである。
 今まで確認した限りでは対象に魔力を遮断する処理がされているようには思えない。
 だが、対象は生きている事以外には何も分からない。
「……奴は、一体……何なんだ?」
 魔法によって出た解析結果に、オウルは困惑してしまう。
 外見は人間であるのは分かるが、中身が検出されない為に何なのかいまいちわからない。
 人間という生き物は思考などを臨機応変に対応するが、戦い慣れてくると仕草などで予測できるようになる。
 アンドロイドの場合ならば人間のような仕草が無く心が無い為、その行動などが読めないのである。
 戦場では人間や機械問わずとんでもないのが放り込まれている事もあったりするため、分析が出来ないというのは危険極まりない。
 そして次に出た解析結果にオウルは再び驚いてしまった。
「!?」
[どうしたの? プリヴェントくん]
 驚きが声になって伝わったのだろう。一時的に念話の回線を遮断していたえゆがオウルに話しかけてきた。
 オウルは解析された結果をそのまま、えゆとミヤモトに伝える。
「解析の結果。対象が生きている事以外は確認できません。ただし……」
[ただし……なんだ?]
 苛立っているミヤモトの問いに、オウルは自身でありえないだろうと思いながらもそれを伝えた。
「さっきの魔法で、いきなり対象がリンカーコアを持ちました」
[……?]
[……え?]
 ミヤモトは意味が分かっていなさそうであったが、えゆはオウル同様に驚いている事が念話からも伝わってきた。
 二人が驚いている理由が全く分かっていないミヤモトに、えゆが説明をする。
[いきなりリンカーコアの存在が確認されるのはおかしくない事です。危機的状況によって魔導師として覚醒し、リンカーコアが発生した事例は過去にも数件はあります]
「問題は……」
 靄を集束させて攻撃を仕掛けようとする対象を魔法で迎撃しながら二人は話を続けた。
 漆黒の槍や針は魔法で破壊する事は出来るのだが、対象になると魔法自体を吸い込まれてしまう。
 解析魔法の結果によると、魔法を吸い込む事によって対象の魔力も増して来ているらしい。
[リンカーコアが発生する前は魔法ではない何かを使用していた……という事ですね]
 今までの技が魔法であったのなら、魔力に限界が来るのを待つと言う戦術も存在した。他にも、念話でAMFを発生させる事が出来る物を所有する部隊に連絡し、それらが来るの時間稼ぎとして踏ん張ると言う手もある。
 しかし黒い壁などが魔法によるものでないのならば、対処方法が分からなくなる。
 むしろ戦況がオウルたちにとって悪くなりつつあった。
 対象の行使する技は魔力とは違う物で動いているし、対象に魔法を打ち込んだらそのまま吸収されてしまう。
 何事においても、いつ決着がつくか分からないと言う状態は意思を持つ存在の精神に多大な負担を掛けて行く。
 いつ終わるのか分からない戦闘にオウルたちの精神がすり減らされていった。



 ほとんど千日手に近い戦況に痺れを切らしたミヤモトは日本刀型デバイス『鈴音』を抜刀し、刀身に浅葱色の魔力光を纏わせながら少女の方へと飛んでいく。
「うぉおおおおおおおおおおっ!」
 少女は向かってくるミヤモトに向かって針を飛ばして来た。
 さっきは不意打ちを喰らっただけらしく、今は魔力を纏わせた斬撃でそれらを切り払っていく。
 攻撃を捌きながら少女の方へと突っ込んでいくミヤモトにえゆの念話が飛ぶ。
[ミヤモト君。危ないから、先行しちゃ駄目です!]
 これは一緒に戦う者を心配する声。しかしこの化け物を倒す事にミヤモトは頭が一杯であった。
 時には『鈴音』で切り払い、ギリギリで捌き、必死で回避しつつ、その声をミヤモトは一蹴した。
「ココでこの化け物を止めないとやばいんですよ! 貴女こそ分かっているんですか!」
 ミヤモトが突っ込んでくる様を眺めつつ、少女は靄を集める事で小さな剃刀を形成。
 その剃刀を手首に当てて、躊躇いも無く一気にその刃を引いた。
 剃刀の刃は少女の肌を切り裂き、その傷から血の代わりに黒い靄が噴き出す。
「Бешеные собаки」
 少女の傷口から出ていた靄が集束して犬の形を取り、ミヤモトにその牙を突き立てるために突っ込んだ。
 バリアジャケットを貫いて、ミヤモトの身体に牙が食い込む。傷口から狂気が流し込み、少しずつ溶かしていく。
 噛み付いてきた犬を振り払おうと足掻くたびに犬の牙がミヤモトに食い込み、身体の自由を奪っていった。
 しかし少女は手首の傷口から黒い靄を噴出しながらぼんやりとミヤモトを眺めている。
 見つめるその目からは感情が全く感じられなす、ただ見ているだけのような感じであった。
 それでもミヤモトは、痛みに耐えながら少女の方へと進んでいく。
 黒い靄の濃度がある程度まで濃くなった所で少女は口を動かした。
「Дожди преступности」
 黒い靄は細い針となって、ミヤモトに喰らい付いている犬ごと刺していく。
 その針がミヤモトに降り注いで刺していく勢いはまるで豪雨。
 針は刺し傷から身体の中に溶けていく激痛と狂気でミヤモトを蝕んでいく。
 肌は徐々に黒ずんでいき、身体も言う事を効かなくなっていく。
 ミヤモトは身体を動かせないまま、降り注ぐ黒い雨と自身の身体に美味しそうに噛んでいる犬を眺めていた。
 出血のせいで徐々にミヤモトの身体が冷たくなっていく。まるで雨に打たれてずぶ濡れになっていくかのように。
 少しずつ意識が薄れ行く中で、ミヤモトは少女に怒鳴った。
「この化け物がっ!」
 今まで何をしても反応しなかった少女が、ミヤモトの罵倒に近いその一言に反応した。
 白目と黒目が反対になっていた瞳が元に戻り、身体がビクリと震えた。
「私……化けも」
 それと同時に黒い犬や身体に突き刺さった針が消える。
 ミヤモトは消えたその隙に前へ突っ込み、魔力を纏わせた『鈴音』で少女を斜めに斬った。
 切り口からは血の代わりに黒い靄が勢いよく噴き出し、黒い大型犬となってミヤモトに襲い掛かる。
 不意打ちに近い攻撃の勢いに押されるミヤモト。噛み付かれないように防戦する。
 その隙を突いて、少女の身体から噴き出した靄が大きな針となってミヤモトの身体に突き刺さった。
「ぐあっ……」
 そのままミヤモトはゆっくりと落ちていく。既に意識は朦朧としており、後は重力に任せて落下していくのみ。
 あと数秒でミヤモトがその硬いアスファルトの地面に叩きつけられて、ただの肉塊に変わってしまう状況。
対象を追尾。および、接触後は対象をポイントBへと強制輸送クイックシルバぁっ!」
 青い光を放つ矢が黒い靄に覆われた夜空を駆け抜ける。



「よしっ……!」
 オウルはミヤモトが対象に攻撃を加えた事に小さくガッツポーズをした。
 しかし次の瞬間には犬の突進を喰らい、その隙を縫うように黒い針を喰らったミヤモトが落下していく事にギョッとする。
 助けに行きたいのは山々だが、空戦の資質が余りない自分が飛行魔法でミヤモトの救援に向かう事は難しい。
 出来るしたら、自身のデバイスを浮かせる事くらいだ。
 どうしたものかと考えあぐねるオウルにえゆの声が念話として割り込んだ。
[対象を追尾。および、接触後は対象をポイントBへ強制輸送クイックシルバー!]
 えゆのいるポイントから青い光が夜空を翔ける。
 青き光を放つ矢は落下していくミヤモトを追尾し、その先をバリアジャケットの襟に引っ掛けた。
 どうにかミヤモトを何も言えぬ肉塊に変わるという事態を回避できた事に安心すると同時に、その青い矢が自身のいる場所に突っ込んで来ている事に唖然とする。
 急いでオウルは『ブリジット』を地面に下ろし、矢とともに突っ込んでくるミヤモトをキャッチ出来るような体勢をとる。
 切っ先にミヤモトを引っ掛けた矢はオウルの近くでゆっくりと消滅する。
 矢自体は無くなっても勢いは残っているらしく、ミヤモトの身体はオウルの方に飛び込んできた。
 その勢いでオウルまでもが身体を持っていかれて、屋上を転げまわる羽目になったがどうにか受け止める。
 屋上の硬い地面を転がったせいで体中が無性に痛かったが、その痛みに耐えつつ『ブリジット』を置いたところまで歩く。
 狙撃位置に戻ったオウルは改めて念話を繋ぎなおす。
「こちら、オウル・プリヴェント。ミヤモトの回収完了です」
[そう……了解です。多重弾殻であれば、効果があることを確認]
 ちゃんとミヤモトを回収された事に、念話の向こうで安心したえゆ。
 その安堵は念話として声と一緒に伝わってきた。
「情報提供感謝します。こちらも多重弾殻射撃に切り替えます」
 オウルは『ブリジット』に装填していたカートリッジをロード。
 環状魔法陣の代わりにターゲットリングを展開。同時に展開されたレーザーサイトを使用することで命中率を高める。
 自身の魔力を核にして再び魔力を集束。今回は圧縮と分解の工程を行う代わりに膜状バリアでその魔法を覆う事で多重弾殻の処理を行う。
 その魔法を発動させるに十分な魔力をチャ-ジさせたオウルは、魔法で視覚強化された狙撃用サイトとレーザーサイトの併用で照準を合わせながらその魔法を紡ぎだした。
幽玄の灯ファントムブレイズ
 引き金が絞られる事で開放された遠距離狙撃型砲撃魔法は琥珀色の線となって対象へと伸びていく。
 対象は右手で顔を覆いながら、オウルの放った〈幽玄の灯ファントムブレイズ〉へと左手を突き出す。
 その手には少し黒ずんだ色をしている虹色のベルカ式魔法陣が展開されている。〈掌握支配コンプレクティ・リアクト〉でそれを吸収しようとしているらしい。
 しかし琥珀色の一閃は吸収される事はなかった。
 それどころか、対象の上半身右半分が円状に抉り取った。
「……っ!」
 人を殺してしまったという嫌悪感にオウルは一瞬だけ足場が揺らぐような感覚を覚えた。
 時空管理局は容赦ないとは言われていても、犯人を容赦なく殺すまでには至らない。
 今、対象に放った魔法も非殺傷設定で威力を抑えてある。
 だから、オウル自身も威力を抑えてある魔法で対象の上半身右半分が消し飛ぶとは思わなかった。
 しかし次の瞬間には周囲の靄が対象にまとわりつき、失った部分を補修する。
 それには別のポイントにいたえゆだけではなく、オウルも唖然とした。
 対象が自身の身体すら靄で修復できてしまう事は、オウルたちの予想を遥かに超えていたからだ。
 茫然自失しているオウルの背後でミヤモトがうめき声を上げる。
「うっ……」
 どうやら意識を取り戻したようだ。多重弾殻処理を行った魔力弾を出来るだけ早く叩き込みつつ、オウルはミヤモトに訊ねた。
「大丈夫ですか?」
 しかしミヤモトはオウルの問いに気にも留めずに対象を睨みつける。
 それはまるで対象は自身が絶対に倒さなければいけない敵であるかと言うような目であった。
 そしてミヤモトは足元に浅葱色のベルカ式魔法陣を展開。
 黒い針が刺さっていた部分には黒い刺青らしき物が走っていた。
 またもや独断で対象を止めるつもりだと、ミヤモトの殺気走った気配からオウルは察知する。
 オウルはミヤモトを引き止めるように怒鳴った。
「お前にそいつを止める力があるのか? お前一人でそいつを止められるのか?」
 しかしその問いに対してミヤモトは何も言わなかった。



 殺気を押し殺すどころか、むしろ叩き付けながらミヤモトは少女の方へと飛んでいく。
 少女も自身の身を護るために向かってくるミヤモトを迎撃する。
 黒い靄が集束し、黒い槍をいくつも作り出して射出。
 ミヤモトは鞘をつけっぱなしの『鈴音』でそれを打ち落とす。
 しかしそこで気を抜いてしまったのが間違いであった。
 上から黒い球体が落下し、ミヤモトの頭を打つ。その球体は一瞬だけミヤモトの意識を奪い、行動を微かに鈍らせた。
 ミヤモトの頭を襲った球体の落下を合図に漆黒の球体が雨のように落下して進行を阻む。
 黒い球体が身体を打ち付けてくる中で、ミヤモトはとある肉弾専門の教導官の技を思い出した。
 それはアキの〈星堕ちつ日スターライトフォーリングダウン〉。
 物量と落下速度によってミヤモトの進行を滞らせる球体は少女の周囲に集まって新たな形となる。
 球体が泡を立てて膨らみながら空中で回転し、黒い靄を纏う漆黒の鮫を生み出す。
 そして少女はアキとアサギの合体魔法である〈破軍鮫陣ストレイト・オーヴァ〉を再現し、それらを広域に展開した。
 横に腕を振り抜いたのを合図に、黒の鮫たちはその役割を果たすために動き出す。
 半分は弾丸のように突っ込み、残りの半分はその身を跳躍させて自重で周囲を潰しにかかる。
「第一幕……剣の舞」
 カートリッジロードと同時にミヤモトは居合いの如く『鈴音』を右へ振り抜く。
 シャンと言う鈴のような音がなると同時に抜刀され、浅葱色の魔力を纏った刃が空を切る。
 その軌線に沿って剣の形をかたどった魔力の塊が扇状に配置され、ミヤモトが刀を振りぬくと同時に射出。
 ミヤモトに向かってくる黒い鮫たちの一部がそれによって削り取られた。
「第二幕! 魔王っ!」
 突き出した左の手の平にミッドチルダ式の魔法陣を展開。
 浅葱色の魔法陣から少女をかたどった魔力の固まりが射出され、鮫のいる方へと一直線に奔った。
 その魔力に接触した鮫だけではなく、周囲にいた鮫までも一緒に爆発する。
 これによって少女に配置された鮫の一群を扇状に消滅した。
[ミヤモト……ペースが速すぎだ。途中で潰れるぞ]
「……第四幕。炉心融解」
 オウルの念話になど耳も貸さず、ミヤモトはカートリッジロードを行うと同時に新たなる魔法を発動。
 鮫の一群の中に魔力の球体が配置され、しばらく膨張してからその固まりが爆発。
 つんざくような爆音と共に、少女が配置した鮫の大体が飲み込まれた。
 振り抜いた『鈴音』を納刀したミヤモトはあえて粉塵へと突っ込み、少女を確実に撃墜するために鞘を握った左手に魔力を集中させる。
[一人で先行しちゃ駄目です。やられますよ]
 えゆから入った念話をミヤモトはあえて無視。
 沈黙を貫きながら先行する一等空士についに堪忍袋の緒が切れたらしく、えゆはその相手に怒鳴った。
[そんなに空曹長になりたいのですか!]
「俺は堕ちねぇ! 絶対になっ!」
 そう言ってミヤモトはえゆとオウルに繋いでいた念話を強制的に切断。
「くたばれぇっ! この化け物がぁっ!」
 広域爆発魔法〈炉心融解〉で発生した粉塵を抜けた先でミヤモトが見たのは、口に壊れた笑みを浮かべた少女の姿。
 少女の背中に生えていた漆黒の翼が肥大し、水晶の刃が生えた剣山を髣髴させるような羽となって扇状に広げられる。
 剣を思わせる羽の先はミヤモトの方へと伸び、その身体に突き刺さった。
「わタし……バケMOの……?」
 そう呟いた少女は更に黒い羽の切っ先をミヤモトに突き刺し、上へと掲げる。
 傷口から狂気が注ぎ込まれる激痛と狂気で壊されていくのを感じながら、ミヤモトは少女に侮蔑の言葉を吐きかける。
「お前は……バケモン……だ…」
「……っ!」
 少女の顔が苦痛を感じているかのように歪む。
 ミヤモトを突き上げていた羽に力が無くなり、ゆっくりと下に落ちていく。
 それによってミヤモトの身体に突き刺さっていた羽が血のぬめりでズルリと落ち、そのまま落下する。
対象を追尾。および、接触後は対象をポイントBへ強制輸送クイックシルバー!」
 しかしえゆが軌道操作魔法〈クイックシルバー〉を発動し、再び矢がミヤモトをオウルのいるポイントへと持っていく。



 ミヤモトに『化け物』と言われた少女は強く身体を抱いていた。
 身体に爪を立て、歯を食いしばった。次の瞬間には両手で自身の頭をかきむしりはじめる。
 漆を塗ったかのように黒い髪が指に絡まり、少しずつ落ちていく。その傷口からは血の代わりに黒い靄が噴出す。
 身体から湧き上がるのは自身で自身を壊したいという衝動と自身への嫌悪感。
 そしてその状態で足元にベルカ式魔法陣を展開し、魔法の銘らしき言葉を紡いだ。
「咎人 алстук труболовка」
 眼下に広がる建物の屋上全てに黒ずんだ虹色の魔法陣が展開され、無数に突き出された漆黒の槍が屋上を埋め尽くす。
 微かに断末魔らしき声が少女の耳に届いた。
 しかし少女は発動した魔法で無差別に建物の屋上を破壊しただけでは飽き足らず、靄と周囲の魔力を集めて更に魔法を発動する。
「私は…私は……」
 黒ずんだ虹色の魔法陣から放たれた魔力光が少女の顔を照らす。
「バケモノじゃないっ!」
 その目から涙が溢れ、その声は泣き声に近かった。
 まるで母親とはぐれて迷子になった小さな子供のようであった。
 涙で顔をグチャグチャにしながら少女は魔法を賛美歌のように歌う。
「咎人達に滅びの鉄槌を。神の使徒よ集え。世界を革変する御柱となれ。降りよ……聖なる王に祝福を与えし神」
 少女の周囲にあった漆黒の靄が集束し、宙に無数の球体を作り出す。
 その球体に靄だけではなく、周囲の魔力までもが集束していった。
 同時にオウルたちのいる位置を余裕で範囲内に収められる位の巨大な魔法陣が空に展開される。
 魔力が集まる様は時空管理局で『エースオブエース』と謳われている高町なのはの〈スターライトブレイカー〉を彷彿とさせた。
 目から涙を流しながら少女はその魔法の銘を紡ぎ出す。
「―――クライス・クリストス」



 いきなり魔法陣が足元に展開され、そこから突き出した漆黒の槍に身体の所々を貫かれたがえゆはどうにか生存していた。
「咎人達に滅びの鉄槌を。神の使徒よ集え。世界を革変する御柱となれ。降りよ……聖なる王に祝福を与えし神」
 そして頭上に展開された巨大な魔法陣と対象の口から紡がれた魔法の呪文にギョッとする。
 集束した魔力が巨大な魔力球を精製している時点で、えゆはなのはの〈スターライトブレイカー〉と同じ集束砲撃魔法であると判断が出来ていた。
 しかし展開されている規模はなのは以上であった。この規模で発動したならば、自分たちのいる街の一帯が綺麗に消し飛ぶであろう。
 危機感を感じたえゆはとある対処法を発動するための準備を行う。
 まずバリアジャケットから別の衣装に着替えた。
 纏っていた衣装が魔力に戻され、上は白い浴衣のような単衣。下は緋の行灯袴に変わる。
 その格好はまさに自らの身体に神を降ろす掌る女性であり、神と舞い遊ぶ仙人―――巫女そのもの。
 巫女装束となったえゆは自身の使っているデバイス『千早』を対象のほうに向ける。
 えゆの服装が変わったのと同じように、『千早』の形状も洋弓型から和弓型へと姿を変えた。
「―――クライス・クリストス」
不破ナル神ノ域タカアマハラノヒモロギ!」
 対象が魔法を放つとほぼ同時。えゆは矢もつがえずにその弦を勢い良く鳴らした。
 鋭い音が夜天に響き渡り、えゆの周囲を別の世界へと変換する。
 煩悩にまみれた醜き俗世を遮断し、澄み切った静謐な神の世界へと姿を変えた。
 その俗世と神の世界にある境界が結界となり、対象の〈クライス・クリストス〉から仲間たちや街を守るように広範囲に展開される。
「くっ……」
 えゆは歯を食いしばる事で身体に掛かる負担に耐える。
 広範囲に展開しているというのもあるが、対象の発動した集束式砲撃魔法の出力が高いせいでえゆの身体だけではなく精神にまで負担をかけているのだ。
 相手の集束式砲撃魔法の持続時間が切れるまで耐え忍んでいるえゆに念話が割り込む。
[あんたがあそこで撃たなかったのが悪いんだっ!]
 念話で聞こえたのはミヤモトの声。
 それは自身がミヤモトを信じられなかった事によって撃つ事に躊躇った事を言っているのだろう。
 もしかしたらオウルの撃った魔力弾を対消滅したことを言っているのかもしれない。
[ミヤモト、お前……一体、何を言っているんだ]
 オウルが念話の向こうで動揺しているのがえゆには分かった。
 しかし、今は仲間と街を対象の魔法から守らないといけない。
 額から汗が噴き出し、背筋に冷たい汗がすぅっと流れる。
 えゆは自身の失敗を意識の外に押しのけ、身体に掛かる負担に耐える。
 しかしミヤモトはえゆに強く当たる。
[自身の仲間を信じられないんなら、三等空尉なんて辞めちまえ]
「―――っ!」
 中と外の両方から〈不破ナル神ノ域タカアマハラノヒモロギ〉の多重結界が壊されていくような感触をえゆは味わった。
 意識が保てなくなる前に、えゆは念話を一時的に切断。
 〈不破ナル神ノ域タカアマハラノヒモロギ〉が対象の〈クライス・クリストス〉によって破られないように意識を集中させる。
 次第に本流の勢いが弱くなっていく。後もう少し頑張れば良い。
 しかし身体が防御魔法の持続展開によって悲鳴を上げた。
 途端に魔法陣が揺らぎ、えゆの身体に変調が起こる。
 皮膚と肉の間に異物を押し込んだような痛みと違和感が脳内に伝達され、えゆは身体の奥から何かが込み上げてくるような吐き気を催す。
 しかし歯を強く噛み、吐き気に耐えた。 歯を強く噛んだ時に唇も強く噛んだからだろう。えゆに口元から真っ赤な血が伝って落ちる。
 制御できていた魔力も荒れ狂い始め、制御主であるえゆに襲い掛かる。
 魔力制御による負荷までもが身体にかかり始めた。 しかしえゆは〈不破ナル神ノ域タカアマハラノヒモロギ〉を解除する事だけはしなかった。
 更にその術式はえゆの身体を蹂躙し、圧搾し、全身の魔力を引きずり出す。その時点で既にえゆの身体は疲弊し、意識は希薄となっていった。
 身体やデバイスは既に痙攣か何かでブルブルと震えていた。
 しばらくして身体に掛かっていた負荷がなくなる。どうやら、耐え切れたようだ。
 その瞬間、えゆの中で張り詰めていた何が切れる。身体に力が入らなくなり、そのまま重力に従って屋上にその身を横たわらせた。



 ステイはウェイターの仕事をしつつも、戦略分析官としてミヤモトたちの念話を傍聴していた。
 念話の内容から判断するに戦況は芳しくない感じだ。
 プリヴェント一等陸士とえゆ三等空尉はちゃんと狙撃と遊撃の役割を果たしているようだが、ミヤモト一等空士はステイが懸念していたように冷静ではいられなかったようだ。
 会話の内容から判断するに、ミヤモト一等空士は仲間が撃墜されないように思っている二人を役立たずと考えているかもしれない。
 下手したら、自分だけが戦っているのだと考えている危険性もある。
 後衛で戦っているえゆ三等空尉と連絡が取れないのは、彼女が撃墜されてしまったからだろう。
 彼女の事だから、二人を守るために倒れた可能性が高い。
 えゆ三等空尉はとても優しい女性だから。
 これは自身が手助けしないといけないといけない状況だ。
 被害を出さない為もあるが、一人で戦っていると勘違いしているミヤモト一等空士の目を覚まさせる為にも。
 そう考えたステイは近くにいたヴィータに声をかける。
「すみません。ちょっと頼みます」
「ん? どうした」
 いきなりお盆を押し付けてきたステイにヴィータは不思議そうに首を傾げる。
 微笑みながらステイはこう答えた。
「ちょっとお花を摘みに」
 その言葉にヴィータは何を思ったのだろうか。いきなり顔をしかめた。
 渋い顔をしたままヴィータはステイに言った。
「……お前が言うと、別の意味に聞こえて嫌だな」
「そうですか?」
 首を傾げるステイに、ヴィータは行くなら早く行けというように手を動かす。
 ステイはヴィータの言葉に与えて、【喫茶『白桜雪』】の外に出る。
 そして浮遊魔法を使用する事で、自身の身体をできるだけ高い位置まで浮かせる。
 痺れるような寒さを感じながらステイは自身のデバイスに隠された真の姿を開放する。
「歌え……『王を選定する符リア・ファイル』。今こそ、契約を果たさん」
 開かれた革張りの手帳から一枚ずつページが離れ、宙でページが分化して長細いカードとなる。
 そしてその紙片たちはステイに付き従うようにその周りに浮かぶ。
 自身が得意とする魔法を発動する前にステイはとある人物に念話を接続する。
「……綴」
[なに? ステイ]
 念話の相手はいきなりステイが念話をつなげて来たのも関わらず、いつもの事であるような口調で応対する。
 ステイもすぐに本題へと移る。
「えゆ三等空尉たちが対象と接触した位置って、どっちだっけ?」
[……]
 その質問のあきれ返っているのか、すぐに言葉を漏らさなかった。
 流石のステイもバカな事言ったかなというように苦笑いを浮かべている。
 しかし数秒経ってから、綴はステイに言った。
[アイン秘書官が出展している場所の上空]
「了解」
 そう言ってステイは綴との念話を瞬時に切断する。
 後で何を言われるか分からないが、今はある意味で緊急事態。
 ステイは周囲に浮かんでいる無数のカードのうち、とある一枚を抜く。
「先輩が遺してくれた魔法。今こそ、使わせて頂きます」
 そのカードに書かれていたのはその魔法の詠唱とその使用者。
 魔法の銘は『其は呪いの魔弾ガンド』。
 使用者の名前は―――『紅紗架リンドウ』
「我はこの符に封ぜられし真なる影を解き放つ」
 人差し指と中指の間にカードを挟み、自身が最も得意とする魔法を発動。
 ステイの足元に真っ白な魔法陣が展開される。
 他人の魔法を特殊なカードに封印し、それを使用時に開放する。
 それが、ステイ・クラウゼヴィッツが得意とする魔法であった。
 戦略分析官であるステイによってその魔法を更に昇華され、状況によって使い分けられように幾つもの魔法を作り出された。
 その一つが今、ステイが発動しようとしている魔法であった。
「―――真影開放『虚数境界アイン・シュピーヴェルン』」
 そこにいたのは一人の青年。黒い髪に赤みがかった黒の双眸。
 口にはタバコが咥えられていた。羽織っているのは黒いトレンチコート。その下には黒いスーツ。
 その姿は黒尽くめの男としか形容のしようが無い。
 実を言うとステイはこの男が使っていた魔法を封じ込めたこの符を使いたくは無かった。
 これは自身に道を示してくれた男とステイ自身を繋ぐ象徴。
 ちゃんと、この世界に自身の師匠がいた証でもあったからだ。
 しかし一人で戦っていると勘違いしている者の目を覚まさせる為に、あえてステイはこの符に封じ込めた恩師の魔法を起動させる。
 ステイは消え行くカードを人差し指と中指ではさみながらその腕を突き出し、ある種の喪失感を感じながらもその魔法を歌う。
「其は呪いの魔弾。我はその呪いを持って我が怨敵を穿つ……」
 男はタバコを咥えながらもニヤリと笑い、右手に握っていたオートマチック式拳銃型デバイスをステイが腕を突き出した方角に銃口を向けて突き出した。
 足元に赤い魔法陣が展開され、魔力を込めるたびに黒くなっていく。
其は呪いの魔弾ガンド
 ステイがその魔法の銘を紡ぎ終わると同時に男はその引き金を引いた。
 その銃口から黒き呪いが放たれる。その魔法は一発分でありながらも、それはもはや絶対なる暴力を孕んだ光弾。
 黒き呪いの魔弾は黒い靄が掛かった夜天を翔ける。
 魔弾に宿った暴力と呪いを持って、敵を屠るために。



 オウルは対象の攻撃を必死で防いでいた。
 きっと〈不破ナル神ノ域タカアマハラノヒモロギ〉で対象の〈クライス・クリストス〉から自分たちと街を守るために力尽きて気絶したのであろう。
 一向にえゆから連絡が取れなかった。
 しかし対象はオウルたちの体勢を立て直すまで俟ってくれるはずもなく、遠距離から怒涛の勢いで攻撃を叩き込んで来た。
 圧縮すらしている暇は無く、魔力が弾の形を取ったらそのまま撃つ出すような感じであった。
 集束・分解・圧縮の工程を省いている事が幸か不幸か分からないが、オウルもある程度は魔力弾の弾道を操作することが出来るようになっていた。
 隣ではミヤモトも魔法を使って迎撃していた。しかしさっきのような覇気は無く、ただ攻撃が来るからそれを迎撃しているような感じであった。
 今はカートリッジがあるからどうにか防戦出来ているが、カートリッジが切れたらオウルもミヤモトも対象の攻撃に飲まれるであろう。
 時間が経つごとに、オウルとミヤモトのカートリッジが無くなっていく。
 そんなジリ貧な状況の中で、オウルが接続していた念話に別の局員の声が割り込む。
[其は呪いの魔弾。我はその呪いを持って我が怨敵を穿つ……]
 オウルはその声に聞き覚えがあった。
 それは自身に戦略分析について講義をしてくれた戦技教導官の声。
[其は呪いの魔弾ガンド]
 念話の回線に割り込んだ詠唱が終わって約十秒後。
 黒い靄が掛かった夜天に漆黒の魔弾が翔けた。
 空を翔ける魔弾はその軌道に立ちふさがる障害を難なく穿ち抜き、その余波で周囲に存在する障害すらも誘爆で消し飛ばす。
 余りにも段違いな威力という暴力を持って破壊しつくす魔弾にオウルは唖然とした。
 少女は向かってく魔弾に腕を突き出す。その光弾を受け止め、自身の力とする為に。
 しかしその光弾は少女に吸収されず、突き出した腕だけではなく身体の三分の二を消し飛ばした。
 その光景には隣で一緒にオウルと防戦していたミヤモトも呆然としていた。
 オウルはこの超遠距離射撃が誰によって行われたか分かった。
 戦技教導隊に所属している戦略分析官。ステイ・クラウゼヴィッツ。
 今までに見た事の無い射撃魔法。そこからオウルは一つの結論を出した。
 あの戦略分析官は自分たちを助ける為に恩師の魔法を使用したのだと。
 ポジションの関係でオウルは戦略分析官であるステイの事を師事し、その彼がどのような魔法を行使しているかも知っていた。
 行使しているその魔法をおおまかに説明をすると、魔法の封印とそれの開放であった。
 まず自身の扱うデバイスに魔法を衝突させる。それによってデバイスの中に衝突した魔法を封印し、その場に応じて封印した魔法を使用する。
 しかしその魔法には、よほどの事が無い限りは一回しか使用できないという重大な欠点があった。
 中には使用者が少ない珍しい魔法や、その人オリジナルの魔法も幾つか封印されているらしい。
 勿論、その中には―――今は亡き、ステイの恩師が使っていた魔法も封印されていた。
 ステイにとってはある種のお守りに近いだろうと思われる魔法を、あえて自分たちを助ける為に使用した。
 思い出のある大切な魔法をステイは犠牲にして、ギクシャクしている自分たちを助けたのだ。
 助かったという何度か、隣にいたミヤモトは唾を吐くように言った。
「あいつがちゃんと撃っていれば……」
 感傷と言う物は戦場に不要な物。しかしオウルは怒りという衝動に駆られるまま、ミヤモトの頬を打ち抜いた。
「何すんだっ!」
「お前に何が分かるっ!」
 文句を言うミヤモトにオウルは怒鳴った。
 今は目の前の対象を潰す方が先なのだが、既にそれらの事はオウルの意識の外にあった。
 オウルは怒りのままにミヤモトを罵倒する。
「何を格好付けているから知らないけどさ……ついさっきまで、お前は犬死同然の事をしようとしていたんだ!」
 既に心情を口にしてしまったオウルの口はもう止める事は出来なかった。
 そのままミヤモトの胸倉を掴み、再び殴った。
「てめぇは分かってないけどさぁ。えゆ三等空尉は俺たちが死なないように注意を払い続けていたんだ」
 既にオウルの頭からは対象の撃墜、または拘束という指令は怒りによって頭から消えうせていた。
「それをお前は何だ? 役立たずのように扱いやがって……」
 怒りで我を忘れる事は戦場において、愚者の行う事だ。
 それはオウルも重々承知の事であった。
「お前なんか、人の命を背負う資格なんて無い――― 一等空士なんて辞めてしまえ」
 しかしオウルはその口を止める事が出来なかった。
「クラウゼヴィッツ戦略分析官に援護までさせておいて……お前のしていた事は何だ?」
 周囲は自分たちが撃墜されないように気を配っていてくれた。
 えゆがミヤモトの事など捨て置けば、対象を撃墜する事くらい容易であったかもしれない。
 しかしあの三等空尉は任務の邪魔になるのであれば捨て置けばいい自分とミヤモトを守る方に気を払っていた。
 なのに目の前にいる一等空士はえゆを臆病者だというかのように罵倒した。
 オウルはそれが許せなかった。
「一人で戦っていると勘違いして、突っ込んで行っただけだろ?」
「……」
 オウルの怒りに飲まれたのか、ミヤモトはもう何も言えなくなっていた。
 ミヤモトを突き飛ばすように離し、吐き捨てるようにオウルは言った。
「ココで見てろ」
 やっと任務の方を思い出したオウルは『ブリジット』の狙撃用サイトで対象を見る。
 対象はまだ靄で身体を修復中。ステイが使った魔法のダメージが深刻であるようだ。
 今なら、残っているカートリッジを全部使い潰した〈幽玄の灯ファントムブレイズ〉で戦闘不能くらいに追い込めるかもしれない。
 脳内ではもはや戦略とも言えない賭けに出ようとするオウル。
 殴られたミヤモトはよろけながらも立ち上がり、背後からオウルに言った。
「俺が零距離で魔法をぶち込む。援護してくれないか?」



 ミヤモトの言葉にオウルはすぐに返事を返さなかった。
 しばらく経ってからゆっくりとオウルは口を開いた。
「……出来るのか? 本当に出来るのか? お前に……そいつを止める力があるのか?」
 それは少し前にオウルがミヤモトにかけた問い。
 しかしその時のミヤモトは無言でそれを無視して、少女によって返り討ちにされた。
 そして―――えゆを戦闘不能に陥らせるくらいの負担をかける事となった。
 ミヤモトは左手の『鈴音』を強く掴み、オウルに言った。
「俺を信じろっ!」
 ゆっくりと顔を動かして背後のミヤモトを見るオウル。
 その目はまるで、ミヤモトの言葉を疑っているような目であった。
 ミヤモトはかけられた威圧に耐えながらオウルをにらみ返す。
 少女の方に顔を戻したオウルはボソッと口に出した。
「援護はする……だが墜ちても誰にも文句はいうなよ?」
「……了解」
 『鈴音』を軽く振り、ミヤモトは足元に浅葱色のベルカ式魔法陣を展開。
 浅葱色の魔力光を纏いながら少女へと突っ込む。
 少女は再び飛んできたミヤモトを迎撃する為に身体の修復を中止する。
 まず靄から精製されたのは剣の形をかたどった物。
 しかしミヤモトは魔法を使って破壊することなくそれらを回避し、オウルが軌道操作を行う事でたった一発の魔力弾でそれらの破壊。
 その隙に少女は猟犬と鮫の大群を一気に精製し、物量作戦でミヤモトたちを押し切りにかかるが、ミヤモトは〈第二幕 魔王〉で強引に活路を開く。
 ミヤモトに押し寄せてくる猟犬と鮫をオウルが魔力弾の軌道操作を行う事で撃墜していく。
 靄はミヤモトにまとわりつく事で身動きを封じようとするが、ミヤモトは移動速度を上げる事でそれを振り払う。
 後もう少しの所で、少女は最後の難関を発動した。
 それはえゆを戦闘不能に追い込んだ〈クライス・クリストス〉。
 ミヤモトだけではなく、その周囲まで破壊するためか黒ずんだ虹色の魔法陣の大きさはそれなりに大きい。
 既に少女の周囲にには無数の球体を作り出され、靄だけではなく、周囲の魔力までもが集束していた。
 これは確実に〈クライス・クリストス〉で街が破壊されてしまう。
 いますぐえゆが目を覚まして、〈不破ナル神ノ域タカアマハラノヒモロギ〉以外にそれから街を防ぐ方法はないだろう。
 しかしミヤモトには集束型砲撃魔法に対する切り札を持っていた。
 少女の方へと進みながらミヤモトは魔法を発動する。
 突き出した右の手の平にミッドチルダ式の魔法陣を展開しながら、ミヤモトは切り札の詠唱を開始。
「全てに等しく訪れる終わり。刹那の快楽に溺れ、偽りの愛という深き闇から映し出される天を仰ぐ。涙を流しながら狂い踊れ、悲劇の処女……」
「―――クライス・クリストス」
闇夜に舞う乙女ヤミヨノアリス!」
 微かに黒ずんだ虹色の奔流がミヤモトの展開した浅葱色の魔法陣に飲み込まれる。
 そして飲み込まれた魔力は魔法陣の前で球体となって膨らんでいく。
 ミヤモトは魔法陣を展開した状態でとある一言を紡ぎ出した。
「―――『さぁ、狂いたまえ。私の腕の中で』」
 その一言によって膨らんでいた魔力球が爆発する。
 〈闇夜に舞う乙女ヤミヨノアリス〉用の魔法陣の下に防御魔法の魔法陣も展開していたミヤモトは無事であったが、少女は魔力の爆発で吹き飛ばされる。
 ミヤモトは追撃を行うために吹き飛んだ少女を追う。
 少女に追いついたミヤモトは抜刀した『鈴音』をその腹部に突き刺す。
 しかしその代償にミヤモトは少女が身体から突き出した漆黒の槍で身体中を貫かれる。
 身体中に槍が突き刺さり、その傷から狂気がしみこんで行く激痛に意識を持って行かれそうになるが、ミヤモトはそれに耐えながら最終奥義を発動した。
「至高の処女へ捧げんとする我が最高の挽歌、世界を壊し、新しく生み出す力。愛おしき貴女へと世界の全てを捧げるために歌い、貴女と云う楽園を蹂躙せん……歌姫の楽園ローレライガーデン!」
 魔力が注ぎ込まれた『鈴音』に刀身が小刻みに振るえ始める。
 その振動は少女の内部を強引にかき回し、グチャグチャにしていく。そして骨は強制的に共振させられ、その作用で粉々にされていく。
「うぅ……うううううううっ!」
 少女の目から涙が溢れ、声は泣き声に変わる。そして遂には動物が上げるような唸り声に変わった。
 楽しそうにニヤリと笑うミヤモト。その顔にあったのは任務をどうにか解決できたという達成感。
 既に身体は血が抜けた性で冷え切っていた。
 ミヤモトの身体に突き刺さっていた槍が消滅し、少女の腹部に突き刺さっていた『鈴音』の刀身が血か靄名のか分からない物でズルリと滑り落ちる。
 自身の身体が落ちる浮遊感を感じながらミヤモトは中指だけを立て、腹部からおびただしい靄を噴き出しながら少女に毒づくように言った。
「……Fack」



 えゆはゆっくりと瞼を開く。少し体が軋むような痛みを感じたが、身体に鞭を打って無理矢理にでも起こす。
 そして目の前に広がる光景に絶句する。
 対象とミヤモトが抱き合うような状態だった。
 ただし、対象の腹部には刀らしき物が貫通していて、ミヤモトの身体におびただしい数の黒い槍が突き刺さっていた。
 突き刺さっていた槍が消えると同時にミヤモトの身体が下へと落ちていく。
 刀が対象の腹部から抜け、傷口からおびただしい靄を噴き出した所でミヤモトの身体は重力に従って落ちて行った。
「ミヤモトくぅぅぅぅぅぅんっ!」
 そのまま落下していくミヤモトを見ることしか出来ないえゆの叫び声がクラナガンの空に響いた。





《Next Side》 Hayate Yagami&Reinforce Zwei
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「交換戯言日誌」を見に来て下さってありがとうございます。
終焉の引き金を引くのは貴方。
物語の続きを作るのもまた……
読んでいる貴方なのです。






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